note "スタートアップ冬の時代のIPO" 連載はじめます!
noteが上場したのは2022年12月21日。2022年は10年くらい続いてきた株式マーケットの上昇相場が終了し、上場・未上場のスタートアップの資金調達環境が悪化するなど、「スタートアップ冬の時代」と呼ばれました。
それから約5ヶ月が経ち、株式市場に大きく影響を与えるアメリカの政策金利の引き上げはまだ続いています。金利が低かったコロナ禍のゼロ金利時代からは5%金利が上がり、さすがに今後は上昇幅が緩まり、段階的に下がっていくことが予想されていますが、3月のシリコンバレーバンクの破綻などを端緒にアメリカの銀行の経営破綻が続き、実体経済の行方はまだ予断を許しません。
株式市場が今後回復したとしても、2020-21年のバブル時代に戻るかはわからず、また投資家からのスタートアップへの収益性の目線は厳しくなっていますので、スタートアップ冬の時代はもう少し続きそうです。
このような環境下で、noteがIPOして以降、様々なスタートアップのCFOや関係者から相談がありました。IPOや資本政策に関する悩み事が多く、共通しているのは、経験したことがないことから生ずる漠然とした不安、何をやったらいいのかそもそもわからない、取り組んでいるが方向性が合っているか不明、などです。
私からはnoteの上場準備から得られた経験をシェアさせていただくことが多いのですが、一方で、プラットフォームとしてのnoteには、様々なスタートアップ経営者やCFOが書かれたスタートアップファイナンスやIPOに関する知見が集まっています。IPOに関するもので代表的なのが、レジェンド企画となっている「プレイド IPOの軌跡」連載でしょう。私もIPO準備中に何度もこの連載を読んで、参考にさせていただいておりました。
近年の日本におけるスタートアップ市場の盛り上がりはこういった知見の蓄積・共有によるエコシステムの拡大が大きく寄与していると考えており、noteもその恩恵を受けています。
noteのIPOの経験も、今後上場を目指す他のスタートアップの参考に少しでもなる部分があるのではないか。また、昨年の環境で多くの企業がIPOやファイナンス戦略の転換を迫られたように、IPO戦略は外部環境にも大きく依存するため、スタートアップ冬の時代に上場した当事者としての記録を残しておく意義があるのではないか。最終的には、noteだけではなく、さまざまなスタートアップのIPOやファイナンスに関する知見がどんどんシェアされるような世界観を促進することで、スタートアップのエコシステムを更に盛り上げたい。
そのような気持ちから、情報の発信と蓄積のプラットフォームを提供するサービスを展開するnoteのCFOとして、「スタートアップ冬の時代のIPO」と題して、IPOの経験談、準備を振り返る連載をスタートしたいと思います。連載のタイトルは「スタートアップ冬の時代」となっていますが、冬の時代に関わらずIPO準備全般に普遍的に通じる部分も多くなると考えています(ファイナンス、オファリング関連はマーケットの状況が大きく関連します)。
プレイドさんと同じフォーマットを採用させていただき(プレイド・武藤CFOにもご快諾いただきました!武藤さん、ありがとうございます!)、私だけでなく、noteでIPO準備に関わったそれぞれの担当者も個々の担当分野、論点について自身の経験も交えながら振り返っていきます。第1回目は、このnoteで私が「IPOに向けた仲間集め」というテーマで、IPOに向けた人的な体制構築について書いていきたいと思います。
登場人物が多く少し長いので(これでも紹介しきれないくらい!)、各項目を独立して読めるよう、以下の目次で時系列とともにまとめました。お時間のない方は目次から興味のある職種に飛んでご笑覧いただければ幸いです。
IPOに向けた仲間集め
私がnoteにジョインしたのは2018年9月、IPOしたのが2022年12月なので、IPOするまで4年と3ヶ月の月日がかかっています(IPO申請期をN期とすると、N-4期にジョイン)。私が入った時のnoteは社員数が30名程度、コーポレート組織はない状態でしたので、私の最初のミッションはコーポレート組織を構築することでした。主幹事証券会社の選定も入社後まもなくスタートしていますが、本格的なIPO準備を行うにあたり、私一人ですべてを賄うのは理想的な状況ではないため、IPO準備を行うためのコーポレート組織の構築がまず最初のミッションとなりました。具体的には、人事、経理、労務、PR、法務、コーポレートIT、経営企画などの、上場企業には当然備わっている各種機能です。
