1万円のレコードプレーヤーからSL-1200MK5へ買い替えた -2.変わった事

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オーテクAT-LP60Xは音質には満足していたが、その他の部分で不満があったと書いた。以下に書き出してみる。(先に書いておくが、だからと言ってAT-LP60Xがクズみたいな商品だとかそういう事を言いたいのではないというのを念頭に置いて欲しい。細かいことを気にしないのであれば十分なものだ)

・セッティング、わからなさすぎ

AT-LP60Xは盤を置いてボタンを押せば勝手にスタートしてくれるので何も考えず使えたが、SL-1200はそんなお手軽なプレーヤーではないので針圧がどうだ、アンチスケートがどうだとお膳立てをしてならねばならない。中でも訳が分からないのがオーバーハングで、本来ならアームをターンテーブルの中央へもっていって軸からはみ出た長さを測るらしいが、SL-1200はそこまでアームを動かせないので市販のオーバーハングゲージが使えないという弱点が存在している。これを補うために専用のオーバーハングゲージがあるが、これがものすごい原始的な構造のため、きちんとセットできているかイマイチわかりにくい。

↑このベロの先端に針先を目視で合わせろというのである。

結局メジャーを使って規定値に合わせた。SL-1200用のオーバーハングゲージは100円で買えるが、それよりも15cmくらいの定規を買った方が良い気がする。


・回転数が正確に・調整も簡単に

AT-LP60Xは音質的な不満はそんなに無かったものの、ベルトドライブを採用している(低価格帯のレコードプレーヤーの殆どはベルトドライブを採用している)ため、どうしても回転数がアバウトになってしまう。そうすると音楽のピッチが狂うので、これがどうしても許せなかった。聴いていてふとちょっと高いな、あるいは低いな、と気づくことも結構あったが、しかしそれに気づいても調整のしようがない・・・いや、厳密にはあった。しかしそれは本体をひっくり返した裏側に開いている穴に精密ドライバーを突っ込み、中の可変抵抗を回して微調整するという方法で、手軽に行えるものではない。ていうかこれ多分、出荷時や修理時に調整するための方法だと思う。説明書に書いてないし。

仮に頑張って合わせたとしても気候の変化などでゴムベルトが伸び縮みしてズレていくし、そもそも回転が安定していないのでピッチが揺れてしまう。スペック上の数値で比較してみると、AT-LP60Xのワウフラッターは0.25%に対して、SL-1200mk5は0.025%と1/10の数値。同じ盤を録音してみると、ものによっては片面の再生時間が5〜8秒くらいズレるので、コンマいくつの違いとは言え馬鹿にならない。

回転数の調整が効かない問題による不満はもう一つある。以前の記事で「そもそものピッチが狂っているレコードが存在するが、プレーヤーに調整機能がないのでどうしようもない」と書いたものがある。

具体的にはQueen「オペラ座の夜」の日本盤で、CDと比較すると再生速度が微妙に遅い。その後2015年の再発盤を購入して一応の解決をみたものの、このようにピッチが狂ってる盤が存在するとなると、ちょっとリスキーで洋楽の日本盤って買いづらいな、と思っていた。これからはそんな盤に当たってもピッチフェーダーがあるのでひょいと動かしてあげるだけで良い。

・音は変わる

プレーヤーとカートリッジが丸ごと変わっているのでまあ当たり前ではあるが、音は変わった。気持ち高音が丸まって低域に寄ったようだ。と言うよりはAT-LP60Xだと盤によっては耳に痛いな、と思う事があり(高音の拾い方にクセがあるのだろうか?)こちらの方が自然な気もする。

・謎の低周波ノイズが無くなった

AT-LP60Xを購入してわりとすぐ、かなり低いところでゴロゴロ、ゴソゴソという感じのノイズが乗っているのに気が付いた。出力を録音してアナライザーに突っ込んでみると30~40Hzくらいでかなり大きな低周波が入っており、ヘッドホンやイヤホンで聞くと、曲の静かな部分や曲間ではかなり気になる。

