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富山県は本当に「『寿司』と言えば富山」になれるか? vol.17(富山空港「たねや」大将の独立 その1)

「富山県は本当に「『寿司』と言えば富山」になれるか?」の連載を始めるにあたり、昨年9月の「vol.2」で私は、まず富山県の玄関口、富山空港の到着ロビーの隣にある「とやま鮨たねや」を訪れることにしたのだった。
 ここ数年、富山に行くときは新幹線ばかりだったため、「たねや」の存在自体を知らなかったが、富山きときと空港に降り立つと、到着ロビーのすぐ隣に店があり、すでに予約でほぼ満席。ひとりだったので、なんとか席を確保できた。

丁寧な説明にこだわりを感じる寿司屋だった。

「とやま鮨」は富山駅前にある回転寿司の名店として知られるが、こちらは回らないばかりか、種口英輝さんという名物店長が美味しい寿司を握ることで有名。私はふくらぎ(ぶりの幼魚)、かさご、大トロ、紅ずわいがに、ふくらぎのなめろうの地物「お勧め5貫握り(2420円)」を注文し、安吉の蟹みそ、キジハタ、太刀魚のあぶり、のどぐろと紅ずわい蟹の混ぜ込みを追加した。

安吉の蟹みそ。

 ネタがキトキトなのはもちろんだが、特徴的なのは、酢飯の上にネタが幾重にも重なるサービス感あふれる握りが多いこと。特にたねやオリジナルの「のどぐろと紅ずわい蟹の混ぜ込み」は富山に来たら誰もが食べたい魚介が一度に食べられるスペシャルな握りで、「富山に来たんだなあ」という感激を味わった。

のどぐろと紅ずわい蟹の混ぜ込み。

 その種口さんが「たねや」を辞め、独立したという情報が飛び込んできた。ただ、空港店に貼られた告知によると、もともと種口さんは業務委託で「たねや」を運営していたため、正確にいうと独立ではなく、移転とのこと。営業は今年5月で終え、6月から立山町で新生「たねや」として、新規開店することになったという。
 でもって、もともとあった空港店は一時休業。改装して、7月1日から『廻転 とやま鮨 空港店』となると告知されたが、7月末段階でもオープンされておらず、電話で聞いても開店日は未定とのこと。本来なら、空港の廻転とやま鮨を食べてから新店を訪れようと思ったのだが、その目論見は外れてしまった。だが、考えてみれば「とやま鮨」は東京にもある。銀座コリドー街にある「廻転とやま鮨 銀座」である。なので、ここで予習をしてから新店を訪れることにした。
 銀座コリドー街とは、JR有楽町駅と新橋駅を結んでいる路線の高架下道路周辺にある飲食店街。古くから飲食店が連なっていたことから、回廊l、通路をあらわす「コリドー(corridor)」から名付けられたと言われ、ここ数年は男女の出会いの場所として有名になっている。

威勢のいいカウンター。

 とやま鮨が出会いに有効な場所かといわれると疑問があるが、場所は地下一階とはいえ入りやすく、私が訪れたときはほぼ満席。あとから予約をせずに来た客はウェイティング対応だった。私はひとりなのでカウンターだった。数席隔てたところにはラテン系の外国人客が4人いたが、注文はタブレットで英文対応もあるので、問題はなさそうだ。ちなみに、ここも回転しているのはメニューだけで、寿司は持ってきてくれる。

タッチパネル方式で、英語対応も。

 さすが「富山推し」だけあって、まずは「とやま4貫握り」と「富山湾3貫」。4貫はサス、まぐろ、クロダイ、ホタルイカ。3貫はひらまさ、とやまあじ、真鯛。さらに名物の紅ズワイガニとやま盛りとツブガイを追加して、巻物が欲しかったのでトロ鉄火とあら汁で〆た。日本酒は我慢したが、玉旭、立山、幻の瀧、銀盤、黒部峡、一粒一水など富山の地酒が揃っているのは頼もしい。富山が恋しくなった時にはここに行けばいいかもね。

「とやま4貫握り」と「富山湾3貫」は一緒に。

 富山の廻転とやま鮨の醤油がどうだったかは記憶にないが、銀座店は東京スタイルの辛口。サスやホタルイカ、紅ズワイガニを食べると、直ぐにでも富山に飛んでいきたくなる。

名物の紅ズワイガニとやま盛り。下に酢飯が隠れている。

 というわけで、種口さんの新店「たねや」は次号のおたのしみとさせていただきます。
 まだまだ続く、富山寿司の旅。

★廻転とやま鮨 銀座



 

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