「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」(東京都写真美術館)
戦前~戦後にかけて、小型カメラのライカを手に街に繰り出し、「ライカの名手」として名を馳せた木村伊兵衛。
その写真は非常に軽やかなテンポに溢れるもの。肖像写真などでは比較的安定感がありますが、自らを「報道写真家」と自称したのはなるほどと。メインの被写体が中央で目立つ隅でカメラマンを怪訝に観ている人をトリミングしていなかったり、素材としての生々しさを残すところはある種報道的だと思いました。
パネル解説によると、プロパガンダを要求された戦中に対し、戦後に入ってからは自己表現を求められたとありますが、写真から感じたのはそういういかにもな力みが少なく、むしろ無我の境地とでも言うべきものが。引き算の美しさとでも言うべきものでしょうか。
抽象作品には取り組まなかったようですが、目指しているものはむしろアンビエントなそれと似通ってくるのかも知れません。主張が無いからこそ、作品が空間に入り込み、調和してくれるような気もします。
同時代に活動した土門拳と頭の中で比較しながら観ていたのですが、土門拳は良い写真を残すことが目的・ゴールであるのに対し、木村にとっての写真は手段・通過点。もちろん作品としての高い完成度がありつつ、撮影を通じて考えているような印象がありました。
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