坂東さしま

関東のどこかに在住。文章書き。 ひょんなことから文章を書き始め、小説にも手を出しました。 各小説はマガジンでまとめております。

坂東さしま

関東のどこかに在住。文章書き。 ひょんなことから文章を書き始め、小説にも手を出しました。 各小説はマガジンでまとめております。

マガジン

  • 【長編現代和風ファンタジー】神社の娘

    「俺も悪神倒しの仲間にいれてください!」 日本のどこにあるのか分からない不思議なとある村。 刺激のない平凡な日々を過ごしていた高校生の橘平は、雪の夜、森の近くで村の神社の跡取り娘・桜と出会う。 危険を冒してまで暗い森を目指す彼女の目的は、大切な人たちのために「悪神」を消滅させることだった。 橘平は桜から村に封印される「悪神」の存在、そして村の「おかしさ」を知り、自身も桜とともに悪神の謎を探ることを決意する。 大切な人たちのために自分を犠牲にしてまで頑張る桜。 大好きな人たちを守るために他人と距離を置く向日葵。 美しい見た目と面倒な性格で苦労する葵。 将来の夢も好きなモノもない橘平は、彼らの姿に、生きることの意味や自分に欠けている感情を見出していく-。 村に伝わる不思議な力を操る桜たちと、普通に見えてちょっと変わった特技を持った少年が織りなす現代和風ファンタジー。

  • 【小説】お父さんと結婚して!

    腐りながら転職活動をしていた佐藤まつりは、ある日、とつぜん生理になり困っていた小学生・真冬と出会う。  真冬は父親と二人暮らしで、母親はいないという。これからどうしていいか分からないという真冬に、まつりは一緒に生理用品を買いに行ってあげたり、さらには家に行って父親にしっかり説明すると約束したり。他人の家にちょっかいを出してはいけないと思いつつも、まつりはそれに加えて夕飯まで作ることに。  帰宅したら知らない女性がいて驚いた真冬の父だったが、空腹には勝てず、まつりの作った夕飯を食べ始める。その最中、真冬は父親の目の前で「お父さんと結婚してほしい」とまつりに告げる。 「22時のテレビドラマ」をコンセプトにした、ホーム&ラブコメディ。

  • 【短編小説全12話】私と僕と夏休み、それから。

    初めて投稿した短編小説です。 【あらすじ】 地元の高校に通う高校1年生の中村キコは、同じクラスで同じ委員会になった男子生徒から、突然「大っ嫌い」と言われる。しかし、なぜそう言われたのか、全く見当がつかず…。

最近の記事

【小説】神社の娘(第47話 向日葵、すっぴんをさらす)

 よっしーの深読み解説も効いているらしく、向日葵の感動メーターは振りきれて戻らなくなってしまった。  「絶対なぐっでえ、わがでっだぁがらぁ」と持参の箱ティッシュを手に鼻をかみ続け、ピンクのふわふわフェイスタオルで涙をぬぐう。メイクも崩れ始め「おーだーぷるーぶう、ぎがないじゃん、ぶぞじゃん」という有様だ。  よっしーも負けないほどの号泣ぶりで、「物語の本質を、わ、わがっでばずば、びまばりどの!」 「よっじーぼば!」  そして二人は抱き合って、互いをほめたたえあった。

    • 【小説】神社の娘(第46話 橘平と桜と向日葵、アニメを観る)

       八神の山で見つけた小さな鳥居。そこにはお伝えさまの神紋があった。  向日葵と葵に今すぐ見てもらいたい桜は、橘平、優真と解散してからすぐ、二人にメッセージを送った。  しかし土曜は向日葵が出勤、日曜は葵が出勤でなかなか二人がそろわない。  加えて次の土日は桜まつりである。  来週は桜も葵もその練習で忙しい、学校は新学期が始まってしまう――ということで、桜まつりが終わってから、ということになった。  そうした中やってきた、春休み最後の日曜日こと、よっしーの解説付きア

      • 【連載小説 最終話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

        ●【最終話】お父さん!!!!! 「こんにちはー、ひいおじいちゃん!」  山奥の民家に、小学生特有の高く元気な声が響く。  3日前、まつりから『日曜行くね』と電話があった信一は、その瞬間から楽しみで仕方なかった。孫に会えるのも嬉しいが、ほぼひ孫確定の可愛らしい小学生と野菜を収穫したり、山を散歩できることにワクワクしていた。漬物を作ったり、山を降りてお菓子を買いこんだり、家の掃除をしたりと、ここ数日は彼らを迎える準備に忙しかった。今朝もお昼ご飯用にうどんを打ったほどだ。

