時がきたら働く日記 12
無職52日目
最近はもっぱら映画を見たり本を読んだりしている。朝起きたらご飯を食べて少し作業をし、映画鑑賞か読書。家事や引越し作業の合間に昼飯を食い、夕方になったら家事をして、仕事から帰ってきた家族と過ごす。風呂に入ってまた作業をして、深夜に眠るという生活をしている。悠々自適。実家との関係性が良好で、よかったと思う。
無職54日目
友人に、「かしこちゃんは、俺の中ではシティーガールなんだよな」と言われ、驚く。
無職58日目
給付金が10万円振り込まれたらしい。父が部屋までやってきて、「これ」と言って封筒を渡してくるので、受け取りながら「生活費にしないの?」と訊くと、「君たちの分は、君たちが使いなさい」と手をヒラッと一度振って出ていった。
さて、何に使おうと考え始めたが、とりあえず払うものを払っておかないと、と思い、いくつかの支払いに投入。それから、少ない金額であるが某クラウドファンディングの企画に参加した。小さな映画館や本屋が提供してくれるコンテンツたちに居場所を与えてもらっていた身であるから、少しでも、とは思う。ミニシアター好きの友人も、「本当に、なくなったら困ります」とぼやいていた。
無職61日目
髪を切りに行く。これも給付金のおかげである。しばらく髪を切っていなかったせいで、毛量が増えて頭のサイズがひとまわり大きくなっていた。元々髪の毛のクセが強く、湿気にかなり弱いので2ヶ月に一度は切りたいところ。しかし、そんなに頻繁に散髪できるような金はない。
バスを乗り継いで、ラブホテルが乱立している郊外へ。早く着いたのでコンビニで朝ごはんを買って、美容院へ向かう。
通された待合室の椅子に座ろうとすると、夥しい量の切れ毛が落ちていて驚いてしまった。髪の毛を切ったあと、客はここで待機しているのかもしれない。それにしても、切れ毛の量がちょっと多すぎる。
名前が呼ばれたので立ち上がる。柔らかい笑顔の、しかしおそらくアシスタントなのであろう、緊張気味の女性に椅子に通されて、髪の毛を留めていたピンやゴムを外してもらう。
「どうしますか?」
「インナーカラーを入れてほしいんですけど」と言うと、美容師はすぐにサンプルを持ってきた。これとこれで、とサンプルを示して言うと、すぐに散髪へ。
「髪の毛、多いですねえ」
おっとりと言われる。
「そうですねえ」
こちらもおっとりと言い返す。
染められた髪の毛は、キラキラと光った。外の天気が悪くてもわかる。若干青みがかった黒に染まったショートボブに、耳の横ではねているシルバーのインナーカラーが可愛いな、と思った。