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科捜研文書のお仕事

筆跡、偽造、文字と紙と印刷物。

……

科捜研の文書分野のお仕事について詳しく解説します。

1.筆跡鑑定

文書鑑定と聞いて真っ先に連想するのがこちらでしょう。人が書く文字には各個人の癖が反映されており、その違いから誰が書いたか判別することが可能です。皆さんの中にも、家族や同じ職場の人の文字なら雰囲気で誰が書いたかわかる、という方もいらっしゃると思います。
そういった文字の特徴を細かく比較し、鑑定を行います。
また最近では、書かれた文字の特徴をコンピュータを用いて処理することで、客観的に判別する試みも行われています[1]。

2.印刷物

人が書く文字以外に、印刷された文書も鑑定の対象となります。歴史的にはタイプライターの文字版の個体差を元に、文書の出処を特定したりされていましたが、家庭用のプリンターやコピー機でも機種や個体毎の特徴が見られる場合があり、識別が可能です[2]。
併せてインクやトナーの化学分析を行うことで異同識別が可能です。
偽造のパスポートやカード類も同様ですね。

3.印鑑・印影

日本国内ではまだまだ現役である印鑑についても鑑定が行われます。
印鑑の文字が1つ1つ異なるだけでなく、同じ印鑑でも押し方によって印影には差ができます。近年は3D技術の発展により印鑑のコピーが可能になるのではないか、など話題になることも多いですね。

4.文章

言葉の遣い方など文章の特徴から個人を識別する試みが行われています[3]。こちらの方が積極的に研究されているようで、複数の論文が掲載されています。
文章の癖は意識しても変えるのが難しいので、シチュエーションは限定されますが面白い技術だと思います。

5.偽造通貨

偽造通貨の鑑定は科学警察研究所の附属鑑定所で一括して行われています[4]。
通貨偽造は重罪です。
各種計測や成分検査が行われるようです。

文書は成分検査の関係で化学分野との連携も重要となる分野ですね。


と、ここまで分野の紹介をしてきましたが、偽造に関わる内容はかなりの部分がベールに包まれています。通貨や身分証の偽造は、国の根幹に関わっており、偽造する側に情報を与えるわけにはいきません。
したがって、鑑定に必要な内容は科捜研に入ってから、ということになるでしょう。

リンク

[1] https://doi.org/10.3408/jafst.731
[2] https://doi.org/10.3408/jafst.747
[3] https://doi.org/10.3408/jafst.715
[4] https://www.npa.go.jp/nrips/jp/identification/


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