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聞くコトの大切さ

僕は食べ物のチクワを見ていると「コーチング」を思い出す。

コーチングをバカにしたいのではない。むしろ中には素晴らしい方もたくさんいらっしゃると思うし、本当に素晴らしい方が事業の並走などしてくれてコーチ役をかってくれれば、僕の事業も5倍くらい加速するのかもしれない。

チクワって、中が空洞になっていて周りからみた形や色は概ね同じもの。この形状がコーチングだったり世の中の「深掘り」「ディグる」ってものが似ている気がしているのだ。

POPLIFE THE PODCASTという僕の大好きなポッドキャスト番組があるのだけれど、とある回で元SNOOZERの編集長タナソウさんが、同様の話をしていて思わず「そうそう!」と深くうなづいてしまった。

よくコンサルティングの現場でも、コーチングでも「深掘り」という言葉が言われる。これは自分を垂直方向に深く深く「問い」をたてながら向き合っていくと、真実や本当の思いにたどり着くみたいな手法だと思うんだけれど、今現在の自分なんてものを信用して掘っていっても結局たどりつくのは、元の自分。つまり穴があいたチクワのようなものになるのではないかと思っている。

僕は垂直方向や自分の内側などに答えはないと思っていて、人に関するすべてのことはその外側に表出していると思っている。

例えばゾウという動物を語るのに、ある人は耳が大きいといい、ある人は鼻が長いといい、ある人はお尻が大きいといい、ある人は体自体が山のようだという。つまり物事は、見る人の視点と角度と距離をつなぎあわせ多面的に構成する必要があると思うのだ。簡単な日本のことわざでいうところの「木を見て森を見ず」

ここで仕事をはじめる前の「ヒアリング」という話になる。よくあるのが依頼主だけと話を何度もして、決裁権のある人間だけの言葉を信用&深掘りして真実にたどり着こう、いいアイデアのヒントにたどり着こうということが日常的に、よく行われているのかもしれないけれど、僕がよくやる手法は、場所を変えて、立場の違う人、年齢の違う人様々な人の意見を、言葉を聞くヒアリング手法。

そうすると何が見えてくるのか

その人にだけある「真実」という幻想ではなく、多面的に見えてくる実像としての「真実」が目に見えてくる。特に会社のことであったり、新しい商品であったりすると、なおさらそこに最初から形のないものが多い。それを目に見える形にしていく作業が多面的にみるヒアリング。

なぜそれをするようになったかという理由がある。

過去に自分がキャラクターの会社をやっていた時に、ある洋菓子店の新商品のキャラクターをつくる依頼があり、その店のオーナーと打ち合わせに行った帰りのこと。

お店の前で、バイトの女の子が一生懸命に仕事をしていたのだけれど、僕の顔を見るやいなや「この間も別のデザイナーさんがきて、あれこれデザインしてくれたんですけど、それ社長以外の誰も気に入ってないんです、今度は私たちの意見も言わせてもらっていいですか?」とそれだけを伝えて仕事に戻っていった。

その帰り道、僕は雷にでもうたれたような気持ちになっていろいろなことを考えていた。その頃の僕は、少しばかりいい気になって「決裁者としか話をしない」とか偉そうなことを言いながら、しかもどちらかというと「キャラクターの専門家がもってきたラフアイデアですよ、どうですか?いいでしょ」みたいな少し傲慢な調子にのったデザイナーだったと今でも思う。

けれど、キャラクターやデザインは、それを買うお客様やそれを売る従業員の皆が自信をもって売らなければ意味がない。スタッフが気に入ってないなど言語道断だ。僕はそのダメなデザイナーと同じ過ちを今まさしく、おかそうとしていた。そして同時にその意見をくれたバイトの子に深く感謝した。

そこからそのプロジェクトは、お菓子をつくるチームが主導となり、そこに営業の方や古くからのオーナーや別の店舗の従業員まで巻き込んで、あーだこーだ言い合うプロジェクトとなり、結果日経新聞など各社が取材にくる大きな成功をもたらした。

この経験があって僕は、多方面からのヒアリングをそれこそ取材記者のごとく聞いて回る手法をとるようになった。机を前にすると緊張をする人もいるので場所はカフェや居酒屋などに変えるときもある。雑談の隙間からみえる一言に耳をすましながら、その人独自の視点をさがしていく。

尊敬するコピーライターであり、クリエイティブディレクターの廣澤康正さんもご自身のnoteでこう書かれている

ここからは「社員からの聞き取り」の例えば話です。全員に話を聞くわけにはいかないので、そこは選抜制にしましょう。例えば各部署からバラバラに、役職もいろいろな20人くらいのメンバーに集合をかけて、ブランディングについて意見交換しながら、専門家がまとめていくのが良いんじゃないですかね。もちろん社内メンバーの資質も重要なので、やがてそのブランドを背負っていくような人材を集めてくださいね。その中にパワハラ体質のまったくない取締役を入れておくのも良いです。みんなが発言しやすい環境づくりは大事です。
それをワークショップ的に、週1回開催で最低でも3ヵ月。自分たちのあり方を、しっかり議論し、検討し、詰めて行きます。その後の対外的な訴求についても検討しようと思うなら(その方が絶対良いんですけどね)、もう3ヵ月増やして考えていくことで、やっとみんなに腹落ちするような内容になるわけです。それでブランディングの準備が出来たかな、くらいのところです。
とりあえず、あなたが依頼しようとしているブランディングの専門家が良い人かどうかを見抜く方法といえば、やはり、こういったブランディングの進め方について、詳しく聞いて判断するしか無いです。そして、「ウチなら2ヵ月でまとめる自信があります」みたいな専門家とか会社は、信じないほうが良いです。

ここにヒアリングの重要性のすべてが書かれている。

そう考えるとクリエイターの仕事は刑事の仕事に近い。聞き込んで足を棒にしてたまにはお金をつかいつつ人と会話し、「ホンボシ」と思われるものに近づいていく。

何かをつくる仕事をするとき、その目的の先に必ず「ホンボシ」はある。けれどそこに矛盾するようだがモノゴトの真実はない。そもそも真実なんてものは存在しない。日によって、人によってうつろいゆくほどに不確かなものだ。たまにはチクワの穴から世の中を見るようなバカなことをしながら、お客さんと笑いあってるくらいがちょうどいい仕事になるのかもしれない。

ふかぼってしまうことが良いと思ってやりがちな方、ご用心を(笑)

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