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お坊さんの決り事。第4条「悟ってもないのに悟った言うたらあかん!」

「律」のエピソードをラノベにしてみました。第4条にも毒親登場。仏陀はスパコンです。
話の筋はそのままですが、大幅に脚色したり省略したりした超訳『根本説一切有部毘奈耶』です。漢訳・国訳・チベット訳を参照しました。
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インドはヴァイシャーリーのマルカタフラダティーレ池側クーターガーラシャーラーに、佛がおわしたときのことでございます。

500人の漁師がヴァッグムダー河のほとりで、暮らしていました。
ある日漁をしていると、人の頭・象の頭・馬の頭・ラクダの頭・ロバの頭・牛の頭・サルの頭・ライオンの頭・虎の頭・ヒョウの頭・熊の頭・ヒグマの頭・猫の頭・鹿の頭・水牛の頭・猪の頭・犬の頭・魚の頭という18の頭に36の眼を持ったマカラという魚の怪物が獲れました。

佛「ふむ・・・マカラ魚ね・・・なるほど・・・よっしゃ、君ら、ちょっと行くで」
弟子達「へーい」

そうして、佛は弟子たちを連れて500人の漁師のところへ行きました。
やってきた佛たちを見て、人々は口々に言いました。

非仏教徒「おいおい、見てみろよ。ゴータマとかいう出家者は喜び・楽しみを断ったって聞いたけどさぁ、あいつもこのマカラ魚を見て楽しみに来たんじゃねーの」
仏教徒「そんなことないわ!佛は喜び・楽しみをお断ちになっているのよ。こうしていらっしゃったのは、きっとこのマカラ魚に何か用事があるからにちがいないわ!」

佛が500人の漁師に言いました。

佛「漁師さん。魚獲って殺そうとしてはりますけど、今もし死んだら、えらいとこに生まれ変わりまっせ」
漁師1「え!?どうしらいいんですか!?」
佛「今獲った魚を放してあげたらええんですわ」
漁師2「わかりました!」

こうして漁師は獲った魚を解き放ち、佛は神通力で魚を川へ移動させました。
しかし、マカラ魚だけは、そのまま残り、前世の記憶を頼りにして、佛に人間の言葉で話かけました。

マカラ魚「あ、どうも」
佛「君、カピラやな?」
マカラ魚(カピラ)「そうです。私がカピラです」
佛「君、昔、悪いカルマ積んだやろ?」
マカラ魚(カピラ)「はい、悪いカルマを積みました」
佛「悪いカルマは苦しみの結果をもたらすって知ってる?」
マカラ魚(カピラ)「はい、知ってます」
佛「その悪いカルマの結果は、カルマを積んだ者自身が受けることになるって知ってる?」
マカラ魚(カピラ)「今まさに、そのカルマの結果を受けています」
佛「誰が君にそんな悪いカルマを積ませるようなことをしたんや?」
マカラ魚(カピラ)「僕の母親です」
佛「その母親はどこに生まれ変わったんや?」
マカラ魚(カピラ)「地獄です」
佛「君はどこに生まれ変わったんや?」
マカラ魚(カピラ)「今こうして、畜生の世界に生まれ変わりました」
佛「君、ここで死んだら次はどこに生まれ変わることになると思う?」
マカラ魚(カピラ)「たぶん、地獄です・・・(シクシク)」
佛「わしにはどうにもでけへんねんけどなぁ・・・かわいそうやなぁ・・・よっしゃ、ええ話したるから、善い心をおこして、畜生から脱出して、天上に生まれ変わるのを目指すんやで!」
マカラ魚(カピラ)「ありがとうございます!!説法お願いします!」
佛「ほな、いくで・・・諸々の作られたものは無常で変わりゆくものなんや。諸々の存在するものは何一つ独立自足しては存在できへん。そういうのんから脱した安らかな境地が涅槃っちゅうこっちゃ。この3つを難しい言葉で三法印って言うねん。どや?」
マカラ魚(カピラ)「最高でした!ありがとうございました!!」

