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これからのタイトルの話をしよう
何となくの思いつき企画。題して「有名なノンフィクション本のタイトルをマイルドにしてみよう」のコーナーです。いやね、例えばリチャード・ドーキンスの本に『利己的な遺伝子』ってあるじゃないですか。かっこいいですよね~、「利己的な」「遺伝子」って。遺伝子を人間と同じく意思を持って動くものなんだよ、という本の内容をわかりやすく、かつ文学的に表現した粋な言葉の組み合わせ。こりゃあ売れるのもの無理ないわ。
でもさ、もしこれで本のタイトルが『何がなんでも生き抜くぞ! ~遺伝子のすべて~』とかだったらどうだろう。たぶん私なら手に取らない。いや、一周まわった面白さを感じないでもないけど、ドーキンスの本のタイトルがかっこいいと感じるのは、いわゆるSFちっくな想像力や、文系にも刺さる言葉の連なりがあるからなのだ。たぶん。
じゃあ試しに有名なノンフィクションのタイトルをマイルドに、あるいはバカっぽくしてみたらどうなるだろう。実は中身よりタイトルに惹かれて買っている人って案外多いんじゃないだろうか。だって私自身はじめは「タイトルかっけえ……」と思い、『利己的な遺伝子』を手に取った気がするし。
というわけで、タイトルが変わるとどんな印象を持つものなのか確かめてみたくなり、誠に勝手ながら変更を試みる。つまり「腕がなるぜ」の記事と同じく一人大喜利企画みたいなもんです。
以下はその変更案。
『虹、バラバラにしますさかい』
元のタイトル『虹の解体』
○ドーキンスの本のタイトルはほんとにかっこいいものが多い。「虹の解体」なんてSF小説のタイトルと言われてもなんら不思議じゃないもんね。でもこんな風に関西弁っぽくしたらどうだろう。果たしてどれだけの人が手に取るのだろう。私なら……いや、これはこれで面白そうな気もするな。ヤクザの話っぽくて。
『神なんてないさ』
元のタイトル『神は妄想である』
○これもドーキンスの「タイトルかっこいい本」のひとつにして代表格。言い回しを変えて童謡みたいにしてみた。良い感じだ。『みんなのうた』とかで流してほしい。なんだかいろんな人を怒らせることになりそうな気もするけど。
同じ手法で『時間は存在しない』→『時間なんてないさ』とすることも可能。牧野修あたりが書いてそうなイメージが漂い香ばしい。
『ピストル・ばい菌・お馬さん』
元のタイトル『銃・病原菌・鉄』
○子どもたちでも手に取れる「学べる絵本」のような印象のタイトルに変更。一時期、東大生の間で最も読まれてる本、なんて言われることもあった気がしますが、これを東大生がこぞって読んでるのは中々想像がつかない。
「『ピストル・ばい菌・お馬さん』?ああ、あの本ならもう読んだよ」とイキることはもう不可能だ。
『フェルマーおじさんのなぞなぞ時間旅行』
元のタイトル『フェルマーの最終定理』
○ファンタジー風味なので逆に手に取る人が増えそうな気もする。私ならたぶん読むと思う。
『うえーん、Amazonの商品が届かない』
元のタイトル『悲しき熱帯』
○元の本の内容を無視したバカ案。たぶんタイトルを付けた奴は本を読まずにWebの翻訳サイトかなんかを使ってタイトルを付けたのだろう。
『スッキリわかる 神話伝承の教科書 ~めざせ初級合格~』
元のタイトル『神話の力』
○資格検定に使えそうなタイトルに変えてみる。
「神話検定むずかしいよお」
「この教材いいよ、わかりやすいし重要な点がよくまとまってるからおすすめ」
とかそんな会話をしてるところが思い浮かぶ。
『ジャスティス/エイジ・オブ・コミュニタリアニズム』
元のタイトル『これからの正義の話をしよう』
○あえて英題に戻し、せっかくだからヒーロー映画っぽくしてみる。
「あれ読んだー?「エイジ・オブ・コミュニタリアニズム」。いや、すっごい興奮したー!」
「読んだ読んだ!まさかロールズを相手にあそこまで戦うなんて驚いたよ!続きが気になってたまらないね!」
とか会話してほしい。学生諸氏に。
『ひまりん』
元のタイトル『暇と退屈の倫理学』
○ひらがな4文字というのは何となく安心感のあるもので、こちらも『ちいかわ』や『よつばと!』と同じく優しく可愛げな印象がある。たぶん手に取った人の多くはページを開けば4コマ漫画が始まるイメージを持つだろう。「ひまりん」がみんなに愛される日は近い。
『ドキッ!忘れられた日本人』
元のタイトル『忘れられた日本人』
○やや趣向を変えて、元のタイトルをそのまま流用した例。頭に「ドキッ!」と付けるだけで昭和後期のバラエティ番組感を演出できる。きっとエッチな本を求めて本屋にきた中学生男子がドキドキしながらこの本を手に取ることだろう。
『飛び出せ!頭ん中の言語たち』
元のタイトル『言語を生みだす本能』
○料理バトルをする漫画タイトルっぽくできないかなーと思い考えた案。
「ようし、そんなに言うなら見せてやる!ボクが考えた言語たちを!」
「受けて立とうじゃないか。そのちっぽけな脳みそに詰まってる言語がどれほどのものか楽しみだよ」
とかいう会話が思い浮かぶ。中身はちゃんとした言語学の本のままだけど。
とかなんとか考えておりました。不毛もいいところ。でも楽しいからやめられない。いま列挙したタイトルの本たちが書店のサイエンスや歴史の棚に並んでるところを想像し、それを手に取る人たちの姿を想像すると心が安らぎます。
というか割とどのタイトルの本も面白そうな気がしてきたのですが私だけでしょうか。
以上、「有名なノンフィクション本のタイトルをバカっぽくしてみよう」のコーナーでした。こちら暇なときにおすすめの不毛な遊びとなっております。