        • 【連載小説 第29話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第29話 お母さんの悲劇を喜劇に変えるお父さんと出会わせてくれた娘  まつりと駿は池袋のアニメイト前にある小さな公園で、石のベンチに座っていた。2人とも、メガネを外してハンカチで目のあたりを抑えている。 「ふ、ぶだりはさ、遥かな宇宙でじあわぜに……うっ」  映画のラストについて感想を述べようとするも、まつりは押し寄せる余韻に邪魔され、なかなか語れない。それは駿も同様だった。二人は映画の感動が収まるまで、30分ほど、座って目と鼻をぐずぐずさせていた。  ひとしきり泣き

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        • 【長編現代和風ファンタジー】神社の娘
          48本
        • 【小説】お父さんと結婚して!
          28本
        • 【短編小説全12話】私と僕と夏休み、それから。
          12本

        記事

          【連載小説 第28話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第28話 思い出を語るお父さんとそれを聞くお母さんと娘 「また明日ねー」  学校が終わり、友人と別れた真冬は学童へ向かった。小学校の敷地内でも端の端の方にあるその場所へ、真冬はいつものように歩いていった。  学童が見えてくると、なんとその前に駿がいた。服装は仕事に行くときのものだが、仕事用リュックは背負っておらず手ぶらだ。 「真冬」 「あれ、仕事は?」 「早く終わってさ。スタッフさんにも言ってあるから、帰ろ」  真冬はUターンし、駿と一緒に校門を抜けた。今まで

          【連載小説 第28話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第27話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第27話 墓参りするお父さんにちょっかい出すお母さん 「じゃあ先出るね。いってきます」 「いってらっしゃい」  まつりが働き始めて数日が経った。しばらくは研修などで横浜の本社に通いながらの勤務。3人の中で一番遠い場所へ行く彼女が、一番最初に家を出るのだ。  真冬と駿はこれまで通り、8時ごろ一緒に家を出て、まつりが住んでいたマンション前の公園で別れた。真冬は元気よく「いってきまーす」と登校する。  それを見届けた駿は駅へ――行かなかった。仕事用の服装のまま、元来た道

          【連載小説 第27話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第26話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第26話 ケンカする両親をぬいぐるみとのぞく娘  ららぽーと事件の夜。まつりと駿はアニメの最終回を視聴した。エンドロール後も、まつりは止まらない涙をフェイスタオルでぬぐう。 「あー、えー、映画ってどうなるのー?」  同じくぐずぐず泣く駿が「ま、真冬によると映画も泣けるみたいで。日曜、観に行こう」 「真冬ちゃん、都合よく遊ぶかな」 「聞いてみる」  まつりはそっと、駿のひと指し指の第1関節の上に、自分の第1関節を乗せた。瞬はゆっくりと指を引き抜き、彼女の手を包む。

          【連載小説 第26話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第25話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第25話 ヒョウに襲われて泣いちゃうお父さん  と、別れたはずの二組だったが。  まつりたちがマンションにつくと、エントランス前でまなみが仁王立ちしていた。小林は一歩引いて後ろに立っている。 「婚姻届け! 証人! サインしてない! くれ!」  まなみとあんな別れをしたばかりの駿は、まだ彼女と同じ空間にいるのは気まずかった。まつりもそれは同じで、多少はましな空間を作るために、駿に「夕飯の買い物」を頼んだ。  そういう訳で宇那木家の主人抜きで、まなみたちは502号室に

          【連載小説 第25話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第24話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第24話 お母さん  駿が5歳の時に両親は離婚し、彼は父親に引き取られた。しばらくは父と祖父母とともに暮らしていたが、小学1年生の時に「新しいお母さん」と「お姉ちゃん」ができた。  その「お姉ちゃん」が宇那木このみ。今の真冬と同じ小学5年生だった――。   「らしいよ~」と、真冬はまつりと小林に教えた。 「ま、真冬ちゃんさ、意外といろんなこと知ってるんだね……」  小林は寿司店で彼女から聞いた「川越」や「駿とまつりの関係」を思い出しながら、深くため息を吐いた。 「まあね。