このやり取りを聴いていた弟子たちは、驚いて口々に言いました。

弟子1「え!?魚の怪物が人間の言葉をしゃべってるよ・・・」
弟子2「なんでなんで!?しかもカルマの話してたよ!?」
弟子3「なんでそんなことがありえるの!?」
弟子4「佛になんでか聞きたいけどさぁ・・・」
弟子5「うん、でも、恐いよね・・・」
弟子6「畏れ多すぎるよね・・・」
弟子7「そうだ!困ったときのアーナンダさんだよ!」
弟子8「アーナンダさん、佛の側近だから頼めば聞いてくれるよ!」
弟子達「アーナンダさん、なんでマカラ魚が人間の言葉でカルマの話してたのか、佛に聞いてくれません?」
アーナンダ「ちょうどそこに佛がいらっしゃるのですから、自分で聞いていたらよいではないですか」
弟子達「いや・・・佛に直接聞くのは畏れ多すぎて・・・アーナンダさん、お願いします!」
アーナンダ「仕方ありませんね・・・」

アーナンダ「師匠」
佛「どないしたん?」
アーナンダ「どうしてマカラ魚が人間の言葉で師匠とカルマの話をしていたのですか?」
佛「それな。マカラ魚の前世の話聞きたい?」
アーナンダ「聞きたいです。弟子達もみんなそう言っております」
佛「よっしゃ。おーい、君ら、マカラ魚の話するさかい、耳の穴かっぽじって、よう聞くんやで!」
弟子達「へーい」

こうして佛は、カピラという名前のマカラ魚の前世の話を始めました。

佛「人間の寿命が2万歳の頃、釈迦佛の先代の迦葉佛という佛が、バラナシのリシヴァダナ・マリガヴァーダにおわした時のことや・・・。

カピラシャルマンという名前のバラモンがいました。カピラシャルマンは、バラモン教の4大聖典であるリグ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダやその他の学問に通暁し、論争すれば負け知らずでした。カピラシャルマンには、子どもがいました。その子は生まれた時から髪の毛がカピラ色(黄赤色)だったためにカピラと名付けられました。カピラもバラモン教の4大聖典やその他の学問に通暁し、論争にも長け、その実力は父親を超えるに至りました。
父親のカピラシャルマンは息子のカピラに弟子達を任せて独り遊行に入り、ある時、迦葉佛がいらっしゃるバラナシのリシヴァダナ・マリガヴァーダを訪れ、そこにいた迦葉佛の弟子に言いました。

カピラシャルマン「あなたが唱えている言葉の意味はどういうものなのでしょうか?」
迦葉佛の弟子「その質問は、そんな風に聞いてはいけません。その質問をそんな風に聞くならば、意味は完全に分からないでしょう。このように、その質問はこんな風に聞くべきです。その質問をこんな風に聞くならば、この言葉の意味はこれであると完全に分かるでしょう」
カピラシャルマン「ふむ・・・(私の質問では取り付く島もない。この人と議論なんてできないな)」

カピラシャルマンはこう思って、迦葉佛の弟子を敬うようになりました。
その後、カピラシャルマンは病気になり、死の床で息子のカピラに言いました。

カピラシャルマン「この天下において、議論でお前に並ぶ者はいないだろう。ただし、迦葉佛の弟子は別だ。彼らの教えは深甚広大で素晴らしく、俗人では到底敵わず、世俗を離れた者にとっても底無しに深い」
カピラ「父さん・・・」

父親の言った通り、カピラは論争で負けなしでした。
あるとき、母親が言いました。

母「カピラちゃん、色んな論客を論破してきたの?」
カピラ「はい。迦葉佛の弟子以外は論破してきました」
母「あなたの父親は迦葉佛の弟子の僕になってしまったのよ。あなたもそうなってしまうのなんてイヤよ!・・・すぐに行って迦葉佛の弟子を論破してくるのよ!」
カピラ「う、うん・・・(これも親孝行のためだ!)」

