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アルソミトラのタネ

 『たのしい授業』24年6月号についている付録は、「アルソミトラの種グライダー」です。

 ところで、みなさんはこの「アルソミトラ」ってなんだかご存知ですか? アルソミトラの「種(タネ)」っていうぐらいだから、なにか植物の種だろうとは思うのですが、一体こんなに大きなよく飛ぶ種を必要とする木って、どこのどんな木なのでしょう。気になりませんか?

 わたしは気になったので、ちょっと調べてみました。

 で、こんな本を見つけました。
 中西弘樹『タネは旅する 種子散布の巧みな植物』(八坂書房、2022年6月)
 この本によると、

「アルソミトラは、学名をアルソミトラ・マクロカルバといい、マレーシア、ニューギニア、インドネシア、タイ、フィリピンに分布する、ウリ科の木性のつる植物です。……果実は高い位置に実り、直径約三〇センチのベル型をしており、中には三〇〇〜五〇〇個の種子が入っている。果実は熟すと、下部が割れ、少しずつ種子が落下する。種子の部分は楕円形で、短径二〇〜二二ミリ、長径二八〜三〇ミリ、厚さは約一ミリ、色は淡褐色である。それを中心に左右に湾曲した翼をもっている。翼は長さ十三〜十五センチ、幅五〜七センチで、きわめて薄い膜のようであり、落下する時に風もないのに、グライダーのように滑空する」

 東南アジアの熱帯に育つ、ウリ科の木製のつる植物とのこと。熱帯の高木ということなら、高さ10メートル以上のところから落下するのでしょうから、このたねならかなり遠くまで飛んでいくのではないでしょうか。一体どれくらい飛ぶんでしょうかね。

 この著者もそのことが気になったらしく、実験をしていました。

「私もこの種子の飛行について調べたことがある。窓を閉め切った体育館で、高さ五メートルの位置から落下させて、落下時間や距離などを測定してみた。平均落下速度は毎秒三十五・五センチで、この値はタンポポやその他の風によって散布されるどんな散布体よりもゆっくりと落下する。飛行距離や飛行軌道はそれぞれの種子によって異なり、大きくらせんを描いて落下するものもあった。最長水平飛行距離は二一メートルであった。高さ十メートルの位置から落下したとすると、無風状態でも約四〇メートルも飛行することになる。風があればもっと遠くに飛んでいくことができるであろう」

とあります。無風状態で40メートルというのですから、風があったら相当遠くまで飛んでいくことでしょう。植物の知恵というか、工夫って、ほんとにすごいですね。

 本書によると、グライダーは、この種を手本として作られたということです。人間の模倣能力も大したもんだと思います。

                           (川崎浩)

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