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「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展 童堂賛歌」(平塚市美術館)

 ザ・キャビンカンパニーは阿部健太朗と吉岡紗希の二人による絵本作家・美術家のユニット。Eテレの子供番組、ポケモンとのコラボレーション、こどもの読書週間ポスターなどといったコラボレーションも多く、名前を知らずとも、ひょっとしたら彼らの作品にお目にかかっているかも知れません(私はポスターを観たことがありました)。

「こどもの読書週間ポスター」ポスターと原画
あいみょん「傷と悪魔と恋をした!」ツアーパンフレットの原画。
NHK教育テレビ「しりたガエルのけけちゃま」より
チョコレートの明治とのコラボレーション。
初めて知ったんですが、絵として好みです。
CO-OPとのコラボの原画。
写真ちょいズレしちゃいましたが、こちらも好み。
タイトル等失念してしまいましたが、こちらもコラボレーションです…

 非常にプリミティブで、力強いパワーに満ち満ちた作品。既に色が塗られた画面に型紙を貼り、新たな色を重ねるという手法も面白いです。最初はクセのある絵柄にたじろいでもいたのですが、慣れてくればくるほどむしろのめり込んでいきました。

この数!
ちなみに手前は絵本。子供向けの読書スペースも用意されています。

 その一方で「ボンボとヤージュを描いていた頃」と題されたキャプションでは、東日本大震災の直後、大学の教授にすら「こんな時に芸術は無力だ」と突き放され、そんな暗いなかでも二人が「無力」呼ばわりされた芸術に取り組んできたことが綴られております。

漠然とした不安に飲み込まれないよう、私達は作り続けた。膨大な数の絵と段ボールの立体作品。どれも只々馬鹿らしく、無意味であった。しかし、それらは強烈に平和的だった。

展覧会キャプション「ボンボとヤージュを描いていた頃」より

 そういう部分が直接作品に現れているわけではないと思いますが、笑顔のような芸術の内に秘めた、熱い気持ちを感じるところでした。

「ボンボとヤージュを描いていた頃」

 展覧会終盤では、彼らがアトリエに使用している廃校にあった素材を使ったインスタレーションも。少し前に観たシアスター・ゲイツとも重なる手法ですが、そのままでは消えてしまう一つの歴史がモニュメンタルな「作品」として再構成され、復活したような感があります。

 個人的にはディスプレイの下に置かれた「踏み絵」の存在が印象的でした。

 これが目に入ったときは驚きましたが、どうやらレプリカだそうで(本物だったら大事件)。担当学芸員さんによると大分にも隠れキリシタンの文化があり、小学校の教育教材として使われていたものではないかとのことでした。少なくとも自分が通った神奈川の小中高では観たことが無かったので、この存在は非常に新鮮。

 描く作家を救い、観る鑑賞者を救い、地域にとって大切な歴史を救い… 「無力」なんかでは決してない芸術が観られる展覧会でした。正直言うと、「よく知らないから」という理由で一旦パスしかけた自分が恥ずかしい。 

 本展は夏休み中は平塚市美術館、その後、足利市美術館、千葉市美術館、大分市美術館を巡回予定とのことです。

口や耳、手にボールを入れる口があります。
そこにボールを入れると…おぉっと、これ以上は!

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