既視感(déjà vu)
原田ひ香さんの『定食屋「雑」』(チラシ再利用ブックカバー記録その23)を読み始めている。
双葉社の単行本で。
この作家さんの本らしく、昼休みに一話読むのがちょうどいいくらいだけど、がまんできなくて昨日は家でも一話読んでしまった。
ただ、一話目を読み始めたときに、これ確実に読んだことがある――と思って不思議でならなかった。
見覚えのあるタイトル。
記憶にあるシチュエーション。
これ、3月の新刊本なのに、なぜ?
出てくるお料理の描写、話の展開も覚えている。
夢だとしたらすごい超常能力が備わっていることになる――。
いやいや、そんなわけない。
事実、二話目には覚えがなかった。
初出の雑誌も手に取ったことがない。
とすると、なぜ?
このひとの別の物語で、さりげなく登場していた店なんだろうか?――たとえそういうことはあっても、物語がかぶることはないだろう。
思い当たることがなく、首をかしげていたのだが、うちのひとに話したら、「どこかで読んだんじゃない?」とあっさり。
どこかで?
その可能性が高いんだけど――文庫本ならいざ知らず、単行本。それもつい先月刊行されたものとあっては……どこで?
どこで?
一話目だけ?
そう、一話目だけどこかで?
あらためて思いめぐらして、瞬間気づいた。
アンソロジーだ!
そうだ、5人の作家さんの短編をまとめた文庫本、『ほろよい読書』に入っていたんだ。
ああ、双葉文庫!
たしかめてみると、一話目の「コロッケ」は、単行本のタイトルそのままのタイトルがつけられていた。
超常現象でなかったことはちょっとだけ残念に思ったけれど、気になっていた謎が気持ちよく解けて、満足した。
ああ、よかった。
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