春日華子の「性」なる日記 akiraくん
アキラ君と運命的な出会いになるなんて部屋にはいった時点で想像もつかなかっただろう。
窓際のカウチに腰掛け、忌まわしい思春期のデートのように距離を取り座る。顔が見れない。かっこよすぎる。でも、薄茶色のアキラ君の瞳はずっと見ていた。
アキラ君が何か話しかけてきてくれているのはかすかに覚えているんだけど緊張とあまりにもタイプの男性が目の前にいて、おばちゃんに笑顔で話しかけてくるなんて、私にとってはディズニーランドなんて比じゃない夢の世界に入ろうとしている。
一人妄想をかきたてて、ドキドキしているとき。
すっ、とアキラ君の片手のひらが私の太もものうえに。
え。
どうしたらいいんだろう。
アキラ君にも似たようなことを吐露したような気がする。
そして
「ちょっとまって。ちょっと、ね、ね、一気飲みする。」
再びアルコールを流し込みわけがわからない作戦にでようと思ったが気持ちの高ぶりが抑制を阻む。
「ベッドで一緒に寝てもらっていいですか?」
「うん、いいよ。あ、なんてよんだらいいかな。みんななんて呼ぶ?」
「なんでもいいです。」本当に見つめられるだけで私の内部は温かく濡れてしまっていることがわかるのでなんでも、なんでもいい。
「ヨウコは違うし、ヨウは旦那が読んでたしなぁ。」
もにょもにょして考えている私にかわいい笑顔で
「ヨウちゃんにしよう!ね。ヨウちゃん!それで行こう!」
そして二人でベットに転がり世間話をした気がする。
ノンフィクションと言いながら時系列が若干あいまいになってくるのが
心打ちぬかれたアキラ君との関係。
ベットに転んでいたときに後ろからハグされたとき、その指を眺めた時、
首に軽くキスをされたとき。はっ。とした。
夫がいるのかと思ってしまった。
すべてが偶然で、すべてが事の成り行きで、すべて必然なものはなく。
アキラ君が私の身体を触れるしぐさがすべて夫なのである。
身体がとけていく。
私は振り返って
「抱きしめて!」と彼を見つめた。
アキラ君の瞳を見つめていると唇が重なった。
夫との初めてのキス。25年以上前の光景がそこにあるかのような錯覚をおぼえてた。
そのキスは優しく。
そのキスは美しく。
そのキスは二人がいたからできたキス。