成人式のあのころを思い出すと・・・
新成人の皆さま、ご成人おめでとうございます!
晴れやかで、キラキラした新成人たちの様子をテレビで見ながら、自分が20歳だったころをぼんやりと思い出す。
成人式の日、私は一人暮らしの自分の部屋にいた。
あのころは、私の人生の中で「底」だったと思う。
19歳の大学1年生の冬、父が多額の借金を残して姿を消し、
いきなり世間の荒波に投げ出された世間知らずの小娘は、途方に暮れていた。
そのゴタゴタの中で20歳を迎えたけれど、
当然成人式どころではなく、
母は私の成人式のことなどすっかり忘れていた。
当時の彼が、彼の友達と一緒にお参りに行こう、などと誘ってくれたけれど、バイトがある、と嘘をついて断った。
気の利いた洋服を買う余裕もなく、
ビシッとスーツを着た彼と彼の友人の横に立つのが恥ずかしかったのかもしれない。
晴れやかな人たちがたくさん歩いているだろう成人の日の街を歩くのが惨めだったのかもしれない。
夕方戻って来た彼がご飯を食べに行こうと誘ってくれたとき、
なんだか泣けてきて、
なぜ泣いているかを問われても自分でもわからなくて、彼を困らせてしまったのを覚えている。
自分の部屋に戻ったら、大家さんが届いた荷物を預かってくれていた。
仙台に住む祖母からで、中には「おめでとう」のメッセージと一緒に、
可愛い編み込みの模様のカーディガンが入っていた。
身内でたった一人、私の成人を覚えてくれた人がいたことが嬉しくて、
私はまた泣いた。
そのころの私は、この先大学を続けられるかどうか、この先どうなるのか、
不安でたまらなかった。
明日が見えない、ってこういうことを言うのかと思った。
それから40年余りの月日が経ち、
今、私はそこそこ幸せだ。
バイトに明け暮れて、
周りの友達のようには遊べなかったけれど、なんとか大学を卒業することが出来たし、
大きな会社には入れなかったけど、希望の職種に就職できた。
資格を取って、フリーになって、今も仕事は続けることが出来ている。
結婚して、息子二人も成人式を経て社会人になり、エリートではないけれどまじめに毎日働いている。
夫は勤め上げた会社を昨年秋に定年退職した。
子育てとか、息子の持病とか、姑問題とか、自分の病気や怪我とか、介護とか、自分の親のあれこれとか、色んなことがあったけど、一つ一つ何とかクリアして今がある。
今がそこそこ幸せ、と思えるのは、
何か「いいこと」があったら幸せ、っていうよりも、「悪いこと」がおきなければ幸せ、と感じるようになっていったからかもしれない。
「悪いこと」に対する耐性が徐々についていったこともあるだろう。
最初は「え~!」って思ってたことも、次第に「あらら」くらいになっていったのかもしれない。
20歳のあの日、一人で泣いていた私に言ってあげたい。
大丈夫、なんとかなるよ、って。
そして、これから先もきっとなんとかなるような気がしてならない。
生きていくのもなかなか捨てたものじゃない。
最後にもう一度、
新成人の皆さん、本当におめでとう!