2019年1月(N-3期):1人目人事
IPOに関わらず、スタートアップの成長には人材採用が欠かせません。良い人材を獲得するためには、採用に強い人事を採用することが重要となります。
当社は、今は別の会社で活躍するKさんに、2019年1月にジョインいただきました。それまでエンジニア採用するにもCTOが手弁当でやっていたりしたのですが、専任が入ったことにより、それまで30人くらいだったのが2019年に一気に30名以上、2020年には60名くらいの新たな仲間を迎えることができました。
「採用に力を入れたいけど、人事がいない」というのは「服を買いに行きたいけど、着ていく服がない」状態に似ています。まずは1人目の強い人事を採用することが、組織と事業の拡大に向けての第一歩。当社はIPOに向けて組織拡大する初期に良い方にジョインいただけたので、この点とてもラッキーでした。
2019年3月(N-3期):1人目労務
昨今のIPOでは、労務体制の整備がクリティカルな要素になります。IPOに向けた労務というと「勤怠管理をやればいいんでしょ?」と思われるかもしれませんが、形式的に勤怠管理をするだけでなく、実質的に社員の勤怠を会社が把握・管理できているか、勤怠以外の労務管理全般が法令遵守の観点からきちんと運営されているか(法令遵守というと当たり前のように聞こえますが、法律要件がかなり細かく専門的なため、悪気がなくても違反してしまうケースをよく聞きます)など、IPOに向けた重要論点が細かく集まる部分です。また、IPO文脈を除いても、社員の健康管理やはたらく環境の整備は、スタートアップが健やかに成長していくためには、とても重要な事項です。
noteも労務の経験者を中心に探していたところ、スタートアップで労務をやっていた浦田さんにジョインいただくことができました。浦田さんを採用したのは経験者だということが大きかったのですが、当社にとってラッキーだったのは浦田さん自身の労務としてのスキルがとても高かったこと、前職でスタートアップの上場直前までの拡大フェーズを経験しており、スタートアップマインドに溢れた方だったことです。
労務という職種は、意外と少しかじったことのある人はたくさんいるのですが(小さい会社では総務・人事・経理などの管理系を1人が巻き取って、なんでも屋として労務もやっているケースが結構ある)、労務専任でキャリアを積んできた人というのはあまり市場にいません(なので、未経験から育てるケースも多い)。また、労務は社員数によって適用される法律が加わったりするため、ずっと小さい会社でなんでもやっていたというよりは、スタートアップの成長フェーズを経験されている方がいると、法令遵守の観点からもとても心強いです。
当社のIPO準備の過程では、労務のスペシャリストとして浦田さんに参画いただけたことが、IPOに向けた組織基盤を固める上でとても大きかったと考えています。
また、2020年のコロナ禍以降はリモートワークなど、はたらく環境が激変した期間でもありました。このような環境下で、IPOに向けた労務環境の整備を行いつつ、当社らしい労務制度の構築を行うというのも組織としての重要ミッションでした。浦田さんには、IPO準備に加えてコロナ禍でクリエイティブにはたらくための新しい仕組みの構築という攻めの役割も果たしていただいています。
2019年4月(N-3期):1人目経理
会社である以上、経理という名前がつくかどうかはともかくとして、経理の機能は誰かしらが担っているはずです(本当の初期は、創業社長が記帳するケースも多いと思います)。noteも私が2018年にジョインした段階で派遣社員の方が1名で外部の記帳代行の助けも得ながら経理事務を担当していました。
私の入社後はその派遣社員の方とともに引き続き外部の会計事務所の助けも得ながら経理業務を行ってきましたが、体制としては弱いため、私の入社直後から経理の正社員の採用活動を行いました。
