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「光と影の絵師 小林清親展」(川崎浮世絵ギャラリー)

 前々から小林清親のすごさは知っていましたが、意外に回顧展という形で見たのは初めてだったかも。

ただいまトイレ工事中のため、会場外はこんな感じ。

 清親と言えば光と影を効果的に組み合わせた「光線画」。
 「光線」と言っても彼の描く光は鮮烈なレーザービームではなく、もっとほのかで暖かな、人を癒やすオーラのような光。多くの作品で、下から3/7の位置に設定された水平線・地平線、広めに設定された青空には安心感があります(ただし視線の高さによって、作品の印象が変わる可能性がありそうです。あくまでも身長175.5cmの高さから見た印象です)。絵の中からは清澄な空気感を感じ、生活が聞こえてきます。夜の雪景色を描いた《本町通夜雪》では街灯の周辺のみに雪を描くなど、芸の細かさも感じます。

 彼が光線画に取り組んだのはおよそ6年と短いですが、技術面としてはむしろそれ以降も進化を続けたようにも思います。特に代表作《猫と提灯》で採用された、30回を超える摺りを通じて立体感やリアリティを表現する手法は後の吉田博など、後の新版画にも繋がるところ。明治14年の両国大火を題材にした報道絵では対角線構図を用いて、火の勢いを巧みに表現しておりました。
 今回は弟子の井上安治、そして小倉柳村の作品も展示。安治については漫画家・考証家の杉浦日向子が画風の「寂しさ」を指摘していたこともありましたが、今回に関してはむしろ清親と同じ、明るい「空」を見ていたように感じました。
 柳村は弟子ではないようですが、光線画の重要なフォロワーと言えそうです。清親の西洋写実の要素を引き継いでおらず、どこか記号的ではありますが、それがむしろセザンヌを連想させる部分もあります。わずか9点しか作品を残していない以上、なかなか展覧会も企画しにくいかとは思いますが、興味の沸いてくる作品・作家でした(写楽とか、短期間しか活躍しなかった括りで…)。

 清親は特定の師匠を持たない画家。だからこそ「浮世絵らしく」的な伝統から自由になっていたかとも思いました。しかしそれは唯一無二ではなく、むしろ風景画の王道を行くもの。
 改めて素晴らしい画家だと思いました。

基本的に撮影NGの川崎浮世絵ギャラリーですが、今回は会場外に撮影OKパネルが展示。以下同じ。

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かろ(ペーパー学芸員)
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