Kakeru Asano
専門家とともに30年先の未来を想像する談話シリーズ
日々の人工知能の進歩に脅かされてばかりのデザインリサーチャーの浅野翔です。先日、Design Researcher Societyの論文を読んでいると、LLM(大規模言語モデル)を用いたテキスト分析は完全人力に比べると10倍の時間的効率があるとありました[*]。 言うまでもなく、その処理速度と質が毎日のように向上している大規模言語モデルは、インタビューなどの定性的なデータ分析においても一定の効果が現れています。まだ、文字起こしでも分析段階でもいくらかのハルシネーションが発生
本稿では、大規模言語モデル(Large Languagn Model, LLM)の急速かつ劇的な進歩を踏まえ、社会学の研究者であるノーマン・K・デンジンが1970年代に提唱した「トライアンギュレーション(三角測量)」という方法論の拡張を、デザインリサーチの多元化の一例として考察したいと思います。 社会科学におけるトライアンギュレーション 1970年代の社会科学において、デンジンが「トライアンギュレーション」を提唱した背景には、定性調査において単一の手法だけでなく複数の手法
2022年春より大学でデザイン系の非常勤講師を務めるにあたり、同世代のプロダクト/インダストリアルデザイナーを中心にリストを作成していました。NDA(守秘義務契約)が厳しい日本において、デザイナー/デザインスタジオを調べるのは時間も手間もかかることがわかりました…。 1985年から1994年ぐらいの間のプロダクト中心のデザイナー、デザインスタジオを運営する方々を調べていたのでメモ代わりに残します。テキスタイルやファッション、ジュエリー、コミュニケーションなど活動のが多岐にわ
ヴァーチャルファッションのプラットフォームである「DressX」を、カラーアナリストのかいじんちゃんと、イメージコンサルタントのアサノシノとともに体験する全3回のレポート。 ヴァーチャルファッションの背景を整理した第1回、DressXでのショッピングをレポートした第2回、そして、最終回となる今回は、つよくておもしろい服を選んだ彼女らとヴァーチャルファッションの経験を振り返るとともにヴァーチャルファッションのある生活まで想像を飛躍してみたいと思う。それではどうぞ。 ヴァーチ
ヴァーチャルファッションのプラットフォームである「DressX」を、カラーアナリストのかいじんちゃんと、イメージコンサルタントのアサノシノとともに体験する全3回のレポート。 ヴァーチャルファッションの背景を整理した第1回に続き、第2回となる今回は、アナリストとスタイリストのふたりとともにDressXの商品を見ていく。つよくておもしろい服を選びたいと話す彼女らがどのような購買体験をしてたのかレポートする。 浅野|前回も少し紹介したけれど「DressX」は、写真を送ると購入し
2021年、インターネット上の仮想空間と物理空間の距離が急速に接近をしている。デジタル空間上にあったもうひとつの「現実」が、リアルな生活と重なり合い、匿名と記名が入り乱れるソーシャルメディアを代表に複合的な現実空間を生み出している。 仮想的なキャラクターであるアバターのデザインや視覚的な記録を超えた画像合成・編集技術の発展など、すでに複雑な「現実」のなかで消費されるファッションの情報環境から先端的な試み「ヴァーチャルファッション」が生まれている。 ヴァーチャルファッション
国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で議論されたトピックが示すように、わたしたちが暮らすこの地球は非常に複雑で曖昧な不確実な課題に溢れています。不確実でいじわるな課題を後回しにし続けてきた人新世に対して、この惑星の限界が徐々に近づいてきていることを切迫感を持って議論することが増えてきました。 VUCA時代の複雑な関係性とその相互作用の外郭を少しでも描くために、社会や環境などあらゆる複雑な相互作用の構造(システム)に焦点を当てた「システム思考」と、そのシステム
デザインリサーチャーの浅野です。非常勤講師として、3、4年生を対象とした演習『プロモーション』という毎週2コマの授業を担当しています。あっという間に3年目となりました。僕自身、さまざまな大人の影響を受けてこの職を選んだこともあり、教育への貢献はライフワークとしています。 僕のキャリアをご存知の方は「広告代理店で働いた経験もないのにプロモーション?」と思った方もいると思います。いわゆる広告やPRといったマーケティング行為を指すことの多い「プロモーション」ですが、単語の成り立ち