カピラは親孝行な性分だったので、母親の言うことに反論することなく、迦葉佛の弟子のいるところに行って言いました。

カピラ「迦葉佛のお弟子さんは何人いるのですか?」
迦葉佛の弟子「そうですね。2万人以上いますよ」
カピラ「迦葉佛が説かれた経典などはどのようなものなのでしょうか?」
迦葉佛の弟子「大きく分けて3つあります。いわゆる経・律・論の三蔵です」
カピラ「在家の者にもその経典をお聞きかせいただけるのでしょうか?」
迦葉佛の弟子「三蔵のうち、経と論は在家の方にもお聞かせできます。しかし、律は出家者の儀軌ですので、お聞かせできません」
カピラ「少しで結構ですので、迦葉佛の教えをお聞かせいただけませんか?」
迦葉佛の弟子「そうですね・・・(このバラモンは私の力量を量ろうとしているのか、それとも本当に教えがどういうものか知りたくて質問しているのか、どちらか試してみよう)」
こう思った迦葉佛の弟子は詩を唱えました。
迦葉佛の弟子「<海は何処へ遡り、道は何処へ遡り、この世の苦楽は何処へか。そのすべては寂滅す>・・・どうですか?どういう意味かお分かりになります?」
カピラ「なるほど・・・(げっ!!むっずー!!意味分かんねー!!ヴェーダの知識じゃ歯が立たねーわ。何も言い返せない・・・キョロキョロ・・・誰も見てないよな・・・もし誰かに見られてたら、私が今まさに論破されて、完全に議論に負けたって判断されちゃうよ)・・・こほん。いやー、この詩は広くて深い教えですねぇ(汗)。あなたはバラナシに行かねばなりませんし、私もリシヴァダナ・マリガヴァーダに行かねばなりませんから、今すぐにこの詩の意味について意見交換することはできないですね。お互い行かねばならないところに行った後に意見交換しても問題ないでしょう(ヒヤヒヤ)」
迦葉佛の弟子「それもそうですね・・・(むぅ、うまくかわしたな・・・)」
カピラ「ではまた!(よし!うまくかわせた!)」

こうしてカピラはリシヴァダナ・マリガヴァーダに行き、迦葉佛の弟子たちが修行しているのを見て思いました。

カピラ「・・・(すばらしい人たちだなぁ。共苦の心もなく、来世のことも考えずに、敵意を持ってこの人たちと論争なんてできるわけないよ。家に帰ろ)」

こうしてカピラは迦葉佛の弟子たちを敬う心を抱いて家に帰ると、母親が言いました。

母「カピラちゃん!迦葉佛の弟子たちを論破してきた!?」
カピラ「あの、迦葉佛の弟子たちのところに行ってきたんだけどね・・・これこれこうだったんだ」
母「そうなの!?だったら、迦葉佛の教えを学びなさい!弟子にならないと教えてくれない内容を学んで来るのよ!そうすれば奴らを論破できるようになるわ!」
カピラ「え!?僕、バラモンなんだけど・・・」
母「いいのよ!学び終わったら還俗すればいいんだから!」
カピラ「う、うん・・・(これも親孝行のためだ!)」

こうしてカピラはリシヴァダナ・マリガヴァーダに行き、迦葉佛の弟子たちのもとで出家すると、めきめきと頭角を現し、とても優秀な出家者となり、その説法は多くの人々に喜びを与えました。
あるとき、カピラの母親が様子を見にリシヴァダナ・マリガヴァーダにやってきてカピラに言いました。

母「カピラちゃん!迦葉佛の弟子たちを論破できた!?」
カピラ「いやいや、迦葉佛の教えは理解できるようになったけど、他の弟子たちのように、その教えを体得できてないんだよ。だから、迦葉佛の弟子たちを論破なんてできないよ」
母「そうなの!?わかった。いいこと教えてあげる。あなたが迦葉佛の弟子たちと議論する時には、最初に正しい教えを話をして、そのあとにわざと迦葉佛の教えを謗ることを言うの。そうすると迦葉佛の弟子たちはあなたを非難してくるはずよ。そこがチャンス!そこであなたは相手の悪口を言いまくるの!そうすれば相手は黙っちゃうわ!言い返せなくなった方が負けなんだから、こうすればあなたが勝つわ!」
カピラ「う、うん・・・(これも親孝行のためだ!)じゃぁ、こんど議論大会があるから見に来てよ」
母「わかったわ!」

こうして議論大会の日、カピラは議論に臨みました。

カピラ「これこれについては・・・これこれである!」
迦葉佛の弟子「それは間違っている!そんな風に教えを謗れば死後にろくでもないところに生まれ変わるぞ!」
カピラ「なんてことを言うんだ!あなたの口はまるで、愚者の口・象の口・馬の口・ラクダの口・ロバの口・牛の口・サルの口・ライオンの口・虎の口・ヒョウの口・熊の口・ヒグマの口・猫の口・鹿の口・水牛の口・猪の口・犬の口・魚の口だ!」
迦葉佛の弟子「・・・」

