『ファイナルファンタジーVII リメイク』とお休みのご連絡
『ファイナルファンタジーVII リメイク』
今年のGOTY(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)最有力候補である『ファイナルファンタジーⅦ リバース』の前編にあたる作品。97年に発売され、世界中から愛されるRPGとなった伝説のゲーム『ファイナルファンタジーⅦ』のリメイクであり、オリジナル版の序章となる「ミッドガルからの脱出」までが描かれる。
FF7がリメイクされたらスクエニが終わるとき、なんて言われることもあるくらいにゲーム史的に見ても重要な作品とされていて、私の場合、リアルタイムでプレイしていたわけではないのだけど、科学と魔法が混在し、スチームパンクの要素もサイバーパンクの要素も宇宙SFの要素もあるという独特な世界観、マテリアを組み合わせることで有利に戦いを進められるカスタマイズ性、数多くのミニゲームに、主人公クラウドの生い立ちと成長、魔晄と星の命にかかわる壮大かつ(それまでのFFに比べてメッセージ性の強い)やや異色のストーリー。どれもが後追いだとしても印象的で、FFシリーズの中から一番好きな作品を決めるとしたら、おそらく1番か2番にくるだろうなあってくらいには好きな作品だ。
きっと同じようにFF7のオリジナル版を遊んで感動した人は世界中にたくさんいて、発売元であるスクウェア・エニックスも本作が適当なリメイクでは許されない作品であることを重々承知していたのだろう。だからこそ、これだけ時間をかけて、しかも異例の三部作(三部作だよね?もっと続いたりする可能性あるのかな)という構成にしながら開発を進めているわけだ。
本作『FF7リメイク』は、オリジナル版では5時間程度で終わるくらいの話を大幅にボリュームアップさせ、画面のビジュアルはもちろんのこと、バトルやストーリーについても様々な変更がほどこされている。
にしても始まり方からして通常のRPGからあえて「外し」ていてかっこいい。新羅カンパニーが運営する魔晄を使った企業運営に反旗を翻した組織アバランチのメンバーはいわゆるテロ集団であり、主人公であるクラウドはそこに雇われ、魔晄炉爆破の任務に付いたところから物語が始まる。物語の流れは、開幕からスリリングかつスピード感があり、プレイヤーを一気にFF7の世界へと引き込んでいく。
オリジナル版とは違い、戦闘は自由に動き回りながら戦うアクション要素強めの仕様となっており、移動においてもバトルにおいても派手な演出が増え、2024年にプレイしてみると「震災後のSF」といった面まで見えてきて(それはリメイクをするにあたって製作者が意識した点だろう)あらゆる方面に配慮したことがうかがえる。
ただし、だからと言って手放しで褒められる出来とは限らない。まず、ムービーシーンがやたらと多いのは辟易した箇所だ。せっかくバトル自体は楽しく爽快感があるのに、ひとつ戦闘が終われば何かしらムービーシーンが始まり、ちょっと移動するとノロノロ歩きながら会話シーンが始まるのは流石にテンポが悪い。正直言ってかったるい。世界観を深掘りするためクラウドに「何でも屋」という立ち位置を与え、様々な「お使い」要素を入れたのは、存分に遊び回りたいという人にとっては嬉しいプラス要素となるのかもしれないが、こちらについてもオリジナル版のテンポの良さを失わせる部分だと感じた。
あまりにディテールを細かく描くあまり失われてしまった部分は多く、何よりもテンポの悪さが気に掛かる。街や建物は一見広く見えるが、マップを見ると細い道が枝分かれで繋がっているに過ぎず、プレイヤーが「迷子」になることで「すごく広い」と錯覚するような作りになっているのもいただけない。つまりは水増し感が強いのだ。
オリジナル版の設定をいかに膨らませるかという点は、特にこの『リメイク』において重要な部分だとは思うものの、基本的な流れ自体は終盤まで変わらないし、であるならば、もっとスムーズでアトラクション要素の強かったオリジナル版の良さを残して欲しかったな、と感じてしまう。
とはいえ、映像的な美しさは目を見張るものがあるし(綺麗すぎて逆に居心地が悪いと感じるほどに)、バトルについては『キングダムハーツ』シリーズで培った爽快感のある楽しさを良い具合に昇華させているのでやっててとにかく気持ちがいい。ダンジョンの探索は簡単すぎてあまり興味を持てない上(大体の場面が△ボタンを押したり長押しするだけで解決するので「ギミック」としての面白さはほとんど無い)、後半は時間のかかるバトルも増えてくる。