ただ、なかなか良い方が見つからず、経理は会社のコアなので心理的に厳しい状況が続きましたが、私が入社してから半年後の2019年4月に経理畑で長く経験を積んできたNさんにジョインいただくことができました。
Nさんがジョインしたことで、正社員のNさん + 派遣社員1名 (+私)というフォーメーションができ、2019年にクラウド会計への移行、記帳代行を依頼していた経理実務の内製化を果たすことができました。タイムリーに会社の経営状態も把握できるようになり、その後の経営管理や投資などの経営判断にまつわる組織力が向上しました。
2019年4月(N-3期):1人目PR
リソースが少ないスタートアップにとって、自社やプロダクトの認知を広げるPRはサービス成長や採用にとっても重要な位置付けとなります。noteはコンシューマー向けのサービスなので、それまでも日々ご利用いただいているクリエイターやユーザーの方々がコンテンツをSNS等でシェアすることで一定の認知度を獲得していました。
一方で、メディアとの関係性構築は戦略的にできておらず、noteの価値をインターネットに馴染みが薄い層にも届け、情報発信のインフラとしてファンを増やしたいという気持ちがありました。そこで、現在もPRとして活躍する森本さんに1人目PRとしてジョインいただきました。
森本さん参画以降、持ち前のバイタリティからそれまで事後的な対応になりがちだったPR活動が一気に進み、そこで種まきをした結果が翌2020年のコロナ禍突入の際のクリエイター・ユーザー層の大幅拡大にも繋がりました。もちろん、このnoteのテーマである"仲間集め"のための採用広報も強化され、組織グロースにも大きく寄与しました。余談ですが、森本さんは入社時にお子さんが2人いるいわゆるワーキングマザーだったのですが(今は3人)、あまりにも色々なslackチャンネルに出現しPR以外も含め一騎当千の活躍をしていたので、バリキャリの概念を超えて「森本さんは3人いる」説が当時の社内で流れていました笑。
IPOの文脈では、当社のIPOの特徴として上場日当日にロゴデザインの変更を伴うリブランディングを行っています。また、同日に日経新聞1ページまるごと使った新聞広告も出しました。これらのPR施策は一つひとつが大プロジェクトですが、IPOと並行したことで更に複雑性が増し、苦労も多かったので、IPOにまつわるPRについて本連載で森本さんに執筆いただこうと思います。
2019年5月(N-3期):1人目法務
法務の人材をどの段階でスタートアップが迎え入れるかは、難しい問題です。ミドルフェーズまでは法務に関わる問題はそこまで多く発生しませんし、契約書などは外部の法律事務所にレビューなどをお願いすれば、内部に専門人材を抱える必要はないかもしれません。
私は法学部出身で元官僚ということもあり法律系の国家公務員試験を通過しているので、法律分野に一定の土地勘があります。ですので私が入社してからしばらくの間、社内の法務関連の相談は私が受けたり、新規サービスの契約書作成なども外部の法律事務所の力を借りながら進めていました。
ただ、法務以外の他の業務がどんどん重くなってきたこともあり、2019年5月に現在はnoteで法務室長を務める弁護士の淺井さんにジョインいただきました。
淺井さんは大学時代からの友人で、その当時で10年近く弁護士としてのキャリアがある方でした。どうせ法務人材を迎え入れるなら専門性の高い、弁護士の方を迎え入れたいと思い誘ったのですが、実際に入っていただくと一目瞭然。私が多少法務の土地勘があると言っていたのが恥ずかしくなるほど、餅は餅屋で、会社のあらゆるリーガルイシューや、法務の枠を超えた様々な相談事などを、とても迅速に、クオリティ高く対応いただきました。
IPO準備の文脈では、淺井さんは上場準備の責任者として活躍され、今では法務以外の役割の方が比重として大きくなり、社員の信頼も厚くnoteにとってなくてはならない存在になっています。
余談ですが、淺井さんは2019年5月の参画当初は弁護士としての活動がメインであったことから、業務委託として週2日くらいの割合でnote社にコミットいただいていました。現在は正社員として週5日のフルタイムですが、入社時点から徐々に増やした結果です。
