
ChatGPTに文学の論文は書けるか
この時期、図書館で卒業論文などに取り組んでいる学生が多いですね。閉館時間ギリギリまで粘って頑張っている人も見かけます。
レポート課題の場合、「◯◯について書きなさい」と決まっていることが多いのですが、論文は一から自分で考えないといけないので、これが結構大変です。
ところで、こんなツイートがバズっているのを見かけました。
大学生の後輩の、AIを駆使した授業の受け方が凄すぎた。
— usutaku@AI情報解説 (@usutaku_com) June 3, 2023
・ZoomURLや講義PDF、教授の発言等を”Notion”で一括で管理
・授業NoteをAIに読み込ませて要約作成
・”ChatGPT”で論文のアイディアや構成を練る
・”System Pro”でテーマに沿った文献を一括取得
・英語を”Grammaly”で文法修正… pic.twitter.com/KTLazGzQQZ
chatGPT(https://chat.openai.com/)で、論文のアイデアや構成を練る。
えっ、そんなこと出来るの?
出来るなら、ちょっとは作業が楽になりそうです。
今回は、実際にchatGPTを使ってみて、その特徴を分析しようと思います。
テーマを相談してみた
論文は、根拠として、作品本文の引用やデータを挙げながら論じるものです。
chatGPTは具体的な資料を挙げられないので、論文を書くことは出来ないということになります。
ただし中身は書けなくとも、アイデアは出してくれるはず。
「古典文学作品でレポート書くことになった。何の作品を扱うか、何をテーマに書くか、全く思いつかない。」と相談してみると、
作品:『源氏物語』
テーマ:「女性の立場と感情表現」
と提案されました。
論の切り口も挙げてくれます。
【女性の社会的立場】登場女性たちがどのように社会において立ち振る舞っていたのか、また彼女たちの抱える葛藤や願望に焦点を当てます。
【登場人物の比較分析】彼女たちの個性や役割の違いに注目します。それによって、『源氏物語』が異なる女性像を通じて様々なテーマに触れていることを明らかにします。
共通点のある登場人物を2,3人比較するのは、論としてよくある手法ですよね。これなら、なんか書けそうな気がしてきました!
chatGPTの案は王道で、基本に忠実です。
わざわざ生成AIを使う意義はあまり感じませんでしたが、見落としている論点がないかチェックするのにはいいかもしれません。
論文を要約させてみた
論文には先行研究のまとめも欠かせません。が、まず全てを読むのに時間がかかります。そこでchatGPTに、論文の要約をさせてみました。
文章を丸ごとコピペして、「以下の文章を要約してください」と言うだけでOK。
有料版で使える「ResearchGPT」では、PDFごと読ませられるそうです。
論の要点だけを知りたい場合、圧倒的な時間短縮になるので、この機能はかなり使えますね。
外国語で書かれた論文を読むにも、chatGPTに先に日本語で「あらすじ」を教えてもらった方が、内容を把握しやすくなりそうです。
chatGPTの弱点
デメリットとして、chatGPTは次のことを挙げています。
【主観的な判断の欠如】chatGPTは事実を要約する能力があるものの、主観的な判断や論文の著者の意図を理解することは難しい場合があります。
論文は客観的事実に基づいて書かれています。そこから導き出される結論が、筆者の主張です。「事実」の後に「意見」がある、という感じですね。
chatGPTは、この「意見」を判断するのが苦手。
確かに要約された文章の中には、「事実」と「意見」の境目が曖昧で、筆者の意見なのに、あたかも歴史的事実であるかのように書かれている文がありました。
意見や主張は、「~と考える。」「~ではないだろうか。」のように書かれているので、論文を読めば、どの部分が筆者の主張なのか割と明確だと思うのですが、chatGPTにはこれが難しいようです。
chatGPTでやった課題はバレるのか
検索バーに「chatGPT」と打ち込むと、「課題 バレる」という予測候補が出てきました。某知恵袋でも、「バレますか?」という類の質問が多く見られます。
「文が不自然だからバレます」という返答を見かけましたが、chatGPTは人工知能ですから、たくさん使って、不自然な点はどんどん訂正することで、自分好みに矯正することも出来るはずです。その努力(手間)を惜しまなければの話ですが。
そこで、chatGPTを使って「○○について書きなさい」というタイプの課題に取り組む時、生成された文章をどう扱えばいいか考えてみました。
主張は明確にしておく
試しに「AIの進化により人間の仕事がなくなる」というテーマで小論文を書かせました。
問いをそのまま投げると、「人間が新しい価値を見出すためには、柔軟性や学習能力が求められる」というもっともらしい意見が出てきたのですが…。
その後、「一方で…」「さらに…」と論点がずれていき、最終的に何が一番言いたいことなのか分からないまま、終わってしまいました。
小論文は、1つ自分の主張を決めて書くものです。chatGPTは一言で言うと、主張が多い。
そこで、自分の意見;『人間とは何かを問われる時代になったということ』を踏まえて書くようにと言うと、少しはマシになりました。
chatGPTは、自分の意見を「これだ!」と決めて、強調して主張することが苦手なのかもしれません。
※強調して主張するように言うと、太字で何度も繰り返されました。そうじゃない。
今回はchatGPTを実際に使ってみて分かった、特徴や弱点を述べました。
このあたりの”chatGPTらしさ”が、今後どうなるか見ものですね。
おまけ

そんなこと言ってないよ、という部分もありますが、概ね合っています。
以前、所属ゼミの指導教員に論文を見てもらった際、「~される」「~することができる」という文が多いよ、と指摘されました。文が冗長になるので避けた方がいいとのこと。上の文章にも、同じことが言えます。