なんというか良いところもあれば、かなり微妙(というかダメ)なところも目に付くリメイクとなっており、評価しづらい。なんてったってこれは「伝説のゲーム」のリメイクなのだからバランスを取るのは難しいよな、とは思うけれど。
おそらくは、ただ原作をなぞるように作り直すことも出来たのだろう。しかし本作はそのような作り方に拘泥はしない。
『FF7』は97年に発売されて以降、『FF7 アドベント・チルドレン』などの映像作品をはじめ、様々な「派生作品」があり、クラウドに関しては『キングダムハーツ』シリーズや『スマッシュブラザーズ』シリーズといった別のゲームに登場することさえあった。つまり『FF7』には歴史があるのだ。枝分かれした様々な歴史が。そして世界中に無数のファンがいることから、そう簡単に納得するものを作るのは難しかったのだろう。
個人的には『FF7』の魅力として、「ぼくが考えたさいきょうのRPG」感と「おもちゃ箱」感を挙げたい。そしてその点にこそ当時の自分は惹かれていたのだろうなと、いまならわかる。
クラウドの造形にしても、セフィロスの設定にしても、星の命を救うというSF的なストーリーにしても、何よりも「中二感」というものが前面に押し出されていて、それがいい具合なのだ。いい具合にかっこよくて、いい具合に洗練されていて、いい具合にコミカルで、いい具合に楽しいのだ。クール系の主人公であるクラウドは、その後の色んなサブカルチャーに影響を与えたはずだけど、この『FF7』という作品はそもそも、そういう”かっこつけた性格の主人公”をイジる場面、どころかストーリー自体がイジりまくることを前提とした話になっていて、そんなコミカルさと、とんがった点が自分としては突き刺さる部分だった。はっきりいって大好きな部分。
そして話は終盤においてオリジナル版から逸脱した方へと歩み出す。これはやはりオリジナル版、さらには97年の発売以降様々な媒体で登場した派生作品に”どれだけ触れてきたか”で感動の度合いが変わる部分であり、この点においても手放しでは褒められない。しかし、しかしである、それでもこの『リメイク』は良いのだ。オリジナル版では救うことが出来なかったキャラクターをなんとしてでも救ってみせるという、もしかしたら(もしかしなくても)原作をプレイした人が不満に思う展開を用意し、「新たな物語の扉が開く瞬間を描く」というその一点において、確実に成功しているのだから。きっとそのエモさは「『FF7リメイク』が初のFF7だ」という人にとっても伝わるエモさなのだ。
だからダメな部分があるにせよ、ラストに用意された「清新さ」という点で私はこのゲームを好きになってしまった。ある意味で魔法にかけられた状態に近い。果たしてこの魔法は次作『リバース』で解かれてしまうのだろうか。
それを確かめるために私は『リバース』を遊ぼうと思う。『バットマンビギンズ』にしても、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』にしても、リメイク一作目というのは、ある意味手堅い作りであるべきなのだ。続く作品でどのような新しい景色を、破壊を見せてくれるのか、それこそがいま私にとって最も重要なことであり、『ファイナルファンタジーⅦ リメイク』は十分にその役割を果たしてくれていた。
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お休みのご連絡
というわけで、noteをしばらくお休みします。期間はだいたい1ヶ月から3ヶ月くらいを想定中。FF7リバースをやるため特にこれと言って理由は無く、一年前にお休みしたときと同様、前々から決めていたこと、だからです。
noteはとても居心地がいい場所で、記事を書けば好意的な反応が返ってきますし、かといって必要以上にベタベタしてるわけでもないので自分にとっては何というか一番気楽に、一番真面目に、一番楽しんで文章を書こーって気になるお気に入りの場所です。それもひとえにこんな文章でも読んでくださる皆さま、楽しくつながってくださっている皆さま、興味深い記事を書いている皆さまのおかげ。いつもありがとうございます。
ただ自分としてはたまに違う場所へ移ってみたくなる時期があり、そうすることでこれまでとは違う言葉を見つけられたらなあという願望みたいなものがありまして。ひとつの場所に留まることで見えてくるものはもちろんありますが、そろそろ一旦離れるタイミングな気がしてのお休みです。つまり夏休みです。一番の理由はやはりリバースですが。
なのでしばらくしたらまたヒョイッと戻ってきますので、そのときはどうぞごひいきに。暑さ厳しい折、くれぐれもご自愛ください。皆さまが元気でいることを願っています。
ではまた。