『ブロンド』映画感想。
マリリン・モンローの人生を描いたフィクション。
マリリンを演じるアナ・デ・アルマスの囁くような甘い声、少女のような表情、時折見せる寂しそうな目線が男心を翻弄していく。
儚げな雰囲気のマリリンが悉く傷つけられていく様子が辛過ぎて見ていられない。
特にマリリンが懐妊から流産、中絶を何度も経験するシーンがひどい。
妊娠する度、体内にいる胎児の愛らしい映像を見せつけられる。
身体の中で赤ちゃんの命が絶たれる度、マリリンもどんどん壊れていく。
薬漬けで前後不覚の状態の中、飛行機に乗って大統領ケネディに奉仕するためだけに連行されていき、電話会談中のケネディに口で奉仕することを強要されるシーンもトラウマもの。
マリリン役のアナ・デ・アルマスが本当に可愛らしいので、見ているのが辛かったけど、こうゆうことが実際に起こりうるのだから見ておかなければいけないと必死になって目を開いた。
親友の死をきっかけに、文通を続けてきた父は本当は偽物で、手紙は亡き親友の悪戯だったことを知るマリリン。悲しみはあまりにも深く、睡眠薬での自死に至る。
結婚するパートナーをパパと呼び続けるほど、父の愛に飢えていた彼女に対し、これ以上残酷な振る舞いはない。
この映画でのマリリンの人生を思い返したとき、頭の中である曲が流れ出した。
ホフディランの『スマイル』だ。
いつでもスマイルしててね
深刻ぶった女はキレイじゃないから
すぐスマイルすべきだ 子供じゃないならね
上手にスマイル出来るね
こんな時は努力が必要さ
可愛くスマイルしててね
町中にキミを見せびらかすから
この曲は今から26年前、マリリンが亡くなってから34年後の曲だ。
この映画のマリリンそのものを表しているかのような女性蔑視溢れる歌詞で歌われている。
30年ぽっちでは人は変われない。
50年近く経った今は、こうゆう映画が陽の目を見ることになった分、少しはましになったのかな。
この映画を観て、ちょっともったいないなーと思った点は、マリリンの実は聡明な一面にほとんど触れられていなかったこと。
海辺のリゾートでのシーン以外、彼女の読書家でクレバーな一面は語られていない。
危うく儚い所ばかり強調してくるので、前半途中までマリリンがぴえん系女子にしか見えないのがものすごくもったいなかった。
ちょっと納得がいかないところもあるけれど、マリリンの生き写しのアナ・デ・アルマスは是非観るべき。
彼女の美しさだけでご飯3杯はいける、3時間飽きずに観れるはず。