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ジグソーパズルに挑戦
祖父はジグソーパズルが好きな人だった。子どものころ祖父の家に行くと、居間のとなりにある応接間のテーブルに、1000ピースのパズルがバアっと広げられていて、そこには新幹線とかどこかの街の風景写真がボコボコ穴空きの状態で置かれていた。厳格でちょっと怖いイメージのあった祖父。でもジグソーパズルをしているときの表情は、いつもよりちょっと楽しそうで、じっくりとパズルを見つめるその姿がいまでも印象に残っている。
小学生だった私は「ジグソーパズルぅ?それよりテレビゲームの方がおもしろいのに!」と、ちょっと眺めるだけでほとんど興味を示さずにいた。
が、いま私はジグソーパズルをやっている。もくもくとジグソーパズルをやっている。何故か。ネットをゆらゆら漂っていたら、ジグソーパズルの最新版といわれるこの作品と巡り会ったからだ。んで、一通り完成させて遊び終わった感想はというと、
ジグソーパズル面白いじゃん。
ということに尽きる。
ごめん、じいちゃん。ジグソーパズルってすごく面白いね。なんか熱中しちゃったよ。こりゃハマるのも無理ないね。ふだん使わない脳の部分を使うというかなんというか。
もちろんこのMagic Puzzle Companyから出た『The Sunny City』が特別面白いというのもあるのだろう。プレイしながら「ジグソーパズルって進化してるんだな~」と思う場面が何度もあったし。なんというか、ジグソーパズルで遊ぶという行為の価値を"何倍にも高める"デザインになってるのだ、このパズルは。
これまで私は1000ピースのパズルなんてやったことが無かったので、完成させるのに10日間くらいかかったけど、いままで知らなかった新しいエンターテイメントを摂取している感覚があって想像以上にわくわくした。
たかがジグソーパズル。されどジグソーパズル。
とても面白い体験を提供してもらえたので、ネタバレしないように感想を書いてみようと思う。そう、本作にはある「仕掛け」が施されており、その仕掛けを知ってるかどうかでプレイ感覚がガラリと変わってしまうのだ。なのでこれからやる人には、できるだけまっさらな状態で遊んでほしいので、なんならこの記事の先は読まず、いますぐプレイしてほしいくらいだ。
ジグソーパズル開始
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まず、箱の外装はこんな感じ。これから作る絵が描かれている。同社から発売されているパズルは他にも何種類かあったけど、絵本みたいなやわらかい雰囲気のこの絵が気に入ったので購入。
Amazonの説明によると、「完成すると魔法のトリックを行う、まったく新しい1000ピースのジグソーパズル」とのこと。
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裏側はこんな感じ。
ちなみに説明はすべて英語で書かれているけど、プレイに支障はありませんでした。簡易的な説明書およびサブ的な遊び方についてはQRコードを読み取ると日本語で読めるようになっているので安心あんしん。
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パズルを進めていくための「完成図」も入っている。斜め視点から街を見下ろした、あたたかい空気を感じさせる絵。窓から外を眺めている人、浜辺で遊んでいる人、屋根で昼寝をしている人。色んな人がいて、そこには個々のストーリー性も読み取れる。
ちなみに完成図は2枚あるので誰かと一緒に進めるときも便利。
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気になるのはこの茶封筒。「パズルを完成させるまで開けちゃダメだよー」と書かれている。
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1000ピースのパズルはこっちの茶封筒の中に。
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いざパズル開始。
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どっさり。上記したように、私は1000ピースのジグソーパズルは初めての経験なので進め方がわからない。なのでとりあえず、すべてのピースを表面にしながら絵柄や形をチェックしてみる。
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人が描かれたピース。全体的にどこかシュールで気の抜けた雰囲気があり、描かれている人物に関しても、みんなこんな感じの適当っぽい描かれ方をされている。
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なんだかトリッキーな形をしたピースも。
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仕分け中……。
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花が書かれたピースは花の形になっていて、なんとなく和む。でもどうやってはめることになるのだろう。
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何かを見上げてる人と、それを見て吠えるわんこ。
こんな感じでこのSunny Cityには住人がたくさんいて、それぞれがそれぞれの生活を営んでいる様子が描かれている。このラクガキっぽいフワッとした絵柄好いなあ。
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明らかに通常よりも大きなサイズのピースがあったりする。
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仕分け中。四辺になるであろうピース。通常の形をしたデコボコのピース。花の形や大きなサイズのものなど、明らかに形の異なるピースをそれぞれより分けていく。
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なんじゃこの形。
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ハトポッポ。
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なんじゃこの形その2。
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にゃんこ×2。
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適当に分け終わったのでジグソーパズル開始。
