お揃いのスニーカー
私と違って、夫の友達付き合いは、古くて深い。地元の幼なじみや高校時代の同級生、上京してからの学生時代の友達など、大人になってからもそこそこの頻度の高さで会っていて、そのそれぞれと横の交流ができたりもしている。
以前は、よく我が家に集まって食事会だ飲み会だとやっていたし、タイに渡ってからは、一時帰国の折りに、皆でお店に集まったりしていた。
そんなこと夢のまた夢のようになってしまった今、せっかく帰国したのに、思うようにみんなと会えていない。メンバー全員では集まれないけれども、最小単位で順番に、と私たち夫婦と相手夫婦、つまりは、夫婦2組で会うことになった。
約束していた日、我が家での食事会の予定を変更して、公園にピクニックに行った。梅雨の合間の晴れを楽しもうということだ。
4人とも同じ歳。同級生同士で結婚した夫婦と夫は高校の同級生だ。
どちらの夫婦にも子供がいない。あまり深くは聞いてないけれど、友達夫婦は、子供を望んでいるけれど子供がいない、そして、子供を望むことをやめて、2人で生きていこうとしている2人(なのだ、おそらく)。
こちらは、片方だけが子供を望んでいて、片方は望んでいなくて、結果子供がいない夫婦だ。
向こうの旦那さんは無口で口下手なタイプだ。以前、私たちが一時帰国をしたとき、いつものメンバー8人くらいで食事をしたことがあった。彼ら夫婦がモルディブに行ったときの動画を見せてもらったのだが、2人で延々と卓球をしているシーンがあって、その場にいたメンバー総勢で、つっこみを入れたものだった。「せっかくモルディブに行って黙々と卓球?美しい海をみなよ」と。
その食事会で、子連れメンバーがみんなが帰ったあと、子なし同士の会話になった。
「2人のとき、どう過ごしてる?うちは、だって、このひとだよ?卓球でもしないと、もたなくない?」という妻側の発言に対して、失礼ながら共感して、笑ってしまった。それに、彼女はその退屈さを愛しているのもわかったから。
公園でレジャーシートにあがったあと、ふと見ると、友人夫婦のスニーカーが色違いなことに気づいた。そういえばうちはうちで、同じブランドの型違いのスニーカーを履いていた。
いわゆる、ラブラブとかそういう熱量の2人ではなく、植物のような空気感で寄り添うカップルが、それぞれなんとなくお揃いのアイテムを身につけている。(ひょっとして、あちらの夫婦は人に見せないところで、とんでもない熱量をもったカップルかもしれないけど、見える限りでは。)
我が家は夫が先に買ったスニーカーを見て、履きやすさと見た目が気に入って私も、となったし。きっと彼らも、お揃いで♡という勢いよりは、どちらかが選んだのをみて、じゃ私も、とか、俺も、となったような気がする。
周りが子供中心の生活をし始めて、昔より合う頻度が減ってきた。コロナのこともあって、ますます2人で過ごす時間が増えて、きっと彼らも私たちと似たような時間を過ごしているのだろうな、と思う。
話題は、友人夫婦が最近ハマっているキャンプや、老後資金の話、病気と健康、将来の親の介護問題のことだった。
子供がいるおうちは、週末は、公園遊びや、習い事の付き添いに忙しくしている。と、いうことを知ったのは、帰国してから、姉と姪の公園遊びに付き添ったりしたからだ。休日の公園には、ずいぶんと多くの親子がいるもんだと驚いた。
そういえば、タイでも奥様たちは、子供の習い事の送り迎えに忙しくしてたなぁ。
すでに老後みたいな時間の過ごし方をしている我々のような子供のいない夫婦と、子育て真っ只中の彼らと、また人生が交わるのはいつだろうか。
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