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足かせをはずす


「人を許すことは自分に親切にすること」

日本語の授業(30年ほど大学で日本語を教えていました)で、ある学生が、「私の好きな言葉」という作文にこのことわざを選んだ。出身の中国のことわざだそうだ。

友達がしたことに気を悪くして、3日間、口をきかないでいたけど、その状態が辛いので許すことにしたら、自分も楽になった...という例をあげながら、「許す」ことの大切さを語った。

他人を許すことがいかに大事かってことは、聖人たちはもとより、最近の哲学書やスピリチュアルな本でもみな同じことを言っている。

でも、簡単なことじゃない。

あんなひどいことをした人を許すなんて、絶対無理!
だいたい、なんで許さなくちゃいけないの?


裏切った親友
他の女と逃げた恋人
みんなの前で侮辱した上司

アイツラを許すなんて、ありえない。

ひどいことをした人が裁かれるのは当然だし、許しちゃったら、その人たちがしたことを善しとしてしまうのではないか。

だから、どんなことがあっても許さない!

でも、そうやってがんばってると、自分がしんどくなってくる。

「許さない」という思いが頭を横切るたびに、その時の哀しみや辛さがよみがえってきて、「正当な」ことをしてるはずなのに、気分が晴れない。

それどころか、心の傷は深まるばかりで、体もだんだん蝕まれてくる。

前に進みたいと思っても、重い足かせが進ませてくれない。

別にあの元親友、元恋人、元上司と仲を取り戻したいわけじゃないし、手っ取り早く、忘れちゃえばいいんだよねと思うけど、許さないうちは、忘れることもできないようで。

許すって言ったって...相手が反省してあやまってくるなら、許すことも考えるけど、反省どころか、こっちの気持ちなんて全然わかってない相手を、いったい、どうやって許せるわけ?

相手本意に考えているうちは、とてもできそうにない。相手の気持ちや態度を変えることはできないし。

相手を許すのは、自分のため
 自分が楽になるため
 自分をそのしがらみから解放するため
 「自分に親切にする」ため

だから、ひとりで心の中で許そうと決めればいい。相手にそれを伝える必要はないし、それに対して相手がどう出るかも関係ない。自分が、ずっと抱いてきた「許せない」という思いを手放すだけ。

手放すというのは、手の中にギュッと握りしめてきたものを、パーっと開いて、放すこと。深呼吸と共に。

あとは、自分にもっぱら焦点を戻す。そして、心や体に養分をあげるような、自分にやさしい、楽しいことをいっぱいやる。

そのうち、ふと「あれ、最近、あの人のことすっかり忘れてる~」と気づく日が来る。

やった~!小躍りしちゃおう、そんな時は。スキップでもいいよ。体が軽くなって、喜んでるよ~




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