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「さよなら」の前に「ありがとう」

もうかなり前の話だけど、原発反対集会のデモで、!マーク付きの命令調が飛び交う中にキラリと輝くプラカードがあった。

「ありがとう さようなら 原発」

同じ反対でも、今までの恩恵を忘れて「原発は諸悪の根源!」と怒りまくるか、「ありがとう」と感謝してから前へ進むか。

「ありがとう」一言だけど、そこには「今までさんざんお世話になった原発さん。あなたのおかげで、ずっと快適な暮らしをしてこられました。心から感謝しています。でも、これからは、原発に頼らない生き方を探っていきます」という真摯な気持ちがこもってた。

人生、何ごとも常なるものはなし。歳を重ねていくうちに、物の見方や価値観が変わるのはいたって当然のことで、現に若い頃は「このやりがいある仕事をしてなかったら人生意味ない」などと思い込んでた私が、いざ退職してみたらのんきでスローな日々が嬉しくてたまらない。

心変わりや気移りは自然のなりゆきで、実は悲しんだり恨んだりするものではないと思うのだけど、そういうネガティブな感情が沸き起こるのは、もしかしたら、変わったり移ったりする時に「ありがとう」が抜けてるからなのかもしれない。

ずっといいと思ってたことが嫌になり、好きだった物や人がそれほど好きじゃなくなる。だんだん嫌になるときもあれば、ある日突然「ヤダ!」と気づく時もあるけど、何かが嫌になると、一刻も早くその嫌なことや物や人に消え去ってほしくなり、それまで重宝してたとか、ぞっこんほれ込んでたことはすっかり忘れてしまう。

重くて遅いスマホなんか捨てて、買い替えよう!こんな狭い部屋は引き払い、広くて明るいマンションへ!退屈な人とは即刻別れて、新しい恋を!

電話や部屋なら、お金さえあれば乗り換え容易だけど、相手が人間だったり、コトの規模が大きくなると、そう簡単にはシフトできない。

「腐れ縁」というか、別れたいのに別れられない人たちがたくさんいる。中でも悲惨なのは、一方が別れを望んでるのに他方がそれを許さないケース。

「嫌になった」相手に縛られるのはたまらないけど、「嫌になられた」方はなお辛い。だから、ここで先手を打つべきは、やはり別れたがってる方。でも、相手がどうしても同意してくれない。

そんな時に、お勧めなのは

相手のことを嫌だ嫌だと思うのを一旦やめて、彼や彼女が今までしてくれたこととか、言ってくれた言葉とか、買ってくれたプレゼントとか、作ってくれた料理とか、嬉しかったことを思い浮かべてみる。

そして、それを片っ端から書き出してみる。

で、そのひとつひとつに「ありがとう」と言ってみる。「とても、そういう気にはなれない」かもしれないけど、とりあえず言ってみる。

初めは嘘っぽくてしらじらしくても、何度も言ってるうちにほんとにありがたいという気持ちがどこかから湧いてくる(はず!)。

別れたいと思ってる本人が、自分じゃなくて、家族や友達だったとしても同じ方法でやってみる。

不良グループから抜け出したがってる息子とか、不倫をやめたいと言ってる姉とか、離婚したがってる親友の代わりに、周りの私たちが感謝の気持ちを口に出してみる。

寂しかった息子に居場所を提供してくれて、ありがとう。自信のなかった姉を選んでくれて、ありがとう。親友に安定した生活を味あわせてくれて、ありがとう。

直接相手に言わなくても、宇宙経由で、ちゃんと届くべきところへ飛んでいく。そして、「ありがとう」の魔法の力は、かたくなな心を癒し、滞ってたエネルギーをとかし始める。

感謝して、手放す

ありがとね~ でも、ばいば~い


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