違うんですって
袖無かさね
オレはどうしてもメガネをかけることができない。理由は言えない。プライベートなコトなのだ。
だから、スノボに誘われても行かない。行けない。オレに言わせればゴーグルもメガネだから。
大学生になると、友達同士で夜行バスなんかに乗って、スノボ行こうぜ、って話が出る。オレはのらりくらりと理由にならない理由で断ってきた…のだが、ある時、いつのまにかメンバーにカウントされていた。
仕方がない、もったいないが、金は払って、なんちゃらかんちゃらな理由で行けない、すまん、てことにするか。
「ねぇ、鈴木くん。今週末のスノボ、行くよね?私、スノボ初めてだから色々教えてもらえたら嬉しいな」
思いがけず可愛い女子に声をかけられた。
「お、おぅ、そんな話あるみたいだけど、オレ都合悪くなりそうなんだよね」
「そうなの?」
明らかにがっかりしてくれている。嬉しいが、ならば余計にスノボには行けない。今のオレは恋愛恐怖症なのだ。
違うんですって。そりゃあ、白いゲレンデできゃっきゃやりたいっスよ、オレだって。
ただね、アンドロイドなんス。オレ。地球人のマインドがだいぶねじれてきたから、ストレートに矯正しないとねってことになって、宇宙から送り込まれて。メガネかけると地球人のホンネが見える字幕機能付きで。
最初はちゃんとやってたんス。口から出る言葉と、メガネに映る字幕のホンネを照合して、その地球人がありのままの想いをありのままに表現して楽に生きられるきっかけを作れたら、って。
でも、ウザがられるか、プライベートなコトに口出しするな、と怒られるか…。好きな女の子ができても、言葉とホンネの違いに戸惑うことばかりで。
我慢してたり。
遠慮してたり。
拗ねてたり。
オレのこと好きって言ってるのに他に好きな男がいたり。
好きじゃないって言ってたのに本当は好きだったり。
めんどくせーーー!
いいからホンネで話そうぜ。
おしまい
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