富山県は本当に「『寿司』と言えば富山」になれるか? vol.18(富山空港「たねや」大将の独立 その2)
富山きときと空港の到着ロビーにある「とやま鮨たねや」は、事前予約がないと入れないほどの人気店だった。「とやま鮨」は富山駅前などで展開する回転寿司のチェーン店だが、この店は店長の種口英輝さんがとやま鮨と業務委託契約し、自身の店として運営していたそうだ。だから回転しないばかりか、ネタも独自色が強かった。
たとえば、安吉の蟹みそ、のどぐろと紅ずわい蟹の混ぜ込みなど、酢飯の上にネタが幾重にも重なるサービス感あふれる握りが多いことで、特にたねやオリジナルの「のどぐろと紅ずわい蟹の混ぜ込み」は富山に来たら誰もが食べたい魚介が一度に食べられるスペシャルな握りで大人気だった。
その種口さんが「たねや」を辞め、独立したという情報が飛び込んできた。正確にいうとすでに自身の店だったので移転となるが、営業は今年5月で終え、6月15日に立山町で新生「たねや」をオープンしたのだ。
立山町は富山市に隣接しているが、富山駅からは少し距離がある。が、車だと立山インターを降りてすぐなので、車社会の富山では気にならなそうだ。場所は、もともとスナックがあったところに新しく建てた建物の2階。駐車場も完備している。
靴を脱いで階段を上がると扉があり、まずは6人掛けのカウンター、そして奥に4人掛けがふたつ。事前にコースを確定する必要があったため、この日はスペシャルな15000円のコースを予約して臨んだ。ちなみにランチは6000円からで基本は握りのみらしい。
面白かったのはお通しが「地鶏の黒酢あんかけ」、そして刺身盛り合わせのあとにステーキが出てきたこと。しかも、刺身盛り合わせのなかにもくじら刺しが入っていた。とにかくお腹いっぱいになって帰ってほしいというのが大将の信念で、そのためには、その季節の美味しいものが手に入れば、タブーなく使おうということなんだろう。
開店にあたって、醤油は富山のマスイチ醸造の杉樽仕込みの「木樽醤油」を使用、ガリは鰹節とブレンドしているとのことで、こういう細かいところまで気が利いているところが、空港でやっていたときから人気が出た原因だろう。
今回は奥の席だったため、大将は数貫ずつ握っては説明に訪れる。ネタはできる限り県内のものを使うようにしており、この日もひらまさ、アカガレイ、すずき、ボタン海老、オニカサゴ、のどぐろ、甘えび、アジなどは新湊や魚津、黒部などから取り寄せたという。ただしマグロだけは県外で、この日はアイルランド産。最近はアイルランドのマグロの質が良くなっており、都内でも使う寿司屋が増えている。
握りの合間にかぶら蒸しやクリームコロッケ、オリジナルのにんにくチョコレートなどが出されるから、超満腹。最後は最中のアイスクリームで締めくくった。
空港店時代のネタを重ねる握りは今回は姿を消していたが、ホスピタリティあふれる寿司の数々は健在。最後に大将から「15000円は多すぎるかもしれないね、今度は10000円のコースでいいかもよ」と言われたのだが、それなら最初に言ってほしかった(笑)。
空港店によく訪れていた芸能人が早くも来店するなど、大将の人柄か、すぐに人気店になっている様子。気になる方は予約をしてから訪れたほうがいい。
この先は内緒話。
たねやから帰ってきて、富山駅前のホテルにチェックインしたのだが、なんとなく少し散歩をすることにした。せっかくなら、深夜に営業している寿司屋を見に行こうと思い、幸町の「寿し晴」をのぞいてみた。こちらは富山市内でも数少ない深夜2時まで営業している寿司屋だ。
前回行ったときは満席で断られたのだが、この日はちょうど入れ替わりで席が空いていたので、座れた。ここの名物「バイ貝のたたき」とサクラマスの刺身で一杯やり、白エビなどをちょいと握ってもらった。あんなにお腹いっぱいでも寿司は入っちゃうんだよねえ。帰宅してからの体重計が恐ろしいけれど。
とにかく、まだまだ続く、富山寿司の旅。
★たねや
★寿し晴