安藤 昌也 先生にお声がけ頂き、千葉工業大学大学院の『多元的デザイン特論』にて「みらいのさんち」というテーマで講義をおこないました。 生物多様性や持続可能性の議論の延長上にあると思っている「多元的(考えや事物の基づく根源が多くあること)デザイン[*1]」が、そもそも多元的だったはずの工芸における「産地」を拡張していくアイデアであると仮説立ててみました。 環境や時間軸を超えた過去との対話など、 産地はつねに時間を超えた超越性の中に存在していたのではないか これまで自然環境
今期も大学で演習『プロモーション』という授業の非常勤を務めています。タイミングよく選挙があったので「プロモーションの視点から立候補者を見てみよう」と話をしたのですが、学生との対話から驚きと学びがありました。 若者は政治に無関心?10名にも満たない20代前半の受講生ですが、半数近くが今回投票をしていないそうです。予想していた通り「住民票を移していないから」というものですが、不在者投票制度については「知らない」とのことでした。そのため、大学進学後に投票へ一度も行ったことがなく、
2021年10月、新型コロナウイルスの感染拡大に落ち着きが見られ、ようやく待ちに待ったお出かけを楽しんでいる人も多いのではないでしょうか。日本各地で「お出かけ」のきっかけになるようなにぎわいづくりの促進を促す、「歩いて楽しいまちづくり」とも言われるウォーカブル推進法(改正都市再生特別措置法)が2020年に施行され、緊急事態宣言の狭間を縫うように日本中で社会実験がおこなわれています。 本記事では、ウォーカブルな取り組みの背景を整理しつつ、中心部に集中する取り組みではなく、ヒュ
こんにちは、最近は英語の勉強と3Dプリンタと家庭菜園にハマっているデザインリサーチャーの浅野翔です。 緊急事態宣言の最中、何か身になるものをやろうと始めた英語の発音矯正。過去に1年間だけ交換留学でフィンランドに滞在していたのももはや10年近く前の話。有松という伝統工芸のまちで活動しているだけに、英語を使う場面が全くないというわけでもなく、2021年の7月からひさびさに勉強を始めていました。 発音矯正はアプリ任せ「ELSA Speak」留学中からも今も英語をもっと自然に話す
新型iPhoneが発表されてからさらに注目が集まっているように思える3Dスキャン。LiDAR搭載機は限られていますが、土木・建築系からFAB界隈まで、僕の周りでは俄かに盛り上がっているように思えます。精度は限られるとはいえ、スキャンできる機材が身近にあり、フリーソフトのソフトウェアも充実してきたこともあり、これまでよりも楽しく3Dを扱うことができるようになってきました。 大量の写真群からモデルを生成するフォトグラメトリや、赤外線での距離測定や地点の色情報でモデルを生成する点
2020年は引っ越したせいもあって、機能がないけど素晴らしいものに出会うことができました。前住んでいた京都の長屋はスマートデバイス入れて調整をある程度自動化したけど、温度調整とかは気密性の高い住宅に引っ越した方がずっとスマートだったりします。その分、機能はないけれどQoLを上げてくれるものに投資し半年でした。 グリーン最高今までの生活で手にしていなかったもの。それは室内の植栽です。ぎっくり腰とコロナで部屋の外へなかなか出れなかった6-7月の精神的なよりどころに、思ったよりも
引越しに、コロナに、再びフリーランスにと転機を重ねまくった2020年。身の回りにあるいろんなものをつくりました。 マンガ・キャビネット妻からのオーダーでつくった4連のキャビネット。まだ収まりきらないくらいマンガがあるけど、壁面1/2くらいの高さでリビングにいい存在感を出してます。 ムラ染めのシャツ年季の入ったヘビーウェイトシャツとGUで購入して着古していた開襟シャツを絞り染め。ジョウロのような道具を使ってパープルとブルーの染料をさしてます。夏場はルーティーンで着てました。
多摩美術大学の情報デザインコース吉橋准教授の書籍リストが良かったのでコメントしようとしたら長文で弾かれてしまいました。。ので、こちらにまとめてみる。 吉橋准教授の素敵なリストはこちら↓↓↓ 上記のリストを興味深く拝見いたしました。医療、看護、福祉領域のテークホルダーをきちんと理解することが、この領域でデザイン行為をおこなううえではじめの一歩だと本記事を通じて改めて認識できますね。 私自身は過去に大学病院や高齢者福祉施設でのデザインリサーチプロジェクトに取り組んだ際に、基