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まき網への「疑惑の配分」、部長が事後決裁~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要⑦


 私の手元に2017年1月5日付けで作成され、水産庁内で決裁、供覧に付された資源管理部長名の通知文書があります。件名は「太平洋クロマグロに係る資源管理の実施について」です。

 定置網など沿岸漁業を受け持つ都道府県の水産主務部長と、日本周辺の沖合で操業する全国まき網漁業協会、全国近海かつお・まぐろ漁協協会、全国かじき流し網漁業者協会の漁業3団体に宛てて発出されました。

 30キログラム未満の小型魚(未成魚)の漁獲を2002-2004年(基準期間)の平均漁獲実績から半減させるという中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)での合意に基づき、水産庁が2015漁獲年度の小型魚の漁獲量配分を地方自治体や漁業者に示し、半減措置への協力を求めた文書です。

情報公開請求で確認した2017年1月の通知文


沿岸より大臣管理の沖合、中でも大中型まき網を優遇

そこに記されたクロマグロ小型魚の漁獲上限の配分は次のようなものでした。

1、 我が国の30キロ未満の小型魚の漁獲量については、2002年から2004年までの我が国の平均漁獲実績8015トンから半減し、4007トンを漁獲上限とします。
2、 4007トンの漁業種類別の漁獲上限を次のとおりとします。
(1) 大中型まき網漁業 2000トン
(2) その他の沿岸漁業等(曳き縄、定置、近海竿釣り漁業等)2007トン
 ① 沿岸漁業 1901トン
 ② 近海竿釣り漁業等(近海竿釣り漁業、東シナ海等かじき等流し網漁業及びかじき等流し網漁業)106トン


当時の配分は資源管理部長レベルの裁量だったようです。

 このうち沿岸漁業は全国を6つのブロックに分けて数量上限を設定し、水産庁もその枠の中で19トンの留保枠を持つという内容でした。現在、ブロック制は廃止され、知事が管理する都道府県ごとの上限となっていますが、その枠が県から県内の漁協ごとに配分され、次に漁協から個々の漁師のところへ配分されるという仕組みが続いています。いわば、今日にいたるまで漁業者同士の対立、争い、トラブルを生み続けている水産庁の失政の起源を示す文書といってよいでしょう。

一番の問題は「留保枠」が実質的にはゼロといってよいほど小さいことです。クロマグロの漁獲量は年により、地域によりかなり振れが大きいことが知られていますので、漁獲量の配分を細かく分けるほど、過不足を原因とする漁業者の不満や不正を生みやすくなってしまいます。

 実際、長崎県対馬をはじめ全国各地で漁獲量のごまかしやクロマグロ漁の承認を持たない漁船による漁獲が発覚したり、突発的な大漁でクロマグロを放流できなかった北海道函館市の定置網漁業による漁獲枠超過が発生したりして、水産庁が罰則付きの法定TAC(漁獲可能量)導入を迫られる結果になりました。

 二番目に問題なのは、大中型まき網だけが先に2000トンというキリのよい数量配分を受け、残り2007トンを国の留保分を含めて残りで分け合うという、露骨な差別です。「まき網」と「その他」という仕分けの不適切さは、数量配分以前の問題ともいえます。もちろん、大中型まき網に配分された量にも大きな問題がありました。

 三番目ですが、ある意味で最も重要な問題はこの部長名の通知文書の決裁、供覧が事後的に行われたものであることです。対外的には2014年の夏から大中型まき網漁業に2000トン、その他に2007トンを配分するという水産庁の考え方が公表されていました。

 つまり、行政文書として残されている2015年1月の資源管理部長通知は事後的に決裁されたものにすぎなかったのです。

 大中型まき網に2000トンを配分するという案は、だれが、いつ決裁したものなのでしょうか?次回に続きます。

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