【画像あり】3秒で描くことを意識すると絵が変わる
過去のバラエティー番組で、
勉強が得意な芸人とそうじゃない芸人の
<授業中のノートの取り方の違い>
を紹介したものがありました。
◎そうじゃない方の芸人は
先生の板書をせっせと丁寧に
ノートに書き写すことに夢中になる。
→ノートに書き写すことが目的になり、
内容が頭に入っていなかった。
◎一方、勉強が得意な芸人は、
先生の話を聞くことに集中し、
ノートには気になったことや、
先生が口にしたことを簡単にメモするだけ。
→話が記憶に残り、点数も良かった。
この比較、とても面白いと思いました。
そして、
<絵の描き方も同じだなあ>
とつくづく思ったんです。
* * * *
僕は、絵の描き方、についても
個人的に研究を続けてきました。
映画を作るための<絵コンテ>ですね。
そして特に、
「どうやったらより早く描けるか」
に注目してきました。
撮影現場での一分一秒はとんでもなく大事。
その場でサッと描いて指示を出すために、
1秒でも早く描け、
1秒でも早く伝わることを意識してきました。
冒頭のバラエティー番組の例で、
授業の内容が頭に入ってなかった芸人は、
先生の板書をせっせと「書き写して」いました。
きれいに書くこと自体が目的になっていた。
これは、絵の描き方にも言えます。
絵が描けない、苦手な方は、
目の前のものを「模写」しようとします。
目に入る順番に、丁寧に描き写そうとする。
その結果、思うように模写ができず、
「自分は絵が描けない」
「センスがない」
と考えるようになります。
これはまさに、
「描き写すことが目的」になっているんです。
★絵を描くときに最初にすべきは、
まず、じっくり対象物を観察すること。
冒頭の勉強が得意な芸人が、
先生の話をじっくり聞くことに集中したように。
これ、ピンとこない方もいるかもしれないので、
もう少し具体的に掘り下げます。
* * * *
僕は今、絵や絵コンテを描くことが
仕事の一部になっています。
例えば、
◎連載の原稿を補足するために、
イラストを何点か添える。
◎撮影の内容を共有するため、
カメラマンに見せる絵コンテを描く。
◎お客さんに提案するために、
撮りたい内容をわかりやすく絵にする。
ときには、
映画の中で使う絵を描いて欲しい、
なんて依頼もいただきます。
また、
自著のイラストも一点一点描いてます。
内容をわかりやすく伝えるために。
つまり、
絵を描くときというのは、
たいてい何かしら目的があるんです。
となると、
「何があればその目的が果たせるのか」
を考えるのがポイントです。
例を挙げてみます。
◎例「牛と馬を描く」
みなさんの頭の中に何が浮かぶでしょうか。
「色が違う」と考えるかもしれません。
・牛=白と黒の模様
・馬=茶色
カラークレヨンで描けと言われたらならいけますね。
色の部分だけ描けば、ひょっとしたら
「牛だ」と伝わるかもしれない。
でも、黒ペンだけで描くなら、
「色」以外のことを考えなければいけません。
馬と牛を黒ペンで描くとなると、
形状の違いを観察します。
★ここで大事なポイントです。
牛と馬の形状の違いはたくさんあります。
その中でも、違いが最も大きな部分を見つけるのです。
・足のひづめの形状が違う
→でも違いが小さい!
・目の形が違う
→でも違いが小さい!
・体の大きさが違う
→でもどちらも四角い!
・尻尾の形が違う
→確かに。でも違いが弱い!
