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トルコの西側社会への傾斜について(RUSIの記事)

写真出展:www_slon_picsによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/www_slon_pics-5203613/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3036191

 英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が2021年7月1日に、トルコの西側社会への傾斜についての記事を発表した。エルドアン大統領による中東外交の影響について論じたものであり、中東の行く末を占ううえで参考になると思われることから、本記事の概要についてご紹介させていただく。

↓リンク先(What Erdogan’s Tilt to the West Means for Russia–Turkey Relations)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/what-erdogan-tilt-west-means-russia-turkey-relations

1.RUSIの記事について
 ・バイデン大統領とトルコのエルドアン大統領が、NATO会合の機会に合わせて会談した。本会談の主な狙いは、S-400 「トリウームフ」超長距離地対空ミサイルシステムの購入に伴い、トランプ政権が課した制裁を回避ことである。
・ここ数か月間、トルコ政府は会談のため、アメリカへの融和策を打ち出してきた。反西洋的な発言を控え、ロシアとウクライナの緊張関係について仲介することも提案し、アメリカのアフガニスタン撤退に伴うカブール空港の護衛も申し出た。更にメディアを使って、S-400をインジルリク空軍基地(米土共同使用)で管理する交渉をしているという噂を流した。但し、これら一連の提案は、アメリカと一定の友好関係及びNATOの枠組みを維持しつつ、国益が一致しない場合にはロシアと組むという「いい所取り」を志向したものである。
 ・事実、会談では何の成果もなかった。トルコはS-400をいかに活用するのかについて交渉しようとしていたが、アメリカはいかに廃棄させるかを考えており、交渉条件が異なっていたのである。ただ、トルコはロシアとの関係も維持したいと考えていることは明白である。トルコはNATOの2021年の共同訓練で先導役を果たしたが、先日のベラルーシ政府による不当なラマン・プラタセヴィチ氏の拘束に関するNATOの共同声明を打ち消すような発言もしている。
 ・トルコとロシアの関係は、驚くほど強固である。2020年には、シリア、リビア、ナゴルノ-カラバフで対立したものの、いずれも妥協が成立している。このことを反映してか、バイデン-プーチンサミットでも、トルコの西側社会への傾斜について懸念は見えなかった。トルコ政府もポスト西洋の世界を志向していることや、ロシア人観光客が経済に恩恵をもたらしていることを鑑みると、短期的にトルコとロシアの関係が悪化することは考えにくい。バイデン大統領も会談で特に動じた所を見せていないことから、このことを十分理解しているように見える。従って、この戦略がうまくいくか否かは不透明である。


2.本記事についての感想
 日本から見ると、トルコは複雑に思える。NATOに加盟したかと思えば、ロシアとよしみを通じるといった関係がある。また中東にも手を出しており、時に覇権主義的な動きを見せる。悪く言えば一貫性がないというわけであるが、国益を維持するために懸命に行動しているとも言えるわけで、これからもトルコから目を離すわけにはいかないだろう。また、表面的な情報に惑わされないことも必要だろう。中東は予測不可能な地域であり、専門家であっても全くもってその予測が当たらない。日本の報道は海外の後追いやレベルの低い決めつけ的な言説が流布しているため、当てにしてはならない。やはりヨーロッパやアメリカの報道にはかなわないのであり、適切な判断のためには海外の情報にアンテナを張っておく必要がある。
 またあまり論じられていないが、トルコは水資源の関係でも動きを見せている。トルコはチグリス、ユーフラテス川の源流域にあり、水資源確保に動き出している。もし大規模なダムを建設するなどすれば、下流域にある中東諸国にも多大な影響がある。もっとも、このことが大きな影響を与えることはトルコも認識しており、極端な動きは見せないが、こういった観点からも中東への影響が懸念されるということを覚えておく必要がある。経済や外交で行き詰まれば、資源でテコ入れする可能性もある。多くの不安定要因を抱えていることを認識しておこう。

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