こうしてカピラは母親の言う通り、悪口を言って相手を黙らせ、議論を終えました。

カピラ「母さん、これで満足した?」
母「カピラちゃん!よくやったわ!さぁ、一緒に帰りましょ!」
カピラ「母さん、それはできないよ。僕は、迦葉佛の教えをもっと学びたいんだよ」
母「何言っているの!?バラモンの教えを忘れたの!?親の言うことは聞かないといけないのよ!さぁ、一緒に帰るわよ!」
カピラ「はぁ・・・生まれ変わってもこんな母親のもとに生まれませんように。母親の悪知恵の通りに、迦葉佛の弟子たちの前で対論者に悪口を言ってしまった。その悪い行いのせいで、来世では必ず苦しみの報いを受けることになる・・・」
母「な、なにを言っているの・・・カピラちゃん!?いやぁー!!・・・迦葉佛の弟子がわたしの大事な息子を奪ったのよ!!・・・ぐはぁっ!!」

こうしてカピラの母親は血を吐いて死に、地獄に生まれ変わりました。
そしてカピラは死後、マカラ魚という18の頭と口を持つ怪物の魚として生まれ変わりました。

佛「・・・っちゅうのが、マカラ魚カピラの前世の話や」
弟子1「カピラはすごく優秀で、説法して大勢の人を喜ばせたのに、悪口を言っただけで魚の怪物に生まれ変わったのか・・・(ガクガク)」
弟子2「ってことは、俺たちは死んだ後、一体何に生まれ変わるんだ?・・・(ブルブル)」
と口々に言って、佛の弟子達は自分たちの来世のことを憂いました。
佛「あ、そうそう、これ言うとかなあかん。わし、カピラのカルマの結果について話したけど、君ら、我・世界・カルマの結果・佛の境地のことは考えたらあかんで。スパコン並のわしの演算能力やったら大丈夫やけど、君らの電卓並みの演算能力でこの4つのことを考えたら頭パンクしてまうからな」
弟子1「え?スパコン?」
弟子2「電卓?演算能力?」
佛「あーすまんすまん。こっちの話や。気にせんとって」

一方、マカラ魚のカピラは佛と話をしたことを思い返していました。

マカラ魚(カピラ)「あぁ、佛に説法してもらえてよかったなぁ。善い心をおこして、畜生から脱出して、天上に生まれ変わるのを目指せって言ってもらえたよ。もう他の生き物を殺して食べるのはやーめよ」

こうしてマカラ魚のカピラは食を断って飢え死にし、天界にマカラ天子として生まれ変わりました。

マカラ天子(カピラ)「はっ!・・・畜生界から天界に生まれ変わってる!・・・佛に説法してもらったおかげだよ・・・そうだ、佛に会いに行こう!」

こうしてマカラ天子カピラが佛に会いに行くと、佛のいらっしゃる場所が夜であったにもかかわらず、マカラ天子がまとう光で明るく輝きました。

マカラ天子(カピラ)「佛、その節は大変お世話になりました」
佛「カピラ、いらっしゃい。せっかくやし、ええ話したるわ。これこれは・・・っちゅうこっちゃ」
マカラ天子(カピラ)「おぉ!ありがとうございます!おかげで、「苦しみについての4つの聖なる真理」(四聖諦)、苦しみがあるという真理(苦諦)・苦しみには原因があるという真理(集諦)・苦しみを滅することができるという真理(滅諦)・苦しみを滅する方法についての真理(道諦)を直接に見ることができました。それで悟りの4ステージのうちの1st悟りステージ「聖者の流れ」(預流)に入ることができました!」