・頭の形が違う
→うん、これはいけるかも。
牛にはツノがあり、馬はない。
ただ、馬がシェパードとかの犬にも見える。
牛はいいけど、馬が怪しい。
馬だけ方向を変えてみてはどうか。
これはこれで完成でしょうか。
でもさらにもっと「牛!馬!」
とわかるポイントはないでしょうか。
僕なら、「首の付け根」を選びます。
牛は背中からまっすぐ首筋が伸びている。
一方で、馬はかなり曲がる。
この一連の流れが、
「絵の描き方の肝」なんです。
ただ対象を描き写すのではなく、
「何を描けばそう見えるのか」を
見つけ出すために観察する。
よく、
「馬を描いても猫だと言われる」
みたいな発言がありますよね。
これ、絵がうまい・下手の前に、
観察ポイントを間違えているだけの可能性も高い。
* * * *
僕はだいたい、
3秒であたりをつける、と考えています。
3秒で描くためには、
描くポイントを徹底してしぼらないといけない。
だから絵はシンプルになり、
それで十分伝わる。
絵コンテなどは、
ここで終わることがほとんどです。
絵コンテの例に移ります。
例1)1対2の関係
左のような配置を最初3秒で描きます。
・・・なんか、弱い、と考える。
そこで、感情をグッと引き立てるため、
右のように一人の顔を手前に持ってくる
随分と印象が変わりますよね。
例2)敵対する二人
まず、左のように
シンプルに二人を向かい合わせます。
・・・全然、緊張感が伝わってこない。
そこで、構図を大きく変え、
右のように手前にドン、と足を持ってくる。
いかがでしょうか。
例1も例2も、
「左の絵」だけ見せられたら
「上手!」とは思わないはず。
しかし、それぞれ「右の絵」は、
そこそこ感じるものがあるのではないでしょうか。
まあ、「シルエットをつける」という
テクニックは使ってますが、
かなりシンプルな絵であることに変わりはありません。
多くの場合、右の絵のような
最終的な状態のものが、
多くの人の目に触れることになります。
すると、多くの人が言います。
「その描き方を教えて!」と。
ぜひ、
「そこに至る前でにいくつかステップがある」
ということを理解して欲しい。
文章を書くときだって、一度も直しもなく
一発で書き上げられるわけがない、
そう思いませんか?
絵を描くときも同じ。
考えて描いてみて、少し直して。
やっぱりゼロから描き直して。
そうやって、頭の中のゴールに近づけていく。
僕の絵の描き方をまとめるとこうなります。
考える
3秒でさっと描く
考える
【さっと仕上げる
※これもできれば3秒で
シンプルな絵を描くと、
「そんなのは自分が描きたい絵じゃない」
「そんなのは絵とは言えない」
といった反論をもらうこともあります。
お好きにすればいいとは思うのですが、
★絵が苦手な人ほど、
妙に難しいハードルを用意する
という傾向も感じます。
「絵はこうじゃなきゃいけない」
「上手な絵じゃないと描いちゃいけない」
「上手な絵とはここまでのレベルである」
などなど・・・。
たいていこれらは、
「すげー!」と言われたい、
という隠れた願望があるんじゃないか。
そうじゃなく、
「なるほど」と言われることを
目指してみてはどうでしょうか。
つまり、
絵を描く目的を、
「美しい絵を描く」ではなく、
「伝われば十分」に下げてみる。
そこからスタートするのは
すごく建設的だと思います。
実際、絵を仕事にする僕のゴールも、
相手に「なるほど」と言ってもらうこと。
そもそも、
絵コンテというのは、
何十コマも描くことが多い。
となると、一枚一枚に
そんなに時間をかけてはいられないのです。
だから、「3秒でサッと描く」は必須。
なにより、
「3秒でサッと描く」を続けていると、
たくさん練習できるんです。
これが、近い将来、
いい結果につながっていくのは間違いありません。
「早く伝えたい」
「わかりやすく伝えたい」と思ったら、
時間をかけて丁寧に模写するのではなく、
まずは「何があればそう見えるのか」を考える。
そんな癖をつけているうちに、
みなさんの描く絵には変化が現れるはずです。
ちなみに、冒頭で紹介したバラエティー番組。
その様子を詳しくまとめたブログもあります。
↓
『宇治原式ノートの取り方まとめ!黒板を写すより先生の話を聞け』
https://surprise-kinenbi.com/comedian/ujiharashiki-takenotes-method/
現在募集中のカルフのワークショップでは
かんたんな絵コンテの描き方講座もあります!
↓
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