このやり方は、前述した「法務人材をいつの段階でスタートアップに迎え入れるべきか(そこまでの業務量があるか)」という問題への対応として、段階的にリソースを増やせるため、双方にメリットがあったと考えています。
ジョインする側の弁護士の方も、いきなりスタートアップに飛び込むというよりは、段階的に関わりながらお互いのカルチャーフィットも確認できるため(法務はその性質上ストッパーというイメージがあるため、抵抗感のあるスタートアップ経営者も多い。一方で、法務としても、コンプラ意識の低い経営者の下では働きたくない)、とてもオススメです。
淺井さんは、上場準備で八面六臂の目覚ましい活躍をされましたので、この連載でも登場いただきます。
2019年6月(N-3期):1人目コーポレートIT
コーポレートITは、主に社内ITシステムの観点から会社のシステム環境の整備や業務オペレーションの生産性向上などの役割を担います。私が入社した時点ではコーポレートITは社内に存在しなかったため、新しく入社する社員のパソコンの調達なども私がやっていました。当社はMacが主体なのですが派遣社員の方はMacに馴染みのない方も多いので、入社される毎に私からMacの使い方をレクチャーしていたのも懐かしい思い出です。
また、2018年の年末にオフィス移転をしたのですが、オフィス移転の際の社内ネットワーク環境の整備などはCEOやCTOが中心となって業者の方と調整して要件を決めていました(当社のCEOはテクノロジー好きなため、むしろノリノリでやっていましたが笑)。
さすがにこれではもたないので、2019年6月にコーポレートITの東さんにジョインいただきました。面接の段階からCEOの加藤と意気投合していて、私も同席していたのですが加藤とともにその場で採用をお伝えした記憶があります。
コーポレートITは社内の生産性向上に直結する重要な役割ですが、ともすれば煩雑なシステム利用ルールを設定したりして生産性向上どころか悪化させてしまうケースもあります。面接の際もそのような懸念点を率直に伝えて、コーポレートIT体制の構築・運用に関する考え方を伺ったのですが、東さんはまさに攻めと守りのバランスがとれた、スタートアップ向きのコーポレートITのスペシャリストでした。
東さんが入社して以降、激増する社員を迎え入れ、能力を最大限発揮してもらうためのITインフラの整備や様々な生産性向上施策、大規模サービスを運営する会社としてのセキュリティ環境の強化など、本当に色々なことに取り組んでもらっています(現在進行形)。noteの組織グロースは東さん抜きでは難しかったでしょう。
2020年4月(N-2期):1人目経営企画
note以前に私が上場IT企業で経営企画部長をやっていた経験があり、予算や事業計画の策定、予実管理は本職とも言える状況だったため、当初は経営企画の必要性は感じていませんでした。コロナ前は海外出張も行けたため、海外の機関投資家向けカンファレンスに参加して投資家とコミュケーションしつつ、予算策定が佳境を迎える時期だったので海外のホテルで次年度の予算を作成したり、都度資金調達を実施したりと、CFOの本来業務として経営企画業務を実行していました。
しかし、IPO準備が本格化するにつれて、だんだん私一人では回らなくなってきたため、経営企画を採用することにしました。
他の職種と異なるのが、他職種は私が専門家ではないため、個々の業務の専門性でいうと内定に至らなかった方も含め私の方が知見がない状態だと思うのですが、経営企画は本職のため、要求基準が上がることになります。極論、他の職種はその方の専門職としてのスキルが低かったとしても私がやるよりは上手くできることが期待できますが、経営企画は半端なスキルの方だと私がやった方が早くなるため、求める人材のハードルが高まります。
このハードルを見事にクリアしてジョインいただいたのが、現在も経営企画で活躍する藤田さんです。藤田さんも上場準備チームのコアメンバーとして、上場準備はもちろん、都度の資金調達や投資家コミュニケーションなど、私と二人三脚で取り組んでいただきました。
