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ちょっと思い出した日

朝仕事場に着くと、以前よりも汗をかいていないことに気づいた。背中の濡れ具合が少ない。タオルで拭えば不快感はないぐらいだ。長い夏が去っていったんだなと少し名残惜しくも感じる。こんにちは秋。まだ控えめな彼は夜と朝にしか顔を覗かせない。
最近は晴れが続いてか、バイトでは一日中洗車をしている。洗車の作業は好きだ。やればそれだけ綺麗になる、不確かなことがない。そんな単純なことが今は心地よく感じる。
帰って『ちょっと思い出しただけ』という映画を観た。久しぶりに邦画が観たくなって、Netflixを彷徨っていたら見つけた。さらっと窓を開けながら観るのにちょうどいい映画だった。扇風機を窓に向けて、外にタバコの煙と、湿った部屋の空気を放出する。そんな映画。
タクシー運転手の主人公のセリフがなんだかクリティカルだった。
『行きたいとこはないです。自分の目的地もないです。ただ、タクシーはお客さんの行きたいところに行く、それが好きなんです』と、まぁ、こんな感じのニュアンス。自分がないってのもあながち悪くないのかもしれない。その分人の何かを感じ取れるのかもしれない。そんな気がしたセリフだった。
伊藤沙里さんが昔好きだった人に似ていて、ちょっと思い出した、そんな日。

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