見出し画像

富山県は本当に「『寿司』と言えば富山」になれるか? vol.13(Sushi collection TOYAMA その2)

 6月5日から1泊2日で、富山県のブランディング戦略「寿司といえば、富山」の認知度向上を図ろうと、県内外のインフルエンサーを招待した体験ツアー「Sushi collection TOYAMA」に参加した。
 前回は1日目に新高岡に集合し、氷見までJR西日本の観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール~べるもんた~」に乗車、車内で美食地質学を提唱する巽好幸さんから富山の特徴的な地形と深層水、美食の関係についての講義を受けたり、氷見に着いてからは「灘浦漁業組合」に移動して定置網についてうかがい、夜は寿司「成希」で富山の最先端の寿司をいただいたことまで記した。

 さて、今回はその2日目。
 私も個人的に出かけ、気に入った場所のひとつに新湊の内川エリアがある。富山県もご多分に漏れず、平成の大合併でかつての町や市が一緒になり、名前が変わった。かつてあった「新湊市」は合併でいまは射水市になっているが、富山湾に面した漁港「新湊漁港」を中心とした場所。北前船の時代にはたいそう栄えたそうだ。そこから東西3.5キロほどを結ぶ運河が内川で、その周辺を内川エリアという。

日本のベニスと言われる内川エリア。

 川の両岸には漁船が連なり、古い民家が立ち並ぶ。数百メートルおきに橋がかけられ、それが真紅だったり、青だったりで、海外のような風景だ。その様をみて、いつしかこのあたりは「日本のベニス」と呼ばれるようになった。私は「富山のベニス」だと思っていたが、日本だと知って、大きく出たなあと思ったのだが、実際に内川エリアを訪れるとまんざらでもない。以前、京都府伊根町にある舟屋の町並みを見に行ったことがあるが、そこにも似ているように感じた。
 内川エリアを積極的に開発したのは、明石ご夫妻。県外から富山に来て、ここに魅せられて内川の東橋のたもとにある、畳屋だった空き家をカフェ「uchikawa 六角堂」に改装。そこから続々と内川エリアの古い家屋の改修に携わった。

元畳屋をカフェに改装。

 そのuchikawa 六角堂が2日目の朝食会場。こちらで県内からのツアー参加者と合流し、大阪の中国料理「AUBE」料理長の東浩司シェフが監修し、六角堂が作った「白エビの巻き寿司」を食べた。これは新湊周辺の新たな名物にしたいという意気込みのもので、寿司といっても、海苔のように見えるのはクレープという意欲作。参加者はみな、東橋など思い思いの場所で食べたのだが、テレビの取材も入って、大盛況だった。

新湊の名物になるか!?

 実はその前に5時起床し、新湊漁港から白エビ観光船に乗り、白エビ漁業とそのあとのせりを見学するというオプションがあった。だが、私は毎日、その時間に飲食業界ニュースのクリッピングを行っているために、これに出てしまうと1500回を超える毎日の更新記録が途絶えてしまうので泣く泣く断念した。だが、六角堂で合流した参加チームによると、今年は記録的な不漁と言われていたのに、この日は大漁だったらしく、船内で白エビを食べさせてもらったとのこと。いいなあ。
 その後、内川沿いを散歩し、やはり古い伝統的家屋「内川の家 奈呉」で鱒寿司のワークショップを体験したのだが、これが面白かった。まず射水市の鱒寿司製造会社「丸龍庵」社長から鱒寿司の歴史をうかがった。ご存知のようにもともとは神通川を遡上する天然のサクラマスを使ったもの。鱒寿司と言えば東京では「源」ブランドが有名だが、県内には60~70ほどの鱒寿司を製造する会社や寿司屋があるという。
 ところが近年は神通川のサクラマスが希少になり、ほとんどの鱒寿司は海外のサーモントラウトか北海道や東北のサクラマスを使っているとのこと。ところが射水市は県内で唯一、サクラマスの養殖を行っているため、丸龍庵ではそのサクラマスを使った鱒寿司も作っており、そのサクラマスを使った鱒寿司作りを体験したのだ。

鱒寿司作りの材料。

 木枠の中に笹の葉を重ねるように敷き、酢飯と冷凍のサクラマスを置くだけといえばそうなのだが、きれいにまとめるのが難しく、大の大人がきゃーきゃー言いながら楽しんだ。しかも作った鱒寿司はお土産にしてくれ、私は2日後に食べたが、それはもう美味しいのなんの(笑)。

みんな楽しそう。

 楽しい鱒寿司体験のあとはバスに乗って富山市内の富山県美術館へ移動。こちらでフィナーレの「富山の食の未来を表現するランチ会」が行われた。昨晩は最先端とはいえ、寿司職人ふたりの握る寿司だったが、今回は朝の白エビの巻き寿司を監修した東シェフと、東京・恵比寿のシーフードフレンチ「abysse」の目黒浩太郎シェフによる、言っていれば寿司の再構築。しかも合わせるペアリングは富山「INABAR」の稲垣隆志バーテンダーという豪華な取り合わせなのである。

斬新なメニュー。

 場所は3階にあるレストラン「BiBiBi&JURULi」。環水公園を眺められる絶景だった。出された料理はそれぞれに、熟れ寿司や押し寿司など、寿司のさまざまな表現が使われ、それをふたりのシェフが自分のレパートリーを使って斬新な料理に仕立て上げた。新田八朗知事も参加され、フィナーレを飾るにふさわしい料理だった。

前菜の数々。
サクラマスのabysse風かぶら寿し。
放牧牛の焼きしゃぶとホタルイカの熟鮓。
富山県立美術館の屋上から環水公園を眺める。

 まだまだ富山の寿司を味わいたい余韻にかられたが、中身の濃い2日間を終え、富山駅で解散。いやあ、「寿司と言えば、富山」プロジェクト、楽しくなってきたなあ。まだまだ掘れること、たくさんあるものなあ。
 まだまだ続く、富山寿司の旅。

★uchikawa 六角堂

★AUBE

★abysse

★INABAR

★丸龍庵


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?