特に上場関連では予算の策定・予実管理は実質的な審査における肝といえる項目で、多くの会社がここでつまづいて上場延期となることも珍しくありません。スタートアップとして上場して評価されるためには、高い成長率で成長していく事業計画を掲げてその数値を追っていくことが多いと思いますが、新規性の高いサービスを展開している関係上、事業の推移が予測しにくく、予実がブレやすくなります。予実のブレは高い方向にも振れることがあり、当社の場合はコロナに伴う世の中のオンライン化促進のトレンドで事業がかなり加速したため、大幅に予実がブレて上方修正を何度かしたこともあります。上振れであればポジティブサプライズですが、下振れが続くと事業の達成可能性に疑義がつき、上場審査にネガティブな影響があるため、野心的な事業計画と達成可能性とのバランスが要求されます。
藤田さんはこの上場準備・審査フェーズにおける事業計画の策定・予実管理について私と一緒にガッツリ取り組んでいただきましたので、この連載でもその経験を披露してもらおうと思います。
2020年7月(N-2期):財務経理マネージャー
一人目の経理が入社して以降、経理チームは正社員1名 + 派遣社員・アルバイト、という体制が続きました。これ自体は機能していたのですが、上場に向けて監査対応や内部統制・IT統制などの整備・運用が本格化するにあたり、財務経理を統括できる責任者の方を私以外に採用したいと考えるようになりました。
IPOはもちろん、IPOを除いても今後会社として大きく成長するためのキーとなるポジションと考えていたので、私にないスペシャリティのある方、できれば公認会計士などの専門性を持った方が望ましいと考えていました。
紹介会社や知人経由などで多くの候補者の方とお会いしたのですが、会社のカルチャーも含めフィットする方がなかなか見つからず(当社とご縁がなかっただけでそれぞれの分野で活躍する優秀な方はいらっしゃいました)、このまま上場準備が本格化していく中で、監査対応や内部統制・IT統制などの整備を並行できるか、不安がありました。巷では会計士で監査法人などから離職されている方が増えているという話を聞いていたのですぐに見つかると甘く考えていたのですが、なかなか見つからず、監査法人を辞めた会計士の方は一体どこに転職しているのか不思議に思うこともありました。監査法人から独立して個人で会計事務所や上場支援をやられたり、FASや事業会社に転職する方は多いかもしれませんが、監査法人からスタートアップにダイレクトに移る方は意外とまだそこまで多くないのかもしれません。
その中で、ようやくジョインいただいたのが平山さんです。あまりに財務経理の責任者が見つからず妥協してとにかく採用しようと思ったこともあったのですが、結果的に平山さんにジョインいただけて大成功でした。会計士として10年くらいのキャリアがある一方で、唯一の懸念としてこれまでの職種と違って "1人目"ではない ため、既存メンバーに馴染めるか実は私が不安に思っていたのですが、持ち前の人柄を発揮しすんなりとチームのリーダーとして溶け込み、私の心配事は杞憂に終わりました。
余談ですが、平山さんの仕事ぶりは監査法人での豊富な経験を活かした堅実・正確という言葉がまさに当てはまるものですが、ロン毛の髪型も相まって今では会社で一番スーツが似合わない男かもしれません笑。
そんな平山さんももちろん上場準備チームのコアメンバーですので、本連載でも経験談をシェアいただこうと考えています。
2021年11月(N-1期):1人目IR
最後に、上場の1年前にジョインしたのが、IRの三浦さんです。IRという職種は、未上場で入れる会社は少数派だと思います。ではなぜnoteは上場前にIRという職種を迎え入れたか。
まず一つは、上場前から継続的に、海外含む機関投資家とはやりとりがあり、IMやカンファレンス等で対話する機会があったためです。特に2021年まではクロスオーバー投資家と呼ばれる、上場株と未上場株両方に投資をする機関投資家の動きも活発だったので、資金調達の一環としても投資家コミュニケーションを重視していました。
