アヒルボートの少女
公園の少女がコーラのラベルを剥がす
それが合図だった
呼吸をするように人々を運ぶ列車
道にこびりつく黒ずんだガム
それは呪詛を含んでいる
雨にいくら濡れても乾いたお前のその心は
ひび割れたまんまそこにあるんだ
少女はその全てを知ってしまった
少女は全てを知って泣いた
でも泣いていても何も変わらないから
少女は悲しい目でアヒルボートを漕いでいる
アヒルボートは大きな弧を描いて
世界をまるっと囲んでいった
それが愛かは分からない
漕ぐしかないから漕いでいるといった様子
少女は拠点にボートを戻して
自販機でコーラを買って
ラベルを剥がして微笑んだ
その時少しだけ世界が優しい色になったのを
僕は遠くの列車の窓から見つけたのです
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