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「吉田博 今と昔の風景」(MOA美術館)
今年最後の展覧会は熱海へ。MOAの場合、普段なら開館直後から1-1.5時間ぐらいはそれほど混雑とは無縁で楽しめるんですけど、今回(12/30)は開館直後からそこそこの人の数。いかにも年末、といった感じです。
個人的にMOAの吉田博展は今回で4回目ぐらいの訪問で、何度見ても新品同様の保存状態の良さ、そして度重なる摺りによって線が潰れておらず、より吉田の意図に近いと思われるクオリティの高さはピカイチ。特に《興津》(1)など、富士山を描いた作品は、写真をコラージュしたかのような衝撃があります。浮世絵の歴史というのは木版画が写実・複雑化していく歴史ですが、こと技術的側面については、吉田の作品は木版画の最高到達点と言えるのではないでしょうか。
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今回の吉田展はそんな吉田博作品と、現在の風景写真で対比するという趣向…なんですが、比較されることでかえって吉田の表現力の高さが際立っているように感じました。そこにはただの写実以上の情緒があり、吉田自身の感動もある。見る側のコンディション次第ではそれ以上、気温や湿度、その日の朝に吉田が飲んでいたであろうコーヒーに至るまで、絵の中にある物語を感じられるのではないでしょうか。吉田の作品、そしてMOAのコレクションにはそれだけのことを想像させる力があると思います。
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一つ興味深かったのは金閣寺の作品について。
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現在の金閣は1955年に再建されたもので、吉田が描いているものは1950年に放火により焼失した、オリジナルの金閣です。再建された当時、焼失直前の金箔が剥がれた状態ではなく、建立当初(1397年)のクオリティで建築されることに異論があったと聞いたことがありますが、その場の空気をも表現してしまう吉田の絵からは、在りし日の金閣が穏やかに佇んでいる、その雰囲気を感じてしまいます。1983年生まれの私が以前の金閣を知るわけなんかないんですが、もし、あの時…そう思うと、放火前の金閣があった、その時代が羨ましくなってしまいました。
芸術のことについてあまり知らない人にも、広くオススメできる芸術家です。老若・知識の多寡を問わず「すげー!」とか「かなわない…」とか、その種の絶賛の言葉が展示室の各所から出てくるのは、ひょっとしたら彼ぐらいじゃないでしょうか。