臨床心理学史 メモ帳

臨床心理学(Clinical Psychology)は、蓄積させた心理学の知見を応用し、心理的または行動的問題の研究・査定・援助・予防などに焦点を当てます。
心理学の源流
1 哲学的流れ
Descartes,R.(デカルト)⇒生得説…心は生得的なもの
            心身二元論…別の存在である身体と相互的に働く
Locke、J.(ロック)⇒経験説…心は白紙の状態から始まり(Tabula rasa=タブラ・ラサ)、経験を通して獲得される

生得説VS経験説
2 生理学的流れ(19世紀頃)
神経系や感覚のメカニズムに焦点を当てた研究。のちの実験心理学に影響
Muller,J.P.(ミューラー)⇒特殊神経エネルギー説
Helmholtz,H.L.F.von(ヘルムホルツ)⇒ヤング=ヘルムホルツの三色説
Fechner,G.T.(フェヒナー)に代表される精神物理学
心理学の誕生
Wundt,W.(ブント)…1879年、ライプツィヒ大学に実験心理学研究所を設立
  個人の直接経験である意識を、内観法を用いて要素に分解して取り扱う
           ⇒Titchener,E.B.(ティチェナー)が確立した構成主義の基礎となる
他のWundtの弟子
独のKulpe,O.(キュルペ)
 米のHall,G.S.(ホール)
 米のCattell,J.M.(キャッテル)
 日の松本亦太郎
Wundtに影響を受けた人
 Brebtano,F.(ブレンターノ)の作業心理学⇒ゲシュタルト心理学に影響を与える
 Wundtが研究対象としなかった思考・判断に焦点を当てたヴュルツブルク学派
 James,W.(ジェームス)ら⇒機能主義心理学…進化論をルーツに、のちの行動主義に影響を与える
Freud,S.(フロイト)…臨床心理学に大きな影響を与えた。
精神分析学の端緒となる『ヒステリー研究』(1895)

臨床心理学の歴史
第一期(1800年代後半~1930年ごろ)
(1) 心理測定
米のCattell,J.M.が、統計的な手法を用いてメンタル・テストを開発。これが知能検査(心理測定)の始まりとされる
仏のBinet,A.(ビネー)とSimon,T.(シモン)で知能検査を開発。
米では、兵士選抜のための適性検査が作成される。
(2) 心理診療所の開設
Witmer,L.(ウィットマー)は、心理学の臨床への応用を主張し、ペンシルバニア大学に初めて心理診療所を開設した。これが臨床心理学の始まりとされる。
(3) 無意識の発見
Fruedは、無意識に抑圧された性的願望が神経症につながることを発見し、無意識研究の先駆けとなり、精神分析は臨床心理学の中心的な位置を占める
第二期(1930年代~1960年頃)
戦争からの帰還兵にみられたいわゆる戦争神経症[心的外傷後ストレス障害(PTSD)]の治療が課題となった。
治療に寄与したのは、Freudの精神分析・学習理論を背景にした行動療法・Rogers,C.(ロジャーズ)のクライエント中心療法
 論証心理学が選民の学問と認められ、治療理論や技法が大いに進歩した時期である。
第三期(1960年代~1990年頃)
    医学モデルによる援助のみならず、精神疾患の予防や精神的健康の維持にも注目したクライエント本位の生活モデルによる援助が活発
    面接室内での個人を対象にした心理療法から、地域の人々を対象としたコミュニティ心理学のような新領域も誕生
第四期(1990年頃以降)
    “無意識”のような実証できない概念に基づく精神分析が大きく後退し、証拠に基づく実践(Evidence Based Practice)が重視
   代表的な治療技法が認知行動療法であり、現在の心理臨床実践の重点

現在の主要な臨床心理学派
1. 精神力動派
Freudの古典的精神分析に端を発する、おもに心の中で働く精神的な相互作用を扱う流れ。Freud後に分派したJung,C,G.(ユング)の分析心理学やAdler,A.(アドラー)の個人心理学に始まり、Fromm,E.(フロム)やSullivan,H,S.(サリヴァン)などの社会文化的要因を重視した新フロイト派、Klein,M.(クライン)やWinnicott,D,W.(ウィニコット)に代表される対象関係論などが含まれる。
2. 認知・行動派
機能主義や学習理論を土壌として発展した客観的観察ができる行動を通して心を扱う学派。行動療法は、Eysenk,H,J.(アイゼンク)が始まりとされ、Wolpe,J.(ウォルピ)の系統的脱感作法、Skinner、B.F.(スキナー)の行動変容法、Bandura,A.(バンデューラ)のモデリング療法などが代表的な療法。
思考や感情を直接扱う認知療法はBeck,A.T.(ベック)やEllis,A.(エリス)の治療技法を経て、認知行動療法として現在に至る。
3. 人間中心主義
1950年代に、精神分析や行動主義の対抗勢力として発展し始めた学派。
人間の肯定的で健康的な側面を強調する学派。
Maslow,A.H.(マズロー)をはじめ、クライエント中心療法のRogers,C.(ロジャース)や実存分析のFrankl,V.E.(フランクル)などが含まれる。