こうしてマカラ天子カピラは佛に挨拶して天界に帰って行きました。
翌朝、佛の弟子が佛に言いました。

弟子1「昨夜、師匠のいらっしゃる所が光で明るく輝いていましたが、もしかして、梵天や帝釈天や四天王たちがやってきていたのですか?」
佛「ん?あぁ、昨日の夜の話?あれは梵天とかとちゃうねん。あの、ほら、こないだ18の頭と口を持つ怪物のマカラ魚カピラに、わしが説法したの覚えてる?」
弟子1「はい。私たち皆でその様子を見ていました」
佛「そのマカラ魚のカピラが天界に生まれ変わってマカラ天子になったんよ。それで昨日の夜にわしのとこに来たから、また説法したんやけど、ほんだら、「苦しみについての4つの聖なる真理」(四聖諦)を直接見て1st悟りステージ「聖者の流れ」(預流)に入って天界に帰っていったっちゅうわけよ」
弟子1「え!?そんなことありえるんですか!?どんなカルマを積んだからマカラ魚から天界に生まれ変わったんですか!?どんなカルマを積んだから佛のもとで「苦しみについての4つの聖なる真理」(四聖諦)を直接見ることができたんですか!?」
佛「そうやなぁ・・・まず、カルマについて話しよか。カルマっちゅうんは心と言葉と身体の行為なわけやけど、個人が積んだカルマの結果は、全部自分に返ってくるんや。他の誰も身代わりにはならへんし、外界に結果が現れるわけでもない。自分の身体と心に結果が現れるんや。詩にしたら、<どれほど時間が経とうとも、積んだカルマは捨て去れぬ。来るべき時が来たならば、結果の全てを自ら受く>、っちゅう感じやな」
弟子1「なるほどー」
佛「マカラ魚カピラがわしの説法を聞いて生き物を食べへんようになったから、来世で天界に生まれ変わったやろ?これが来世で結果を受けるカルマ、順次生受業やな。人間の時のカピラが迦葉佛の優秀な弟子になって大勢の人に説法したから、来々世で天界に生まれ変わった時にわしのところに来て説法を聞いて「苦しみについての4つの聖なる真理」(四聖諦)っちゅうんを直接見ることができたやろ?、これが来々世で結果を受けるカルマ、順後次受業やな。よう覚えときや。純黒の業を為せば純黒の結果、純白の業を為せば純白の結果、黒白の雑業を為せば雑の結果を受けることになるねん。せやから、純黒と黒白のカルマから離れて、純白のカルマを積むようにせなあかんねんで。勤修せぇよ」
弟子達「へーい」

一方、500人の漁師たちが話し合っていました。

漁師346「おい、佛の話聞いたか?」
漁師214「聞いたよー」
漁師178「あのマカラ魚のカピラがなんでマカラ魚の怪物になったかって話だろ?」
漁師045「そう、それだよ。前世で人間だった時のカピラは迦葉佛の優秀な弟子になって大勢の人に説法して善行を積んでたのに、悪口言っただけでマカラ魚に生まれ変わったんだよな?」
漁師011「そうなんだよ・・・俺らさぁ、生き物殺しまくってんじゃん・・・」
漁師499「うん、やばい。死んだら一体何に生まれ変わるんだろ・・・」
漁師1~500「はぁ・・・(深いため息)」

この様子を佛の弟子シャーリープトラが見ていました。

シャーリープトラ「漁師さんたち、なんでそんな深刻な顔をしているんだい?」
漁師211「俺たち魚を殺しまくってるからさ・・・」
漁師376「・・・死んだらとんでもないところに生まれ変わるんだろうと思うと・・・(シクシク)」
漁師289「出家して、佛の弟子になって、修行したいけど・・・俺ら、卑しい身分の出身だから、それは無理・・・」
シャーリープトラ「そんなことないよ!佛の教えは、生まれや家柄や身分に関係なく開かれてるんだよ!詩にするとこうだ!<生まれや家柄・身分など、佛はそんなの問いはしない。これまでずっと為してきた、カルマが問われるだけなのさ>。だから、君たちが出家したいと思うんだったら、佛のところで出家できるんだよ!」
500人の漁師たち「出家したいです!」
シャーリープトラ「そうだ!佛のところへ行こう!」

こうして、500人の漁師たちは佛のもとで出家しました。
あるとき、佛は言いました。

佛「最近の飢饉はひどいなぁ・・・赤の他人に食べ物を布施してくれる人なんかおらんやろ・・・君ら、こんなところにおったら喰いつなげへんやろし、自分の家族やら友達やらがおるところにいって乞食しておいで」
弟子達「へーい」

