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「生誕130年 青山義雄とその時代」(茅ヶ崎市美術館)

 青山義雄(1894-1996)は近現代にわたり活動した洋画家。エコール・ド・パリの日本人画家の中でも西欧文化に適応する道を選んだ画家で、特にマティスからは「この男は色彩を持っている」との評価を獲得、生涯にわたる師弟関係を結ぶこととなります。

 ただし作風や色彩が露骨にマティスっぽかったわけではなく(日本の近代画家を見ていると、師匠や憧れの画家に『寄せる』ケースも決して少なくないように見えますが)、その色彩に関してはマティスのような明るさ、自由奔放さとは異なる、むしろリアルでくすんだような色彩の作品も目立ちます。展示資料によるとどうやら若い青山の、画家としての真面目な態度をもマティスは評価していたようで、特に戦前の作品はそうした青山の、同時代の洋画というものを積極的に学び、自分の画風として吸収するという姿勢を顕著に感じます。
 確かにフォービスムもベースの一つとして感じられますが、そこに日本人洋画の伝統的な要素も内包、他の画家の名前で喩えるとムンクやユトリロなんかの要素も感じます。今回は一作のみですが、初期作品には原色に近い、辰巳菜穂(Googleストリートビューのアレンジを題材にすることで知られる画家)を彷彿とさせる作品もあるのが面白いところ。

 対する後期作品では習作じみた時期を過ぎ、より自分の作画というものを体得されたように思います。
 どちらかと言えば青空の、爽やかなイメージが強いニースの風景を赤紫の空で表現してしまったり、晩年作品は静物の背景を黄色で統一してみたり…一種のパラレルワールドのようなイメージです。現実を題材にしつつ、あたかもそこに潜む非現実を表現されているように感じました。

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