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このノイズ普通に聞いてても結構聞こえて気になるので、いろいろ策を講じた(ジャンクでフォノアンプ付きのDJミキサーを購入していたのはそのため)もののさっぱり消えないので「レコードとはこういうものか」とばかり思いこみ、デジタル化するときはiZotope RXを使って低周波ノイズを1曲1曲可能な限りカットするという工程を踏んでいたが、SL-1200に買い換えたらこのノイズはほとんど気にならないレベルまで消えた。ここを改善できたのはかなり嬉しい。

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曲間でゴロゴロ言ってるのが無くなるくらいでしょ~と侮るなかれ、試しに坂本龍一「B-2 UNIT」をかけてみたら低音の感じが全然違って驚いた。プレーヤーそのものが違うので一概には言えないものの、ノイズが低域をマスキングしてしまっていたのかもしれない。

AT-LP60X以外のプレーヤー(IONのものなど)ではこのノイズが入るかどうかは分からないが、同じメーカーで殆ど構造が同じであろうAT-PL300とかには同じように入ってくるんではないかと思う。

・スタビライザー等の周辺機器が使えるようになった

スタビライザーとはなんぞや、簡単に言えばレコードを上から抑える重しだ。いちおうそれによって振動が抑えられて音質改善なんとかかんとかとかあるのだが、音質改善よりもレコードの反り対策として関心がある。
LPや12インチなら特に気にはしていないが、7インチを買うとその薄さのせいなのか結構べろべろになってる盤がある。精神衛生上良くないのでどうにかしたかったが、やっぱりベルトドライブなのでトルク(盤を乗っけるお皿を回す力)が弱く、余分な力をかけるとちゃんと回転してくれなくなる恐れがあった(オーテクの公式サイトにも「ベルトの機種にはスタビライザーは使うな」と書いてある)。これもダイレクトドライブならトルクが十二分にあるので数百グラムの加重ぐらいなら耐えられる。

もうひとつ、トーンアームの高さが調整できるようになったので、ターンテーブルシートの交換も視野に入れられるようになる。とはいえ別途購入した純正のゴムシートを敷いている(本体を購入した時にテクニクスロゴの入ったスクラッチ用のスリップマットが付いてきたが、DJしないのならスリップマットは使わない方が良いとも聞くので交換した)ので、カスタムの余地があるという程度だが。本当はオヤイデの緩いすり鉢状でレコードの反りが軽減できるというシートが気になってはいるものの、5000円くらいするのでちょっと手は出しづらいかな・・・だってスタビライザーと合わせると1万円くらいするんだよ・・・。


・オートスタート・ストップ機能が無くなり完全マニュアルに

AT-LP60Xをはじめとする低価格プレーヤーにはだいたいレコードの最内周まで行くとアームが上がってくれる機能があるのだが、これをOFFできないのがちょっとした不満だった。「便利な機能なんだし切る必要あるの?」という声もあるかもしれないが一旦聞いて欲しい。

レコードの溝は外側から始まってだんだん内へ入っていき、最内周の送り溝で終わるわけだが、この送り溝に音が刻まれていて針を上げるまで音が鳴り続けるレコードというのがたまに存在する。有名どころだとThe Beatlesの「SGT,Peppers Lonely Harts Club Band」、自分の持っている盤だとP-MODEL「Another Game」とムーンライダーズ「カメラ=万年筆」がそうだ。CDやデータでは絶対にできないレコードならではの仕掛けだが、オートストップ機能のあるプレイヤーだとその送り溝の音を聴く前に勝手に針が上がってしまう!せっかくレコードならではの魅力の一つが味わえないのはちょっともったいないと思っていた。代わりに自分で針を上げ下げする事になるのでうっかりすると針や盤にダメージを与える可能性は出てくるが、キューイングレバーで上げ下げしたらほぼ問題はない。と思う。

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