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ヨーロッパのクリーンエネルギー化による惨事(CFACTの記事)
写真出展:mcmurryjulieによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/mcmurryjulie-2375405/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=2469391
2021年10月9日にCFACTは、ヨーロッパのクリーンエネルギー化に伴う苦境についての記事を発表した。内容は、クリーンエネルギー推進に伴うヨーロッパの電力不安定化や電気料金高騰などがもたらす損害、世界の化石燃料の需要などについて概観し、環境政策のあり方を問うものである。最近ヨーロッパの天然ガス価格の高騰がニュースになっているが、これは単なるエネルギー需給だけの問題ではなく、環境政策が大きく寄与していることがわかる内容になっていることから、その概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Europe’s delusional ‘green energy’ disasters)
https://www.cfact.org/2021/10/09/europes-delusional-green-energy-disasters/
1.本記事の内容について
・ヨーロッパはパリ協定に基づいて風力と太陽光発電に多額の補助金を拠出して電力を賄ってきたが、その結果信頼できないエネルギーにより電力が不安定化し、かえって化石燃料に頼らざるを得なくなっている。イギリスとドイツはフラッキングを禁止したため、ロシアの天然ガスに頼りきりになっており、オランダは最大のガス田を閉鎖してしまっている。
・特にドイツの変化は目覚ましく、2013年にはどの国よりも太陽光発電を拡大してきたが、その結果停電は頻発するようになった。2008年までは停電がほとんどなかったが、2012年には1000件、2013年には2500件の停電が発生するようになった。
・イギリスもクリーンエネルギー化により電力不足に陥っている。例えば2020年現在で風力発電が24%を占めているがバックアップ電力は整備されておらず、今年の夏に風力発電量が2%に低下した際には停電になってしまった。過去数十年において、イギリスとヨーロッパ諸国は数百もの石炭発電所を閉鎖してきており、イギリスには2基しか残っておらず、スペインは昨年の夏だけで国内の半分の石炭発電所を閉鎖してしまった。
・昨年度ヨーロッパの天然ガス価格が5倍になったが、これは風力発電が要因となる一方、石炭発電所の閉鎖は3倍に押し上げる要因になった。排出権取引制度により化石燃料の価格は高騰し続け、電気料金が上昇し、冬場の暖房料金の高騰が見込まれる。例えばイギリスの9月の電気料金は490ドル/mwhとなっており、2010年から2020年にかけて700%も上昇している。このことに伴い、イギリスは電気料金高騰に伴い鉄鋼の生産を停止するに至り、ヨーロッパでは政府の支援を求める有様である。
・化石燃料の需要はアジアや南アメリカで顕著となっている。中国はアルミ精錬所に優先的に電力を割り当てずを得なくなっているものの、アルミ価格はここ13年で最高値を更新した。またオーストラリアからの石炭を禁輸した結果、アメリカから石炭を輸入することになった。天然ガス不足に伴い石油での発電も盛んになっており、ゴールドマンサックスの試算では年末に1バレル90ドルに達する可能性があるとしている。
・アメリカのキーストーンパイプラインの閉鎖や北極での掘削禁止などにより原油不足拍車がかかっており、原油価格は1バレル80ドルに達し、OPECは生産を増強しなければ価格が急騰すると警告している。結果としてここ1年間で、アメリカの電気料金は5.2%、ガス料金は21.1%増加しており、一部識者はこの冬にインフレによるコスト上昇が2倍になりえるとしている。その他、天然資源採掘の承認件数の激減、3.5兆ドル予算案による石油およびガス料金への増税など、エネルギー価格を高騰させる要因が満載である。
・世界で数千億ドルもの補助金が風力及び太陽光発電に投入されているが、世界の再生可能エネルギー統計報告書2021年版によると、2009年から2019年にかけての化石燃料の使用率はたった0.1%しか下落していない。化石燃料は人類にとって必要不可欠であり、ヨーロッパの状況は、世界の未来を指し示していると言えよう。
2.本記事読後の感想
再生可能エネルギーの推進者は、いつも自分に都合のいいことしか言わないということが良く分かるだろう。ヨーロッパのクリーンエネルギー化を礼賛しているが、実態はお寒いもので、ただ単に電力が不安定化して電気料金が高騰し、国民の生活が苦しくなっているだけである。経済的にも損失が大きく、自国でのモノづくりができなくなるだけでなく、企業が誰も投資したがらない地域になりつつある。
今日のヨーロッパの状況は、明日の日本の姿である。おかしな環境大臣が交替したまではいいものの、後任者もかなり怪しい人物であり、ますますクリーンエネルギー推進に拍車がかからないか心配である。経済産業大臣は安全な原発を稼働させると表明していることから、ある程度政権内で調整が図れることが期待されるが、経済安全保障上の意味を理解している閣僚が多いようには見受けられない。
電気料金や天然資源の確保は日本にとって死活問題であり、環境問題と言う観点だけで語ってはならない。今度の総選挙では環境問題も一つの争点になると考えられるが、レジ袋有料化撤回などと言った安っぽい論点にごまかされるのではなく、本質的な議論により環境政策を論じていただきたいものである。
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