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日記/20249/16/磯丸で老いを感じるミッドナイト

磯丸水産に行ってきました。おそらく2~3年ぶりの訪問だったと思います。私の磯丸歴はそれなりに長く、東京に上京した19歳の頃に初めて行ったと記憶しています。東京の魚はなんて小さいのだろうと思いつつ、それでも専門学校の近くにあったためか、お腹いっぱ丼物を食べれる店として重宝していました。ありがとうございました。

お酒を飲むようになると、2軒目か3軒目くらいでとりあえず磯丸に入ることもしばしばありました。1軒目では入らないんですよね。不思議です。そうそう、あれは新宿だったと思いますが、終電を逃してしまったぼくを優しく迎えてくれたのも磯丸でした。

ファミレスが24時間営業を縮小しつつある頃だったし、なによりお酒が飲めればわりとどんな店でも良い僕にとっては本当に憩いの場所でした。いや、味も美味しいんですよ。ぼくは島寿司が好きです。味がよくしみててお酒に合いますよね。ちなみに島出身ではありません。ごめんなさい。茨城の内陸生まれです。

三十路に近づくにつれ、磯丸に行く機会も減りました。東京での暮らしも長くなってくると、美味しい店を知る機会が嫌でも増えてくるものです。神泉の魚が売りの居酒屋に連れて行っていただいたときは、なんだか分不相応な気がして緊張したっけ。


最近年下の若い男とよく出かけるんです。若いといっても3歳差なんだけど、いや、3歳差ってデカいですよ。本当に。肌艶がまるで違う。違う、そうじゃなくて、そんな彼と渋谷に繰り出す機会があったんです。しかも週末に。

週末の渋谷ってどこも人だらけじゃないですか。美味しい店なんか、最近はスマホで事前受付をしないと入れなかったりする。だから磯丸でも行くかという話になった。「磯丸かぁ」と思いつつ、久しぶりに行く磯丸に内心ワクワクしていました。店に入るまでは。

入店して早々に泣き出しそうになりました。若い人が多い、いや違う、若い人しかいない。右も左も若者だらけ。店員も若者です。「いやお前だって29歳だろう?まだまだ若いよ」なんて言葉はまやかしです。自分が29歳だった頃をよく思い出してください。中年とも言えず、かといって若者からは警戒の目で見られるあの感覚を。

スマホ注文も、なんだかうまくいかない。途中でエラーメッセージが表示され、店員の若い兄さんにちょっと強めに聞いてみると、どうやらぼくが使い方を間違っていただけらしい。悲しい。完全に老害である。でも島寿司は美味しい。あ、食べましたよ島寿司。相変わらず美味しかった。

渋谷という土地柄もあるのでしょう。イベント帰りのおそろいのシャツで盛り上がる若者、どう見ても駅チカ空中店舗のイケイケ不動産で働いているムチプリ営業マン(どう見ても年下)。

そしてどこを見てもセンターパートなんです。しかもセットがうまい。毛量が減り自然とセンターパートになってしまうおじさんとは違う。ここはぼくがいる場所ではない。いてはいけない。でも島寿司は美味しい。ジレンマ?パラドックス?そんなことはどうでもいい。目の前のいい男に集中するしかないのだ。


気づけば23時半を過ぎ僕たちはハチ公口へダッシュしていた。食事の間に土砂降りが降ったのか地面が濡れ渋谷の光を照らしている。

外国人観光客はコンビニで酒とつまみを買い路地で酒盛りをしている。化粧が崩れた男はヘトヘトになりながらナンパを諦めきれないでいる。全身ピンクタイツのストリートパフォーマーが歌うQUEENが何故か上手い。

一刻もはやく磯丸と渋谷から離れたかった。一刻もはやく代々木駅で都営大江戸線に乗り換えたかった。新宿へ帰りたかった。

ありがとう磯丸、ぼくをここまで育ててくれて。ありがとう磯丸、また会う日まで。また島寿司を食べるその日まで。ぼくが老いなんてどうでもよくなるほど老け込むまで、どうか、お元気で。

旅費と書籍代として使わせていただくことになると思います。