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【きっかけ】

🐱ちょっとこみいった話でごめんね。
🐱一人称がぼくになってるのは書きやすかったから。


ぼくは、たぶん、おそらく、なにごとも、

カタチから入るタイプだと思う。そんなに細切れに強調しなくても良いと思うけど。

何でも決めたことに対してはカチカチ?キッチリ?しないと気がすまない。そのくせ崩れるとめっぽう自分に甘いという性格の悪さだ。

今回決めたこともすごくまわりくどいんだけど、やはりカチカチしたいので順をおって説明?しないとなんか嫌なので説明することにした。決めたことはたいしたことじゃない。

有幌町に乗り捨てられた主のいない自転車

ぼくは気がすむまでこの街を歩こうと決めた

3年前の夏のおわりだった。当時ぼくは足利で出会った彼と突然離れたばっかりで心身ともに最悪だった。

あまりのひどさで親友の亜里沙(仮名)に言わせると当時のぼくは闇堕ち寸前だったらしい。闇堕ちっていうのかな。わからないけど。ご飯は食べない、突然大声でわめく、泣きじゃくる、とひどかったらしい。

ぼくの状態が少し落ち着いたころ、亜里沙がぼくを旅行にさそった。というより亜里沙が姉のかーちゃんに許可を求めたらしい。

亜里沙は高校からの親友でうちにも良く遊びに来てたので、姉妹はみんな知ってる。言葉は悪いけどたぶん腐れ縁っていうんだと思う。

旧日本石油株式会社倉庫

闇堕ち家族会議で小樽へ行く

どうやらぼくの闇堕ちで家族会議が開かれたらしい。その席上で、亜里沙ちゃんからこういう話があってねと、かーちゃんは妹たちに言ったらしい。

らしいというのは、あいにくぼくは覚えていない。あとで妹に聞いた話だから。ぼくはもにょもにょ何か言ったみたいだけど、かーちゃんは家族会議をこう言って終えたらしい。

「気分転換はどんなときも必要だよ。旅費は立て替えとく、とにかく瑠衣(仮名)は亜里沙ちゃんと小樽行ってきな。」

さすがぼくら姉妹のかーちゃんだなと思う。かっこいいのだ。なんかすぱっとしてる。ぼくとは正反対だ。さすが怖いお兄さんにナイフを突きつけられても動じなかった姉ちゃんだ。ほれぼれする男気だ。男じゃないけど。

でもなんで小樽だったかは今だに謎だ。たぶん亜里沙が行きたかっただけかも。亜里沙ごめん。冗談だから。

荒巻山

逃避行のはじまり、、、?

闇堕ち家族会議からほどなくして、ぼくは亜里沙の運転で茨城空港に行きスカイマークに乗った。当時夕方の便は減便になっていたので朝早くに亜里沙は迎えに来てくれた。新千歳行きの791便。

亜里沙は何があってもぼくを小樽に連れていく顔をしていた。新千歳に着くと一目散に快速エアポートに乗り込む。幸いJRは運行していたので、お昼過ぎには小樽に着いた。

小樽につくと亜里沙はぼくに言った。「ね!来て良かったでしょ。」満面の笑みをぼくに向ける。いたずらっ子の顔だ。来て良かったのは亜里沙の方だとは思ったものの、ぼくは黙ったまま亜里沙のあとをついて改札を抜けた。目の前にはむかし母とみた日本海独特の青い海が遠くにみえた。

中央通り
小樽駅

一冊の文庫本に出会えたのがきっかけだった

ぼくたちは駅前のホテルに荷物を預け、亜里沙と街を散策した。観光客はまばらだったけど、ぼくたちは運河沿いの遊歩道を歩きながら浅草橋、出抜小路と抜けて堺町本通りに向かう。

堺町本通りも運河同様に小樽の定番だけど、他の観光客にもれず亜里沙もまた念願だったらしい。パワーストーンを買うか迷った浪漫館やリニューアルした硝子館では2人とも無口だった。

理由はお察しのとおりです✨

小樽運河

その後、ぼくたちはちょっと探検してみようということになり、ルタオ本店の時計台から脇道に入り水天宮を抜け花園橋近くの喫茶店に入った。そこで一冊の文庫本が目にとまった。

ぼくは昔から旅先で文庫本を買う癖がある。特に読むわけでもないんだけど、かならず一冊は買ってしまう。あのときは、手にとった瞬間に買おうと思った。

実際に読んだのは翌年の春先だったけど、読み始めたら、なぜかぼく自身とオーバラップしちゃって一気に読んだ。感情移入したせいで思い切り泣いた。

読み終えたら、もう一度「あの街」に行きたくなった。街の風景が思い浮かんだ。亜里沙が誘ってくれたときは正直言ってうわの空だったけど、今度はしっかりと街の息づかいを感じてみたくなった。

亜里沙との小樽の旅は結局、倶知安にまで足をのばした。うちに帰るころにはぼくの状態も亜里沙と冗談を言い合いながら旅を愉しむほどに回復していた。

水天宮表参道より花園橋方面を望む

ぼくは今日いつもの喫茶店にいた

この街では国道5号線に架かる歩道橋を撮り歩きのはじめの一歩にしている。午後はお気に入りの喫茶店がスタート地点になる。

ぼくはかならず深煎りのコーヒーを飲む。香りをたのしみながらじっくり歩くルートを考える。ぼくの撮り歩きの儀式だと思ってくれれば嬉しい。この街にきて覚えた新しい儀式だ。

そんなときぼくの目のまえを車イスの男の子が横切った。楽しそうな笑顔で前にすすんでいく。両親と思われる2人が心配そうにあとをゆっくりと歩いていく。
おそらくこれから運河を見に行くのだろう。

その光景をみたときぼくはようやく気がづいた。

ぼくにもう両親はいないけど、ぼくには亜里沙をはじめ、かーちゃんや妹たちがいる。みんなぼくの帰りを待っている大切な「家族」なんだと改めて気づかされた。
そう思ったら、ようやく立ち上がる勇気が湧いてきた。

撮り歩きの儀式

ぼくは生かされている

世の中には心ない人が多い。知りもしないくせに、さもすべてを知っているように話す人。散々人を罵っておいて矛先が自分に向かうとだんまりを決め込む人。

ほんと世の中にはいろんな人がいる。
嫌にもなる。死にたくもなる。

亜里沙に誘われこの街に来て、街に気分転換のきっかけをもらった。亜里沙の方はめちゃ楽しんでいたけど笑。

ただおかげであの時の小樽旅をきっかけにぼくはだんだんと目を覚まし今では生きてる実感を感じられるようになった。人は扶けあうことでしか生きられないことも知った。

はたして本当にそうなのかは今のぼくにはわからない。でも今はそれでいいんだと思う。

小樽の運河は今年の冬、完成100年を迎える。

そういう年に再びぼくがこの地にいるのも
何かの縁なんだろうと感じている。

北運河

…っていうお話。


🍙文庫本は田丸久深(たまるくみ)さんの『小樽おやすみ処 カフェ・オリエンタル〜召しませ刺激的(スパイシー)な恋の味〜』(二見サラ文庫)です。

人間関係で悩み仕事を辞めた主人公が再就職もうまくいかずに、たまたまはいった小樽のカフェで人の優しさにふれ再び前を向き歩いていくお話です。

撮影場所:上から順に
小樽市 有幌町、色内、石山町、稲穂、稲穂、色内、東雲町、色内、自宅
Photo by かしるい

絶賛、勝手に潮来好き好きプロジェクト実施中!

[投稿にあたりnoranekopochiさんの写真を使用させていただきました。ありがとうございます。]

20231009


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