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時間が解決してくれるって本当だった!
「1年前の思い出」の写真がスマホに現れた。
この日のことをよく覚えている。
この日の午後、東銀座のレトロな喫茶店でグループセミナーを受けたときに、カフェラテをオーダーしたら、これが出てきて、あまりの立体感に度肝を抜かれたものだ。
そしてその夜は、新橋でお食事会があり、銀座をぶらぶらして時間をつぶしながら、新橋方面に向かって歩いていた時に、高校時代の友人から電話が。
声がひどく疲れている。
実は、前月の終わりに、彼の経営する会社が倒産した。
職種が同じこともあり、私も時々仕事のお手伝いをさせていただいていたので、本当に驚いたし、力になることができなかったことを悔いたりもした。
前月から今月にかけての様々な苦しい出来事、理不尽の数々、悔しい想い・・・。
普段無口な彼が珍しく話し続ける。
昔からこういう時に気の利いたことが言えないので、銀座の雑踏の中、ひたすら聞き続けることしかできない。
やがて彼は、信じられないことを口にする。
「死んだほうがいいかな」
そうすれば、少なくとも家のローンはチャラになり、家族に家を残すことができる、と。
気が動転した私は、色んなことを口にしたはずだ。
覚えているのは
「あなたの命と引き換えに残った家に住み続けて、ご家族が幸せな気持ちになれるとは思えない」
とか
「私たちのような学生時代からの友達は、そもそも何者でもなかったあなたしか知らなかったのだから、社長で無くなったとしても、全然関係ない」
とか
「じゃあ、もし、ものすご~く長生きして、それぞれが一人きりになったら、一緒の老人ホームで楽しく遊ぼうよ」
と言ったところで彼が吹き出した。
必死のあまりわけのわからないことをたくさん口走ったのだと思う。
もともと誠実な人だったので、その後いろいろな人が力になってくれたようで、少なくとも「死にたい」などと言うことを口にすることは無くなった。
たまに、連絡があっても、前向きな内容のことが増えてきた。
そして昨日のLINEは
「孫の靴と、服を買いに行ってきた。今も隣に孫がいる。」
一昨年生まれたお孫ちゃんとの穏やかな時間を過ごしている。
あの時「死にたい」と言った彼とはもう違う人だ。
一年の時間は長いようで短い。
それでも、時間が解決してくれるって本当なんだ、としみじみ思った。
おそらく彼は1年前の同じ日に「死にたい」などと口走ったことは忘れていると思う。
1年前のカフェラテの写真をみて、心の底から「よかった~」と思った。