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とりあえず四辺から攻めてみる。たぶん細かい進め方にもセオリーがあるのだろうけど、まずは好きなようにやってみる。ここで1日目終了。
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2日目。ほとんど進まず。むじい~。
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というか進めて行く過程でわかったのだけど、このジグソーパズル「最初に外枠を作る」というセオリーが通用しない。通用する部分もあるのだけど、一辺が直線になっているピースの数が、明らかに実際の外枠の量以上あるからだ。
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3日目。あんまり進まず。むずかしいよお。そしてどんどん散らかっていってる図。
やり終えてからの感想だけど、このジグソーパズルは序盤が特に難しい。似たようなモチーフも意図的に多く用意されているし、上下の判別がつきにくいピースが結構あるってのが要因かと。
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4日目。ようやく海辺付近が出来てきた。
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本パズルがよく出来てるなあと思うのは、1ピースの中に人物や動物や花など、なんらかのモチーフが収まるように切り分けられていることが多い点。つまりこの『The Sunny City』の絵は、「このジグソーパズルのために設計して描かれた絵」ということ。そのためピースひとつひとつに味わいがあり、ジグソーパズルを完成させる過程で自分にとっての「推しピース」を探すなんて遊び方もできる。
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5日目。海がだいたい出来上がったので、町に取り掛かる。
ピースひとつひとつに愛着がわく作りになっていることが、イコール”ジグソーパズルを完成させるためのヒント”の役割も担っていて、そこも巧いなと思う。
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6日目。
ひとつひとつピースを見て適当な場所に置いていくという時間のかかる方法で進めている図。もっといいやり方がありそうな気もするけど知らんし思いつかなかったのでしゃーない。時間がじっくりと進んでいく。
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7日目。
通常のセオリーが通用しないので結構難しいのだが、そのぶん制作の過程そのものに喜びがたくさん詰まっている。”角”にあたるピースが5つ以上あったり、どちらが上下なのか判別が付きづらいピースがあったりと、難しさに”波”があり、その変化自体がジグソーパズルを飽きずに製作することに繋がっている。
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あとこのパズル、こういうニョロッとした変な生き物?がちょこちょこ出てきます。完成したあとでも結局こいつがなんだったのかはよくわからない。
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8日目。なんとなく完成に近づいてきているような。
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9日目。終わりが見えてきた。
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やっていて気づいたのだけど、玄関マットにも顔が描かれていたりする。あと木の実とかにも。そういう本編とは関係なさそうに見える「遊び」が細部に散りばめられていて、見つけるとちょっと嬉しい。
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10日目。そろそろ完成しそう。ここら辺までくるとギアがかかり、やる気がさらに上昇。
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あと1歩で完成しそうな図。
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完成~~~!!やったぜ。
1ピースも無くさずに完成したことが正直一番ホッとしました。
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さて、問題はこの袋である。
上手いなあと思うのは、この袋の存在があることで、完成させるモチベーションを維持しつづけられるようになっていること。
で、この先は皆さんに実際プレイしてもらいたい。むかしのゲームの攻略本みたいなことを言って申し訳ないが、ネタバレした状態で遊ぶのと。まっさらな状態で遊ぶのとでは袋を開けたときの感動、というかテンションの上がり方がまるで違うと思うから。勘の鋭い人はプレイの途中でギミックに気づいてしまうかもしれない。一方私はというと、なんか変だなーと感じつつ、完成までこぎつけ、袋を開けて「マジかー!!」と声に出すほど感動してしまった。勘が鈍くてラッキーだ。そしてその仕掛けもまた、一定時間楽しめる「遊び」となっているため、まるでご褒美でももらったかのような嬉しい時間だった。
おそらくこれは、実際にイチから作り、最後までたどり着いてこその感動なので、ジグソーパズルを完成させる過程そのものに、その時間こそに充実感があり、だからこそ、とびきりの喜びとなるのだろう。答えがわかってみればささやかな仕掛けだ。「大したことないじゃん」と言われてもおかしくないくらいの。でもここには、映画とも小説ともテレビゲームとも違うナラティブとエンタメ性が確かにあり、それはとても豊かな時間でもあった。
アートワークの良さやオリジナリティ、パズルを解く際の様々な細かい仕掛け、作る過程そのものにナラティブが宿るよう設計されたデザイン。最新のジグソーパズルってこんなに面白いのか!という歓びをめいっぱい味わえる作品でした。みんなで遊んだり、繰り返し遊んだりできるように作られているため、一度完成しても、もう一度崩して最初から楽しめるし、誰かとその楽しさを共有できる。
もしかしたら祖父は、自分が楽しんでいる姿を私に見せるために、居間のすぐとなりの部屋でジグソーパズルをやっていたのかもしれない。そうすることで、この楽しさを、喜びを伝えようとして。そんな風に考えたら、あの厳格な祖父がなんだか可愛くみえてきて、すこし心がやわらいだ。
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