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少女とクマとの哲学的対話

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#対話

少女とクマとの哲学的対話「俗世とたわむれる聖職者たち」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
〈時〉
2019年2月

アイチ「仏教の宗派である、臨済宗と曹洞宗が、中学校の歴史教科書を発行する会社に対して、自分たちのことを、『禅宗』ってひとくくりにして記述しないでほしいって要望を出したっていうニュース読んだよ」
クマ「ふふっ、ちょっと面白い話だよね」
アイチ「えっ、どこが?」

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少女とクマとの哲学的対話「歴史と物語の違い」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。

クマ「何読んでるの?」
アイチ「横山光輝の『三国志』だよ。三国志好きの友だちから借りてきたんだ」
クマ「いいね。血湧き肉躍る、歴史マンガの傑作だね」
アイチ「すごく面白いよ。これって、史実なの?」
クマ「横山三国志は、吉川英治という人が書いた『三国志』という小説を基調にしたもので、吉川

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少女とクマとの哲学的対話「『白熱教室』を読んで 4」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
哲学教授……「ハーバード白熱教室」のような哲学の授業を行いたいと思っている哲学教授。

哲学教授(以下「哲」)「では、どうして、多数派は、『多数派が少数派を犠牲にしていいのか?』などという問いを立てるのでしょうか。そんな問いは立てない方が、多数派のためになりませんか? あるいは、それは少

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少女とクマとの哲学的対話「『白熱教室』を読んで 3」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
哲学教授……「ハーバード白熱教室」のような哲学の授業を行いたいと思っている哲学教授。

哲学教授(以下「哲」)「どうも『白熱教室』のようにはいかないな。私が未熟なせいか……」
クマ「あるいは、ボクらがあまりいい生徒ではないからかもしれないね」
哲「いや、そんなことはないと思います。しっか

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少女とクマとの哲学的対話「『白熱教室』を読んで 2」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
哲学教授……「ハーバード白熱教室」のような哲学の授業を行いたいと思っている哲学教授。

哲学教授(以下「哲」)「次の問題に進んでもいいものでしょうか……」
クマ「どうぞ」
哲「しかし、今の問題が終わっていないというのに、次に行くのはどうも」
クマ「次の問題を考えているうちに、前の問題をよ

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少女とクマとの哲学的対話「『白熱教室』を読んで 1」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
哲学教授……「ハーバード白熱教室」のような哲学の授業を行いたいと思っている哲学教授。

哲学教授(以下「哲」)「いや、『白熱教室』は素晴らしい。あれこそ、哲学の講義の真髄ではなかろうか。単に、これまで唱えられてきた哲学説を紹介するのではなく、その考え方を参考にし、対話形式で議論することで

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少女とクマとの哲学的対話「ティッシュペーパーと、生きる意味」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
老人……一連のコロナウイルス騒ぎを苦々しく思っている。
〈時〉
2020年3月上旬

老人「まったく困ったものだ。例のコロナウイルスの騒ぎで、マスクの次は、紙製品がなくなり、次になくなるのは、米かカップラーメンか缶詰かと言われている。備蓄に回すのだそうだ。やれやれ、とため息をつかずにはい

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少女とクマとの哲学的対話「災難にあったときの心構え」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
〈時〉
2020年2月下旬

アイチ「連日、コロナウイルスの感染のニュースをやっていて、世の中、騒然としているね。とうとう今日は、九州で初めて、海外渡航していない60代の男性が発症したっていうことらしいよ」
クマ「どこまで広がっていくんだろうね。そうして、いつおさまるんだろうか」
アイチ

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少女とクマとの哲学的対話「人生を楽しむためには?」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
会社員……人生をなかなか楽しめない。

会社員「野球の野村監督が亡くなりましたね。わたしは、監督とは一面識もありませんし、ファンでもなければ、アンチでもなく、また野球というスポーツ自体にも大した興味を持っていないのですけれど、かえって、そういう親しみのない有名人の死というものが身に染みる

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少女とクマとの哲学的対話「『人間だもの』と怒りの不思議」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
春日東風……noteを利用している物書き。

クマ「フォロワーとやり合ったみたいだね」
春日東風「やり合っていませんよ。今回は、やり合う前に逃げたんです」
アイチ「今回はって、前にもあったの?」
春日東風「ありましたよ。同じ人ですけど。そのときのnote、マガジンに収納してないから、どこ

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少女とクマとの哲学的対話「AIは人間を超えられるのか?」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
情報学者……AIが人間を超えることに懐疑的。

情報学者「昨今のAIブームで、ネコも杓子もAI一色になってしまった。AIが人間の生活を向上させているということは認めましょう。これは、事実だ。しかし、それ以上に、ヨーロッパの学者の中には、AIが人間を超えた神にも等しい存在になるのではないか

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少女とクマとの哲学的対話「雪は存在しない!」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
現代哲学者……新実在論を支持する哲学者。

現代哲学者「現代哲学の潮流は、新実在論にあります。マルクス・ガブリエルがその筆頭ですね。彼は、新実在論の若き担い手として、本質主義と相対主義を止揚しようとしている。ハイデガーから始まる実存主義を、フーコーが構造主義によって乗り越え、さらにそれを

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少女とクマとの哲学的対話「人はなぜ行動するのか」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。

アイチ「スーパーボランティアの尾畠春夫さんが、東京の中学校で講演したあと、今、大分の自宅まで徒歩で帰ろうとしているところなんだって」
クマ「昨年の8月に山口で行方不明になった男児を救出した人だね」
アイチ「すごいよね。どうしてあそこまでできるんだろう」
クマ「どうしてなんだろうね」

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少女とクマとの哲学的対話「自由と会社勤めの関係」

〈登場人物〉
アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
会社員……会社勤めが嫌で自由に生きたいと思っている。

会社員「ああ、嫌だ、嫌だ。毎日やりたくもない仕事をして、このまま一生を終えるなんて。世の中には、好きなことをして自由に生きている人もいるというのに、わたしはどうしてこうなんだ」
クマ「会社員というのは大変だね」
会社員「ええ、そうで

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