また、仮に上場した場合は、IPO時のロードショーやその後の上場マーケットで、投資家との対話が継続的に発生します。その段階でIR担当を入れるIPO企業が多いと思いますが、未上場時も前述のように機関投資家とのコミュニケーションは発生していましたし、少なくともロードショー時から本格的な市場との対話はスタートしますので、未上場の時からIR担当がいた方がスムーズな、一貫したエクイティストーリーのトランジションが図れるかと思います。
三浦さんが上場1年前からいたことで、上場前のクロスオーバー投資家等との議論を踏まえながら上場後の投資家向けにどのようなエクイティストーリーを訴求するか、そのためにどのようなKPIを開示していくかという議論を先行して進めることができました。また、そういった議論をロードショーマテリアルや成長可能性資料、目論見書などに形として残すことができ、上場後の現在もそのエクイティストーリーがベースとなっています。これらから、上場前から専任レベルでのIR機能を持つことができたのは、プラスの効果があったように思います。
三浦さんも、投資家コミュニケーションを軸に、本IPO連載に参加予定です。
IPO準備チームの体制
noteの成長にももっとたくさんのキーパーソンが関わっていますが、今回はIPOに向けたコーポレート組織、そして "1人目" という点に注目して、いつどのような背景で仲間に加わったか解説しました。
この中で、狭義のIPO準備チームとして毎週定例をしたり証券会社とのミーティングに出ていたメンバーは5名。法務の淺井さん、財務経理の平山さん、経営企画の藤田さん、IRの三浦さん、そしてCFOの私(鹿島)です。
上場準備に焦点を当てた、それぞれの主な役割分担は以下になります。一つのドキュメントを完成させるのにも定性・定量さまざまなインプットが必要になりますので、以下はあくまで目安で、実際には分担しながら進めています。また、上場準備だけに100%の時間を注ぐというのは直前も含めてなく、みんな本来業務と並行して上場準備にあたっていました。
淺井さん(法務):上場準備責任者、プロジェクト管理、東証とのやりとり全般、個別の論点対応、ドキュメンテーション対応統括(Iの部、IIの部など)
平山さん(財務経理):監査対応、内部統制整備、短信・四半期報告書など、財務数値関連全般
藤田さん(経営企画):事業計画策定、予実管理、証券会社とのやりとり(鹿島とともに)
三浦さん(IR):ロードショーマテリアルや成長可能性資料、目論見書口絵、投資家コミュニケーションなど
鹿島(CFO):プロジェクト全般レビュー、証券会社とのやりとり(オファリングストラクチャー、プライシングなど)、既存株主とのコミュニケーション(売り出し等)
上場準備の進捗確認として、証券会社との定例MTGのほかにも社内の上場準備チームで毎週月曜日の朝10時から定例MTGを設定して、"Project Creative" と題してZoomで個別のタスク毎に進捗を確認していました。
CFO含めて5人の上場準備チームが多いのか少ないのかわかりませんが、振り返ってみると、バランスは良かったように思います。これより少なくても上場準備はできたかもしれませんが、リソース的にどこかにしわ寄せが来て重大な問題が発生したかもしれません。また、CFOの私にとってもIPOはもちろん最重要プロジェクトの一つですが、あくまでIPOは手段のため、本来的には準備そのものではなく会社の成長戦略の実行に時間を割く方が健全です。
この5人の準備チームは、多すぎもせず、少なすぎもせず、各人がプロジェクト全体を把握できコミュニケーションも意思疎通も円滑に進む良いフォーメーションだったかなと考えています。
"スタートアップ冬の時代のIPO"連載、乞うご期待!
noteのIPO連載は、上記の5人に加え、IPO前後のPR活動を経験された一人目PRの森本さんも含めた6人で進めたいと思います。
テーマは上記の担当分野に沿った話を書く想定ですが、こういう分野について聞きたい!というリクエスト等あれば、気軽に教えてください。
2023年もスタートアップ冬の時代が続いていますが、冬の時代に力を蓄え、来るべき春に向けてIPOを目指す会社が増えるよう、スタートアップエコシステムに貢献していきたいと思います。
※ 各noteの最後に書き手プロフィールを入れるフォーマットもプレイドさんから引用させていただきました。ありがとうございます!
(参考)「スタートアップ冬の時代のIPO」連載一覧