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富山県は本当に「『寿司』と言えば富山」になれるか? vol.11(滑川)
前回までの連載(noteの過去記事をご参照ください)で私は、富山県の新田知事が2023年夏に「『寿司』と言えば富山になるぞ!」と宣言したことに感化され、私もいろいろ考えを巡らせ、富山県内の寿司屋を回っていると記した。
昨年秋には富山県成長戦略カンファレンスのセッション『「寿司と言えば、富山」地方ブランドは本当に作れるのか?』に登壇したことから、「世界標準寿司を増やしてまずは富山にフーディーを呼び、そこでキトキトの魚を富山産のコメの酢飯に乗っける呑み寿司の魅力も知ってもらう流れを作ること」がいいのではと考え、2023年は富山市、氷見市、魚津市を回った。
2024年に入ってもその考えは変わらず、富山出張の度に寿司屋を巡る機会は増えている。前々回は高岡市、前回は新湊、そして今回は滑川の寿司屋を訪ねたのだが、富山の地方寿司、本当にいいですね。素直に思います。
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私はたいてい昼前に新幹線か飛行機で富山に入り、まずはランチで寿司を食べ、富山の寿司に舌を慣らすことにしている。今回は富山市内にホテルを取ったので、城址公園の近くの「美乃鮨(みのずし)」を訪問。はじめてだが、写真を見るとメニューに握りの個別の値段が書かれていて、お好みにも対応し、明朗会計なのがわかる。ただ、ランチはコースが主なので、「店主おまかせ」を頼み、追加を考えることにした。
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この日は富山空港からバスで市内に向かった。平日なので大丈夫だろうと勝手に思い、予約もせずに店にうかがったのだが、ホールの女性は予約表に目を凝らし、「ひとりならなんとか入れます」と。富山の外食、復活しているなあ。
店はカウンター11席とテーブル、個室があり、職人2人で対応する。事前の情報では最初は東京・目黒で店をやっていたが、富山に移転したとのこと。そのあたりの話を大将としたかったが、この日は満席で余裕がなかったのが残念。
突き出しはニシンの昆布締めでその後、すぐに握りに移る。ヒラメ、真鯛の昆布締め(締めは浅い)からスタートして、中トロ、ヒラマサ、アジ、サクラマス、甘エビ、バイ貝、アオリイカ昆布締め、白エビ、紅ずわい蟹のカニ味噌入り、ホタルイカの軍艦でワタは炊いて忍ばせて、穴子で一通りだった。
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にぎりは米酢で煮切り(日本酒、醤油などを合わせてアルコールを飛ばしたもの)はつけず、自分で醤油をつけるタイプ。その醤油は北陸特有の甘味があるタイプで、九州地方と通じる味だが、これが甘味のある酢飯に合うのだ。東京の高級寿司は赤酢で煮切りを塗るタイプが多いく、どちらも辛口な印象だが、富山に多いこのタイプの寿司を食べると富山に来たなあと感じる。やさしい味で、口のなかが富山にリセットされるのだ。私にとって、酢飯とバイ貝が富山らしい味だと思っている。
今年は白エビの水揚げが厳しいという報道も流れる中、白エビもサクラマスも食べられてご機嫌。富山に帰ってきたなという味だった。
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さて今回、夜のテーマは遠足。富山駅から電車に乗り、ちょっと遠くにある寿司屋に出かけてみることにした。
この日は滑川市。富山駅から「あいの風とやま鉄道線」で15分ほど乗ったところにある。滑川はホタルイカミュージアムで有名だが、これがけっこう楽しく、目の前でホタルイカの発光ショーなどを見ると、はじめて見ると大人も感激する。
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さて、食いしん坊の口コミやネットなどを調査したところ、滑川には2つの有名寿司屋がある。ひとつは有名芸能人がイチオシで、テレビに一緒に登場したこともある寿司店。ネットで見るととても魅力的なのだが、招待・予約制なので今回は断念。もうひとつが、今回訪れた「笹寿し」である。
食べログのレビューのなかには「本に載ってるの見た事ないけど、富山、魚津の寿司屋と比べても味、値段と上です」と書かれたものもあり、興味をそそる。といっても電話して「ひとりなんですが」と言ったのだが、快くOKしてくれた。
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笹寿しのみを目指すなら最寄駅は中滑川駅だが、今回は滑川駅で降りて、ホタルイカミュージアムを見学してから向かった。なかなか心地よい散歩道を歩いて笹寿しに到着した。ほかに客がいなかったので「はじめてなので酒の肴をいただきながら、最後は握りをお願いします。日本酒はおまかせで」と言ったら、大将はにこやかに返してくれた。
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日本酒は富山なのに、新潟・佐渡の北雪。「うちは最初はこれから行くことに決まっているんだ」とご主人。まず出されたのは6点セット。左上から本ズワイのカニ味噌、ぶりのあぶり、紅ズワイガニのカニ味噌、葉わさび醤油漬、サメの軟骨、ホタルイカのわたと豆板醤の佃煮。食べ比べてみると、本ズワイと紅ズワイのカニ味噌がこうも違うのかということに驚く。
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豆乳出汁のスープをひと口いただいたあとに出された、塩ゆでした紅ズワイガニの脚がまたうまい。そしてブリ大根。「うちのブリ大根はガリを食べる料理だからね」という通り、ガリに染み込んだブリの味が日本酒に染みる。
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このあたりで日本酒は千代鶴を投入。刺身の漬けは、サバ、フクラギ、アジ、サーモン(佐渡)。その後、ブリの白子の刺身、天ぷら、身の刺身が出て、昆布焼きは、またもやブリの白子、ホタルイカ。
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筍とニシンの煮ものが出たあとで「握りも食べる?」と大将。このまま行ったら無限につまみが出そうだったので、「はい、そろそろお願いします」と答えて日本酒も勝駒にしたら、大将はなんか下を向いて20分くらいなにか作業をしている。
そして「はい、お待ちどうさま」と出されたのが握りの盛り込みだった。ひとつひとつのサイズは小さいが、大トロ、アカガレイ、ブリトロ、ホッケ、ガスエビ、甘エビ、スルメイカ、カジキまぐろ、いくら、だし巻き、アジ、ぶりをあぶったやつで12種類。これに花わさびの巻物とカニの味噌汁がつく。 さっきも書いたがひとつひとつの酢飯は小さいものの、これを食べるとお腹は満杯。だが、酢飯は甘くなく、醤油も関東スタイルだから、けっこう入ってしまうのだ。
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聞けば開店したのは1987年。
「うちは普通の富山の寿司とはちょっと違うんだよね。富山以外のネタも美味しければ出すし、寿司屋というか美味しい料理と寿司を食べてもらいたいんだよね。だからけっこう県外の客の方が多いよ」
というのだが、ネットではほとんど探せない。不思議だ。
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ここも面白いなあ。清寿司もいいけど、笹寿しもいい。こんな寿司屋が地方に潜んでいいるから、富山は深い。私は最後に黒部峡を呑みながら、これからまだまだ面白い寿司屋が出てくる予感を感じた。
まだまだ続く、富山寿司の旅。
★美乃鮨
★笹寿し