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#創作小説
【創作小説】誑し込むには十二分(3)「誰にも言えない」
前作「落ちる、堕とされる」の続きです
酔って道端に落ちている人は良く見るが、死んでいるのを見るのは初めてだった。
死人は葬儀で見たことがある。あれは体裁を整えられていたのだなと、改めて実感した。驚いたように見開かれた両の目は白濁して、何かが見える状態ではないのに、こちらを見ているような気がした。焼き魚だとこんな感じだなとにべもないことを考える。棺の中で目を閉じられるのは、これを見せないため
【創作小説】誑し込むには十二分(4)「同じこと」
前作「誰にも言えない」の続きです。
「父さん、叔父さんの連絡先って知ってる?」
ちょっとした用事で電話をしてきた父に、切られる間際そう聞いてみた。急用があるわけではないけれども、俺と同じ――死体が見えるひとだったから、一応、何かしら繋がりを思っておきたいと、ふと思ったのだ。
「そりゃあるけど、お前あいつとそんな仲良かったっけ?」
「ちょっとね」
「男同士の秘密ってやつか?そういうのがある年頃
【創作小説】誑し込むには十二分(6)「還る道」
前作「かくしごと」の続きです。完結。
あれから二年が経って、何事もなく大学生活を過ごしている。無事に内定も貰って、あとは卒業に必要な単位を無事に取得するのみになった。つまり、俺が心霊スポットに不法侵入したのも、叔父が先輩を埋めたのも、咎められることなく平穏に過ごせていたということだ。相変わらず死体は降ってきたけれども、汚いものを見せられる以外実害はなく、叔父に連絡を取ったことはない。
初夏