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富山県は本当に「『寿司』と言えば富山」になれるか? vol.21(朝日町)
前回までの連載で私は、富山県の新田八朗知事が2023年夏に「『寿司』と言えば富山になるぞ!」と宣言したことに感化され、私もいろいろ考えを巡らせ、富山県内の寿司屋を回っていると記した(これまでの記事は下記サムネイルからどうぞ)。
昨年はまず、富山市、氷見市、魚津市あたりを回った。今年に入ってからも富山出張の度に寿司屋を巡り、これまで高岡市、新湊、滑川の寿司屋を訪ねたが、今回は東側を訪ねることにした。
まずは入善、黒部と回り、あと残るは朝日町だけだ。
朝日町は富山県の一番東側で、隣は新潟県糸魚川市。私はこれまで数度訪れているが、料理的に一番印象に残っているのはたら汁。「タラ汁街道」と呼ばれ、たら汁を名物にしている食堂が何軒も並ぶところがあり、地元の人に案内されて「栄食堂」に入った。ショーケースに入ったおかずを勝手にとり、あとで精算するシステムで、これが楽しいし、どれも旨い。最後にアルミの鍋に大盛りのたら汁を頼んだが、ふたりで一人前で十分という話は本当だった。
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朝日町にはもうひとつ、東京にまで聞こえてきていた蕎麦の名店「くちいわ」があったが、いまは富山市東岩瀬に移転している。だが、それくらい食にうるさい街であるということだ。ついでにいえば、この町は映画「少年時代」のロケ地になった木造小学校があったところだ(いまは小学校としては機能していないが、案内は出ている)。
事前の調査で朝日町の寿司屋は「ひょうたん」と「さくらずし」のふたつがいいと聞いていた。いろいろレビューを読んで、まずはひょうたんに向かった。
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「ひょうたん」の大将・梅津拓光さんは77歳。18歳で東京に出て修業。銀座の名店「久兵衛」で江戸前寿司の腕を磨き、1974年に店を出したというから、もう50年になる。当時、このあたりは花街で芸者も20人ほどいたというから、かなり華やかな町だったのだろう。
自慢は東京で鍛えた江戸前寿司の技。酢飯は地元の好みもあり、東京よりは甘くしたが、そのほかはすべて江戸前仕込みのままだという。
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まずは、たかば(イシダイ)、まぐろ、アオリイカを刺身で。イシダイは特有のにおいを感じることが多いが、ひょうたんのそれはまったくなく、ねっとりとして旨い。対してアオリイカはこりこりとした旨さを感じる。
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感激したのはカニ味噌。朝日町の宮崎漁港で獲れたベニズワイガニを使っているが、通常の味噌より甘味が口中に拡がるのだ。なんでだろうと思って聞いてみたら、白味噌も一緒に練っているという。何気なく、こういう技が出てくるのは職人歴60年のなせる技だろう。
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その後は紅ズワイの身、ゲソ焼をいただき、握りに移る。
タコ、甘えび、紅ズワイ、鯖、バイ貝、コハダ、穴子、すじこときて、最後にコハダを巻物にしていただいた。どれも朝日町周辺の魚ばかりだが、握りの形は江戸前で美しい。久兵衛の修業は伊達じゃないな。
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富山の魚と江戸前の技術がダブルで味わえる店が朝日町にあるとは。こういう出会いがあるから食の旅は面白いよね。
実はこのあと、ぶらぶらと「さくらずし」に歩いて行ったのだが、なんとこの日は貸し切り。選挙のあとだったから祝勝会があったのかもしれない。さくらずしの評判もひょうたんに負けず劣らずいいから、これは次回のたのしみにとっておこう。
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黒部、入善、朝日町と制覇したので、最後は富山県東部のグルメの聖地、魚津市に戻って一杯。魚津は以前訪れ、そのクオリティの高さに驚いたし、行きたい店はいくつもあったのだが、遅い時間だったので「お気軽寿司 小政」へ。
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富山に来るとつい頼んでしまうバイ貝のおつまみのあとは、地の魚を握ってもらった。
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イカ、鯖、アジ、甘えび、白エビ。このあたりの魚の旨さは鉄板だよね、富山は。地酒も見事に寄り添う。
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これも旨かった。富山をとりあえず西から東まで訪れてみて、どこに行っても裏切られないということがよくわかった。次回はまだ訪れていない山間部と富山市内に戻ろうかな。
まだまだ続く、富山寿司の旅。
★ひょうたん
★お気軽寿司 小政