理想の美術館について改めて考えてみる。 - "最後"の学芸員スクーリング日誌③
前回の記事で、事業中に自分が実際に書いてみた「新しい美術館」のイメージ図について、実物を載せていなかったのでこちらに掲載。
上の画像を見てもらえばわかるように、品質としてちょっと忍びないと思い、掲載をためらってしまったのだけれど、あらためて完成品を見ると不親切な気がしたので、改めてここに掲載することにしてみた。
本来これをプレゼンに使うのならもう一度書き直して、コピーを取って教室にあった色鉛筆なりマジックなりで色を塗って…ってやるべきなんだけど、自分がトイレに行っている間に班のメンバーにこの「下書き」がプレゼン画面に取り込まれてしまい、そこからの修正・編集が困難な状況になってしまっていた。
私は割とこだわりが強いタイプだという自覚もあるので、特にグループワークではそういう部分を声高には主張しないようにしているんだけど…まぁ、うん…という、複雑な気分が残った。
このまま、どこかにしまい込まれてしまうのも残念な気がするので、授業ではできなかった「清書」をしてみることにした。ibisPaintXというアプリで、写真をもとにiPadで着彩し、その上に線や言葉を書き足している。トイレや収蔵庫、事務室、研究室とか、基本的な設備が書かれていないという重大な問題が残っているのだけど(苦笑)、大筋のイメージとして考えてくれればと思う。
ちなみに、美術展や美術館をプロデュースするにあたり、絵や立体模型を準備することは決して珍しいことではないらしい。私が参加していない別日程のスクーリングでも、立体模型を作って美術展の企画を考えていた方はいたようである。
将棋の升田幸三名人がかつて自戦記の中で、「(神の定めた)真理を人間が追求するのには"枠"がいる」という趣旨のことを書いていたことがある。升田の言う"枠"というのは戦法・戦型に相当する部分で、その"枠"を限定することでより深い追求が可能となる。
そして、私たちのグループワークにも、「新しい美術館」という"枠"が必要だと感じた。上の図面には他のメンバーの案も取り入れているのに、本当に失礼な話なんだけど、「美術館」という"枠"が無いまま話す内容があまりにもアバウトというか、学芸員としての美術館運営に対するイメージに乏しいように感じてしまったのである。新設予定のビルのテナントに入ろうともしていたようだけど、それだって何階に置くのか、ワンフロアか複数階を使用するのか、そしてどういう間取りにするのか…そういうイメージをはっきりさせておく必要があった(最終的には建築・デザイン等のプロにお願いするにしても、所謂要件定義のような、クライアントである美術館側がある程度のイメージを持っておくことは必要なのかなと)。
あと、こういう風にして図面を書いてみるといろいろ見えること、気づくこともあると感じる。
例えば美術館の内部壁面をそのままギャラリーに使えると感じたし、ワークショップ用の教室として設置した2階教室もギャラリーに転化させることも可能そうに見える(子ども達が2階のワークショップで作った作品を、そのまま2階で展示するということもできる)。3階を新設し、そこに事務室などのオフィスを、また地下2階に作品収蔵庫を造ることもできるなとも気づかされるし、もちろん書ききれなかったトイレや休憩用のベンチなど、細やかなホスピタリティについても検討をしていかなければいけない。前回の記事でも触れたが、担当教官から「若手学芸員のトレーニングの場として使えると良いかも」と、具体的プランが貰えたことも嬉しかった。
授業の中で、私がこれに費やしたのはおそらく2時間ちょっと(授業1時間、自宅での着彩で1時間強)というところだけど、実際はこういうことにももっと考えて運営されているのだなと思う、そんなスクーリングでもありました。