こうして弟子達はそれぞれ自分の家族・友人のいるところへ行き、500人の元漁師弟子も自分たちが暮らしていた漁村に行きました。

元漁師弟子56「ねぇねぇ、俺たち出家したばかりじゃん。だからちょっとヤバいよね」
元漁師弟子299「うん?何が?」
元漁師弟子333「あれだろ?家族とか友達に説法してくれって言われたらヤバいってことだろ?」
元漁師弟子455「あぁ、そっか。俺たち、説法できるような知識も経験も何も無いんだ・・・」
元漁師弟子56「そうなんだよ。どうしよ・・・」
元漁師弟子123「そうだ!お互い褒め合えばいいんだよ!」
元漁師弟子56「どうやって?」
元漁師弟子123「こんな感じで、とりあえず説法で聞きかじった境地を得たって言うんだ。『こいつはすっげー優秀な弟子になったんだよ。こいつは、無常想、於無常苦想、於苦空想、於空無我想、厭離食想、於諸世間無愛樂想、過患想、斷除想、離欲想、滅想、死想、不淨想、青瘀想、膖脹想、膿流想、蟲食想、血塗想、離散想、白骨想、觀空想を得たんだよ。そしてあいつは、初靜慮、二靜慮、三靜慮、四靜慮を得たんだよ。そっちのやつは、慈、悲、喜、捨、空無邊處、識無邊處、無所有處、非想非非想處を得たんだよ。こっちのやつは四果、六神通、八解脱を得たんだよ』。って言ってお互いに褒めまくるんだよ!」
元漁師弟子478「え?・・・呪文にしか聞こえない・・・」
元漁師弟子56「何言ってんのか全く意味不明だけど・・・」
元漁師弟子265「でもさ、意味不明だから逆にすごい境地っぽく聞こえるよね」
元漁師弟子190「うん。なんかすげー聖者になったみたい」
元漁師弟子123「さぁ!みんなでやってみよー!」

こうして500人の元漁師弟子たちは親族や友人がやってきたら互いにこんな境地を得たのだと言って褒め合いました。

親族467「すごいね!あんたたちみんなそんな境地に達したのかい?」
元漁師弟子245「そうなんですよ。俺たちみんなそんな境地を得たんです」
親族247「いやー、ありがたいねぇ。飢饉で自分たちが食べていくのも大変だけど、そんなすごい聖者様たちにだったら、たくさんお布施しないとね・・・(お腹グルグル)」
親族328「そうだよ。私たちの食べ物をどんどん食べてくださいな・・・(お腹キュルル)」

こうして漁村の親族・友人たちは、自分たちの家族を食べさせる分すらも削って、500人の元漁師弟子たちに食べ物を布施しました。

三か月後の8月15日の新月の日、佛と弟子が皆集まって反省会をするためにやってきました。

アーナンダ「みなさん、この飢饉の中、乞食はできましたか?」
弟子1「いやー、かなり大変でした」
弟子2「私も、毎日喰うや喰わずの生活でした」
アーナンダ「やはりそうでしたか。みなさんの痩せて憔悴しきったお顔を見ていると、そのご苦労が偲ばれます」

そこに、血色がよく元気はつらつな様子の500人の元漁師弟子達がやってきました。

アーナンダ「みなさん、乞食はできましたか?」
元漁師弟子たち「はい。乞食して難なく食べ物を頂きました」
アーナンダ「この飢饉の中、家族を養うのもやっとの状況なのに、どのようにして難なく食べ物を頂けたのですか?」
元漁師弟子たち「それはですね。これこれの境地を得たといって互いに褒めまくったんですよ」
アーナンダ「みなさんがそのような境地を得たというのは本当のことなのですか?」
元漁師弟子たち「もちろん嘘ですよー」
弟子1「なんてこった!こんなひどい飢饉のなかで、食べ物を貪るために、これこれの境地を得たと言って嘘をついたのか!?・・・・・・(こいつぁ佛に報告だ!)」

弟子1「師匠!」
佛「ん?どないしたん?」
弟子1「実は、これこれこうでございますですよ!」
佛「ふむふむ・・・なにぃ!?ちょっとみんな集まれー」
弟子たち「へーい」
佛「元漁師弟子くんたち・・・君ら、これこれの境地を得たって嘘ついたん?」
元漁師弟子たち「・・・はい、やっちゃいました・・・」
佛「あぁ・・・やってもうたかぁ・・・それ、出家者のやることちゃうで、ほんま。世間には3種類の賊があるんや。街を襲って強盗・殺人・放火とかする奴らを第一大賊、サンガの薪・草・花・果実・竹・木を取って売って生活したり他人にあげたりする奴らを第二大賊、最後に、悟ってへんのに自分は悟ったと言う奴らを第三大賊っちゅうんや。これに比べたら第一・第二大賊なんてかわいいもんや。自分は悟ったって嘘言う奴は、極悪の賊や」

佛は500人の元漁師弟子たちを叱り終わってから、弟子たちに言いました。

佛「君ら、ええか。悟ってへんのに自分は悟った言うたらあかん!そんなことしたら追放や!」

こうして、悟ってもないのに悟ったと言ってはいけない、というお坊さんの決り事ができました。

--------------------------------------------------------------------------------------お坊さんの決り事は約250条あります。更新頻度は激低なので、ゴールできるか微妙ですが、よろしくお付き合いくださいませ。

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