【バスに乗って気がつく】
この土地に来てバスに乗る機会が増えた。
今日もわたしはバスに乗る。
同じバス停からは中学生がひとり。
車内は混雑している。
座席はほぼ埋まっている。
バスが停留所に着くたび、
誰しもが座りたくなる状況に直面する。
3つ4つと停留所をバスが進んでいく。
だんだん乗客はひとりふたりと降りていく。
ふと気がつくと、
先ほどの中学生がひとり入口近くに立っている。
座れば良いのに座席はもうだいぶ空いている。
車内で立っているのは2人だけだ。
彼女とわたし。
わたしはバスにせよ、電車にせよ、立っていることの方が多い。空いている席をさがすのがおっくうなのだ。
いやむしろ空いている席を探すのが怖いとでも言えるかも知れない。だから、立っている場合がほとんどだ。
彼女はどうしてだろう。
風景を眺めるのが好きなのか。
いや、座ってでも風景は眺められる。
それとも長幼の序を重んじる家庭に育ったのか。
バスはつぎのバス停、つぎのバス停へと進んでいく。
やはり、彼女はいっこうに座る気配がない。
この土地、というよりも地方都市は、バスが生活者の重要な足になっている。老若男女例外はない。毎日の通勤、通学、通院などのためにバスはかかせない。
ここにきてふと合点(がてん)がいった。
勝手なご都合主義な身勝手な解釈だと思う。
でも、そう考えると不思議と嬉しくなった。
彼女は、つぎに乗ってくるであろう高齢者や妊婦さんなどのために、席を空けているのだ。
その表情はまだあどけない。口を真一文字に結び、少し頬をあからめながら、しっかりと両手は手すりにつかまっている。
勝手な思い込みだが、
わたしは彼女を格好いいと感じた。
そういえば明日は敬老の日だ。
…ていうお話。
🍙この件で『この森で、天使はバスを降りた』という映画を思い出した。悲しい映画だけど今日一緒にバスに乗った彼女を重ねてしまった。
撮影場所:小樽市色内
Photo by かしるい
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20230913