【エッセイ】旅で性格が変わるの?
前に、友人から博多のもつ鍋は格別に美味しいと聞いていたので、博多行ったら、もつ鍋を食べると決めていた。
先日の九州旅行で、ついに"もつ鍋"を食べることになった。お店に入ると、ランチタイムを過ぎていたせいか、店内は数組のお客だけ。お店はシックな作りで、案内されたソファー席は、広くゆったりとくつろげる。
店員さんが味噌味がおおすめだと教えてくれたので、それに従い注文した。
夫と2人で、
「きれいなお店だねー」
と言いながら、窓から博多の街を眺めた。
少し離れた席の会話が漏れ聞こえてくる。BGMがわりにその会話を聞いていた。
「Amazonに初めから勝負しようとするなんて無茶なんだよ。誰も大谷翔平に挑む奴なんていないのに、それと同じようなことをするんだから」
どこかで聞いたことがある話だ。誰かの受け売りだろう。聞き役の人は、どう思ってるのかほとんど声が聞こえなかった。話してる方は自分に酔っているのか、同じセリフを2回繰り返していた。
そんな話をぼんやり聞きながら、時計を見ると20分経っていた。
いや30分かもしれない。
もつ鍋を作るところを想像した。
キャベツを切って、ニラを切って、もつを入れて……
終わりじゃないの?
それとも、もつが足りなくて、他の店舗に取りに行ってるのだろうか。
夫に
「遅くない? オーダー通ってるのかな?」
と尋ねた。
「まぁえーやん」
良いけど……立ち上がって厨房の方を確認した。
私の姿を見て、
「立ってる」と笑う。
それから10分後、お店の人がとんできた。
「申し訳ありません!鍋のオーダーが入っておりませんでした。すぐにできた状態でお持ちします!」
5分後、あっさり鍋が出てきた。
お店の人からしたら、40分も待ってないで言ってくれよ、と思ったに違いない。
「よく、オーダー通ってないって気づいたね」
何故か私を褒めてくる夫。こんな柔和な性格だっただろうか。
店を出た後
「もつは、あんま入ってなかったね」
と夫が言った。
え、いっぱい食べたよ……?
美味しくて無我夢中で。
あ、もしや
「ごめん1人で食べたかも!」
夫の顔色を恐る恐るうかがう。
「そんなことないやろー」
私は一体誰と旅をしているのだろう。