          【連載小説 第24話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第23話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第23話 拉致されたお父さん  駿が拉致された先はららぽーとの隣、IKEA近くのちょっとした広場のような場所だった。駿はそこのベンチに強制的に座らされた。  まなみはミニスカートにも関わらず、どっかりと足を肩幅に開いて座る。見えてもいい下着は着用しているも、目のやり場に困る隙間だった。 「だいたいのことは娘から聞いた。お姉さんの子を引き取って育ててきたなんて、尊敬する」 「あいつ、そんなこと」 「ねえちゃんとどう出会って、今あんたらがどんな関係かもな。ただの他人だ

          【連載小説 第23話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第22話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第22話 寿司はタダで食べられないと学んだ小学生  ランボルギーニの運転席はもちろん小林。助手席は駿。後部座席に女子二人が乗り込んだ。  車内は意外に賑やかで、駿は小林に「ランボルギーニ感動です!」ということを熱々と伝え、デロリアンの約束も取り付けていた。まつりと駿との関係を根掘り葉掘り聞くかと思われたまなみだったが、終始、真冬と雑談していた。真冬も顔や雰囲気がまつりと似ているまなみにすぐ親しみを持ち、おしゃべりが弾んだ。  駿はコストコ前の歩道で降ろされ、真冬たちは

          【連載小説 第22話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第21話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第21話 ヒョウに追いかけられる女性  その二人とは、まつりの妹まなみと婚約者の小林である。婚姻届に姉のサインが欲しいまなみ。どうせ寝てるだろうと連絡もなく日曜の午前10時にやってきたのであった。  まなみはマゼンタカラーのミドルブーツを履いた足を肩幅に広げ、玄関に向かって大声で「佐藤まつりぃ! 起きろー!」と叫んだ。 「まなぴぃ、ご近所迷惑だよぉ」  すると、隣の部屋の玄関が開き「佐藤さん、引っ越したよ」そしてバタンと閉まった。 「はぁ?! あたしに断りもなく引

          【連載小説 第21話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第20話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第20話 安心に悩むお父さん  久しぶりにこのみと対面し心が揺れる中、まつりと話すことなどできようか。  しかし、真冬に言われて話に行かないわけにもいかない。駿は五分くいらいかけてベッドから立ち上がり、さらに五分ほどかけてやっと部屋をでた。  リビングへの扉の前に立り、取っ手に手を掛けた。すりガラスの向こうには、ソファに座るまつりの後ろ姿が見える。  すると今度は、まつりへの感情が沸き上がる。会いたいな、話したいな、その込みあがる気持ちのままに、駿はリビングへと足を

          【連載小説 第20話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【連載小説 第19話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第19話 いじめるのが愉快な女性  なんとまつりは、川越デートの翌週、仕事がすんなりと決まった。帰宅した駿に早速報告した。 「え? あ、おめでとうございます……え?」  宇那木家や真冬の学校行事等に慣れるために奔走していたまつり。その姿しか見ていなかった駿は、今は転職活動をしていないと思い込んでいた。  その間にしっかり自分の心と向き合って、まつりへの気持ちをくっきりさせて、宇那木家の未来ビジョンもばっちり設計し――と、じっくりゆっくり考えようとしていたところだった

          【連載小説 第19話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          【小説】神社の娘(第45話 橘平と桜、鳥居を見つける)

           慣れない場所、そのうえ野外での就寝。  橘平は夜と朝の間の時間に目が覚めてしまった。頭も目も冴えて、もう眠れそうにない。隣の優真は自分の部屋のようにぐっすりしている。 「……どんな神経してんの……人んちの山で」  朝までテントの内側を見つめ続けるのも辛いものがあり、橘平はそっと外へ出た。3月末のまだ寒さを感じる中、懐中電灯を点け、少し離れた草むらで用を足した。  戻ると、桜が折り畳みチェアに座っていた。ランタンの灯りをぼーっと眺めている。 「起きちゃったんだ」

          【小説】神社の娘(第45話 橘平と桜、鳥居を見つける)

          【連載小説 第18話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。

          ●第18話 川越で越えるお父さん  なんで私、この子生んじゃったんだろ。    駿は大学での授業を終え、急いで姉のいる産院に駆けつけた。おめでとう、お疲れ様、これから一緒にいい子に育てよう――最初にかける言葉はどういったものがいいだろうか。考えながら姉のいる部屋へやってきたが、開口一番がこれだった。   「姉は真冬を愛せませんでした」  駿は目の前の道路に違う時空を見ているようだったが、そのまま語り続ける。  父親が誰かは教えてもらえなかった。誰にでも言えない秘

          【連載小説 第18話】初対面の小学生女児から「お父さんと結婚して」と言われた35歳、無職。