2022年仙台旅行 牛たん定食
年を重ねるにつれ、何かを食べて感動することが少なくなっていく。
だから感動できた時、喜びを感じる。
まだ、感動できる!と。
私は出会ってしまった。
それは仙台に旅行にしたときのこと。
店構えは古びた風情で、店の名前は、
『旨味太助』
ただならぬ気配を感じる。
他店の追従を許さぬ老舗の味
許さぬ……か
店内は広くないこともあり満席。夫と2人でカウンター席に座った。
カウンター越しの調理場には、高齢の男性と女性、中年の男性が所狭しと立っていた。
牛たんを焼いているのは、もっぱら店主と思しき高齢の男性だ。
炭火の前はかなり高温で、店主は汗をダラダラと流しながら焼いている。
高齢の体には堪えるのではないだろうか。
「ご注文は?」
若い定員さんが注文取りに来た。
どう見ても、この人の方が体力がありそうだが、焼く役割はまだ与えてもらえないのだろう。
焼くだけなのだから、誰が焼いても同じと思うのだが、何か理由があるのかもしれない。
牛たんが運ばれてくるのを待っている間、テーブルに置かれていた1枚の紙が目に止まった。
感情がむき出しの内容だった。
通信販売はやっておらず、通販で売られている牛たんは、うちのものではないとか、他の太助とは味が違うだとか・・・
店の前にあった、「他店の追従を許さぬ」の言葉が頭の中に浮かんでくる。
ネットで検索してみた。
いわゆる”お家騒動”らしかった。創業者が亡くなり、跡継ぎ問題が生じて店が分裂。他にも『太助』はあるようだった。
ダラダラと汗を流しながら牛たんを焼いている店主を見ながら、
いろいろあったんだなぁと思う。
横にいたのは奥さんだろうか。
中年の男性は息子さんだろうか、若い従業員は孫だろうか。
この店を守るために家族で、休まず働いてきたんだろうなぁと思う。
牛たんが運ばれてきて、ひと口食べた。
「おいしい!」
夫にか、店主に向けてか自分でも分からないが、伝えたかった。
牛たんは食べた事ある。
焼肉でも食べたことはあるし、タンシチューだって食べた。
でも、どれとも違うのだった。
店主が戦ってきた歴史、誇り、意地、古びた店構え、看板の言葉。
そういうもの全てが一緒になって、味となって迫ってくる。
店主の長い人生のほんの一部をおすそ分けしていただいた。
読んでいただきありがとうございます!一緒に様々なことを考えていきましょう!