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駐妻の自己紹介

今現在、私は、夫の海外駐在に帯同する妻、いわゆる「駐妻」という立場にいる。思ったよりも窮屈な立場ではない。
イメージしていたのは、旦那様の役職に連動したヒエラルキーやマウンティングの世界。ドラマや漫画の世界で目にしたような世界だ。

ところが、そんなもの全然なかった。
気さくで、カジュアルで、感じがよくて、気遣いがあって。
なんだか拍子抜けした感もあるし、「むしろドロドロしていても構わない。退屈で平凡な私の人生に、小ネタを!」と思わなくもなかったが
それは、まあ、そうでなかったからこそ思える余裕なのだろう。

唯一、戸惑ったのが自己紹介だ。
まず、タイに引っ越して1ヶ月くらいたったころに、「強制ではないけれど奥様会のグループLINEがありまして、そちらに招待してもいいですか?」といったお知らせをいただく。

「強制ではない」という名の強制は、日本社会でよくある話だと思う。
私は、「あまりべったりした付き合いは面倒だなあ」と思ってしまう方なのだが、定期的に集まる、というよりは、新しい人が来た時の歓迎会、本帰国が決まった人がいたら送別会、という感じで数ヶ月に1度の不定期の集まりだとのこと。
そのくらいのペースだったらいいかも。
断るほどの理由もないので、参加してみることにした。

参加すると、LINEグループ上に続々と自己紹介が流れてくる。
「1歳の子と3歳の子がおります。どうぞよろしくお願いいたします」
「まもなく2歳になる娘がおります。みなさまとお会いできる日を楽しみにしています!」
「8ヶ月の娘がおります。お騒がせすることもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」
とこんな感じのメッセージが、適度な絵文字とともに、送られている。

どうやら、この奥様会のメンバーで子供がいないのは私だけみたい。

奥様会のメンバーは、30代前半〜40代後半くらいの年齢層で、30代前半くらいの割合が多い。こちらで妊娠&出産して子育てをしている方も多い。
ある程度キャリアを築いで、帯同を機に退職。キャリアのブランク期間は妊娠、出産、子育てにあてて、子供が3歳くらいになったころに本帰国し、子供を幼稚園に入れて、自分は仕事に復帰する。

タイは、子育てしやすい環境と思う。
安価で、シッターさんやお手伝いさんを雇えるし、1歳半から幼稚園に入れることも可能だそう。託児所や子供の遊び場なども多く、幼児向けの習い事も豊富。
それに、タイ人は基本的に子供に優しい。電車では、小さな子供や子連れのお母さんは真っ先に席を譲られる。
異文化におけるギャップは多少なりともあると思うけれど、日本の子育てほど、過酷な環境ではなさそうだ。

キャリアを築いて、ブランク期間は有効に子育てにあて、また社会に戻っていく。帰国して元の職場に戻る人もいたし、帰国後のキャリアのために子育てをしながら自身の勉強をしている人もいる。
この奥様方たち、本当に聡明で堅実なのだ。自分たちが着飾ったり、買い物したりは、ソコソコにして子育てや教育にお金とエネルギーを注いでいる。
その子供たちは将来稼ぐ人になるんだろうなあ。

ライフプランがすごくうまくいっている感じだ。その裏にある苦労や努力はもちろんあるのだろうが。
こんな風に、絵に書いたようにうまくいっている人生があるんだなあ、と眩しくて仕方ない。

話を自己紹介に戻して。
子供の人数や年齢は、このグループの自己紹介ではある意味、必要な情報ではあると思う。
歓迎会や何やらの会に、子連れで来る可能性の高さを推し量ったり、子供の学校が一緒になる可能性などを推し量ったり出来る。
大人になってから、自分の意思や趣向に関わらず入ることになったコミュニティーでは、子供、って共通点としてわかりやすい情報かもしれない。

さて、子供がいない私は何を書こう。

期間限定のコミュニティでの自己紹介。ささいなこと、とわかっているのに、毎回、ほんの少し、胸の奥がチクンとする。

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