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【海のナンジャラホイ-27】レジアスエースで調査に出動します!

レジアスエースで調査に出動します!


私は卒業研究を筑波大学の下田臨海実験センターで、大学院での研究は九州大学の天草臨海実験所で行いました。また、大学に就職してからは下田臨海実験センターに2011年まで務めていたので、1983年あたりから、30年近く海に臨んだ場所で暮らしていたことになります。研究調査に出かけるときは、目前の海に歩いて行くか、ボートを出して潜水すればよかったわけです。
ところが、2011年の4月に東北大学農学部に異動してから、すっかり状況が変わってしまいました。私は、初めて臨海施設以外のところに就職したのです。仙台も太平洋の沿岸都市ではありますが、さほど海に近いわけではありません。しかも、いちばん近くにある海は砂浜で、私たちが通常の研究を行う岩礁海岸からは遠いのです。車で出かけると、松島まで1時間半、志津川まで2時間、気仙沼まで3時間といった具合です。
そうなのです。私たちの野外調査には、車が必須なのです。私たちの研究室では、震災後のモニタリング調査のためにトヨタのレジアスエース・スーパーロングワイドを入手しました(図1)。調査器材を運ぶために、できる限り大きな車両が良いだろうということで、レジアスエースの中で最も大きな車体を選んだのです。6人まで乗れる荷室が大きな車で、車体は普通の救急車と同じ大きさです。荷室では身長160センチの人なら天井にぶつからないで立つことができます。

図1:冬季潜水時のレジアスエースは寒さをしのぐ居室となる


私たちの潜水調査は、通常は午前中におさまるように実施します。早く開始すればそれだけ調査に使える時間も長くなるのです。このため、午前7時台に現地に到着して午前8時には調査開始できるようにします。1週間くらい前から天気予報をチェックしながら、調査実施日の前日に調査実施の可否を判断して、実施可の場合には、教員と参加学生たちとで打ち合わせを行って、レジアスエースの荷室に潜水調査に必要な器材を積み込みます。
また、調査地には水道がないことがほとんどなので、18~20Lのポリタンク3つを積み込みます。そのうち2つには常温の水を、1つには熱湯を入れて運びます。常温の水は器材の水洗に使います。熱湯を入れたポリタンクは発泡スチロールで囲んでおけば、調査が終わって帰る頃にはシャワーに良い加減の熱さになるのです。

図2:レジアスエースは夜明けに青葉山を発つ


キャンパスのある青葉山からレジアスエースが出発するのは午前5時で(図2)、山から降りて学生を2~3箇所の集合地点で拾いながら、調査地を目指すのです。到着したら、器材を下ろして調査の準備に取り掛かります。午前中の調査が終わったら、運んできた真水を使って海水中で使用した器材の水洗を行います。そして、汲み上げポンプの付いたシャワーで運んできたお湯を浴びます。器材を積み込んだら帰途に就き(図3)、途中、皆で昼食を取ってから、大体午後3時から午後4時くらいの間に青葉山キャンパスに帰るのです。

図3:サイドミラーに海を映して帰途に就く


レジアスエースの大きな荷室は、更衣室としても重宝です。とくに、女子学生のいるとき、雪や雨の降る時には、とても助かります。また、キャンプ用の折り畳みテーブルを持ち込めば、実験室にもなります。車内にある100Vコンセントのおかげで電子天秤やエアーポンプを動かすこともできるし、照明を使って顕微鏡観察を行うこともできるのです(図4)。海で採集してきた動物の選別や計数・計測・計量などを現場で行うことができるのはとても助かります。

図4:レジアスエースの荷室は実験室にもなる


救急車サイズの大きな車体を操るのは慣れないうちは大変でした。でも、慣れてくると、高い位置にある運転席やどっしりとした安定感が楽しくなります。同乗する学生の人数や搭載器材の量によって車体の沈み具合が変化するのも面白いものです。私たちの調査のために走り始めて10年が過ぎ、走行距離も15万キロを超えました。でも、レジアスエースは、まだまだ快調。私たちを乗せて調査地に駆けて行きます。


○o。○o。 このブログを書いている人
青木優和(あおきまさかず)
東北大学農学部海洋生物科学コース所属。海に潜って調査を行う研究者。

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