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食と思い出
人にとって『食』はただ単に空腹を満たすだけでなく、「記憶」と密接な関わりを持ち豊かさや生き方そのものにつながります。
どんな人にとっても『食』は大切なことだし、生きていくための「支え」となる思い出を重ねていくことになるのです。
かさい食堂の味もそんな存在になったらいいなと思っています。
子供の頃の食の思い出
食にまつわる思い出の中でも、子供の頃の食体験は特に大きな影響を与えると思います。
その思い出について書いた記事はこちら。
小田巻蒸しを通して、私の中では療育センターで過ごした日々が強く残っているのだと思います。
そして、母が私に与えてくれた愛情がずっと私の人生を支えているのだと思います。
もうひとつの思い出
私には、もうひとつ聞いてもらいたい思い出の食があります。
それは、「かさい食堂」の巻き寿司です。
その巻き寿司に初めて出会ったのは、まだこの食堂に嫁ぐ前のことでした。
初めて食べた時はそれはそれは衝撃で、「こんなおいしい巻き寿司食べたことない」と、心の底から思ったことを今でも覚えています。
今からもう17年ほど前のことです。
当時私は、言語聴覚士としてかさい食堂から比較的近い病院で働いていました。
その頃、まだ車の免許のなかった私はバス通勤をしていました。
土曜日は午前中の半日勤務で昼までで帰れたのですが、勤務の終わる時間とバスの時間がうまく合わず時間を潰す必要がありました。
そんなこともあって、いつしか土曜日のランチはかさい食堂に行くようになったのです。
主人とはここで知り合い、いつしか仲良くなっていきました。
バレンタインデーのある日、病院の売店で買ったロッテの板チョコを主人に渡しました。
その1ヶ月後、ホワイトデーのお返しと3月13日の私の誕生日プレゼントを兼ねてくれたのが、巻き寿司だったのです。
帰り際のお店の玄関で、当時両方杖をついていて手に物を持つことができなかった私のコートのポケットに入れてくれたのでした。
なんて優しい人なんだろう。この時、本当にそう思いました。
このかさい食堂の巻き寿司を、「こんなおいしい巻き寿司食べたことない」と感じたのは、きっとこのエピソードも関係しているのだろうと思います。
食のストーリーを語る
かさい食堂の巻き寿司を嚥下食にして、どんな人にも食べてもらいたい。
私が「おいしい」と感じたこの味を多くの人に届けたい。
人が食べ物を「おいしい」と感じる要素にはもちろん「味」そのものが関係しているとは思います。
一方で、その食べ物に隠された様々なストーリーを知ることで、人は単なる「味」という粋を超えた感覚を覚えるように思うのです。
なぜ、私がかさい食堂の巻き寿司をおいしいと感じるのか。
なぜ、それを嚥下食にしたのか。
この世の中に嚥下食の巻き寿司を作る方はたくさんおられるし、レシピも色々あると思います。
でも、このかさい食堂の嚥下食の巻き寿司のストーリーは私にしか語れない。
だから、大切にしたいのです。
そんな巻き寿司が、誰かの思い出の味になったらいいな。
誰かの人生を支える味の一つになったらいいな。
巻き寿司に込めた思いです。